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家族農林漁業 回復力のある農村を【リレー談話室・JAの現場から】2020年5月18日

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【和歌山県紀ノ川農協 宇田篤弘組合長】

昨年の末不覚にもインフルエンザにかかってしまい、忙しい最中1週間休むことになってしまいました。その3か月後に、新型コロナウィルスの感染拡大で「緊急事態宣言」が出されるこんな事態になるとは思いも寄りませんでした。

和歌山県内の観光地でホテルや道の駅の来客数が激減し、しばらくお店を休むなど深刻な状態になってきています。一方で、消費税増税などの影響で落ち込んだ生協での利用が伸びています。

昨年から国連の「家族農業の10年」の取り組みが始まりました。日本のプラットフォームの設立に続いて、「家族農林漁業プラットフォーム和歌山」を昨年10月に立ち上げ、5月の総会に向けて学習会や賛同者のお誘いなど取り組みを始めました。持続可能な地域農業や林業、漁業をめざすことが取り組みの柱です。

気象庁の「災害をもたらした気象事例(2000年~2019年)」の20年間をみると、被害が発生した台風は48個にもなり、台風による被害の無かった年は、2008年と2010年の2年だけしかありませんでした。

毎年、台風や豪雨、豪雪などの被害が発生しています。こうした災害の度に、離農する農家も少なくありません。「家族農業の10年」の世界行動計画は7つの柱で構成されています。そのなかで、回復力や弾力性などと訳され、自然災害や経済的危機などの外的ショックにする回復力(レジリエンス)や気候変動に強い食料システムのために家族農業の持続可能性を促進することが重要とされています。

今、私たちは大震災や度重なる台風被害、そして経験したことのない新型コロナウィルスの世界的感染拡大と世界的経済危機へ向かいつつある中で、大量生産、画一的なモノカルチャーから抜け出し、多様な生産システムを作ること、家族農林漁業への転換が強く求められています。

 
2015年に「日本のミジンコはアメリカから来た外来種」と報道されたことがありました。東北大学大学院の研究チームが発表したもので、日本のミジンコはアメリカから来た外来種で、4個体からの直系子孫だそうです。2個体は黒船来航以前に侵入し、あとの2個体はごく近年に来たものだそうです。

2018年度の和歌山県における獣害による農産物被害は、3億207万円でその10パーセントがアライグマによるものです。イチゴやトウモロコシなどが被害にあっています。アライグマが最初に野生化したのは1962年で動物園から逃げ出したことによるそうです。その後はペットとして飼われていたものが放され野生化したそうです。

日本で栽培され市場に出まわっている野菜は約130種類あり、そのうち日本原産または日本も原産地の一部とされる野菜は約20種類で、私たちが普段食べている野菜のほとんどがヨーロッパやアジア大陸から伝わったものです。果物のキウイフルーツは1970年代のみかん価格の大暴落を受けて、転換作物として栽培が始まりました。もともと日本には無かったものです。香川県の試験場で勉強し追熟しての出荷を試みたことを思い出します。

組合の直売所で販売している種の生産地をみると、春菊はアメリカ、長なすは中国、ほうれん草はデンマーク、青首大根はニュージーランド、中国野菜のチンゲン菜はイタリアです。

 
温暖化などの環境問題や感染症の世界的な流行は、国や地域を超えて、人やモノ、カネが移動する政治や経済、グローバリーゼーションの副産物と言われています。大量生産や画一的なモノカルチャーへ向かいます。いま私たちは、世界中が100年前のスペイン風邪の環境とは違って、高度にグローバル化が進んだなかでのパンデミックの中にいます。

今こそ私たちは「多様で健康的で持続可能な食と農のシステムが花開き、レジリエンスの高い農村と都市のコミュニティで質の高い生活を送れて、尊厳と平等を実現し、貧困と飢餓から解放されている世界を目指す」べきです。試練に直面しています。

 

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