政治の流れは「ポスト安倍」「ポストコロナ」へ動く【森田実の政治評論】2020年6月29日
「君は舟なり、庶人は水なり。水は舟を乗せ、水は舟をくつがえす」(荀子)
◆終末期を迎えた安倍政権
一年後の2021年9月、安倍晋三自由民主党総裁は、三期目の任期を終える。それまでに党規約を改正して総裁任期を4期以上に延長することができれば、総理をつづけることはできる。しかし、総裁任期の更なる延長はきわめてむずかしい。党規約改正のためには少なくとも党大会で両院議員総会のメンバーの過半数が賛成しなければならないが、もうそんな状況ではない。複数の幹部がポスト安倍の総理総裁を目指している。その幹部には多くの支持者がついている。
安倍総理支持者のなかに、総裁任期終了直前の衆院選で安倍総理が勝利すれば、総理と総裁を分離する形で総理をつづける位置はある、と考える者がいるようだが、このような非常識な利己的行為は国民のきびしい反発を受け、自民党は政権を失う危険をおかすことになる。2021年9月の任期満了以後も安倍政権がつづく可能性はきわめて低いのである。
自民党の多くはこのことを承知している。とくに若い政治家は大きな世代交代のチャンスがきたと考えている。
「安倍一族」といわれた時代を終わらせたいと考えはじめている自民党議員は少なくないのである。
国民世論も変わり始めている。いつ政府危機が起こるかわからない。安倍総理が内閣総辞職か衆院解散かの選択を迫られるときはそう遠くないのである。その時期は、2020年秋の臨時国会か、2021年の通常国会か?臨時国会での衆院解散の可能性はあると私は予測する。
衆議院議員の任期が終わるのは2021年10月22日。あと1年3か月しか残っていない。いつ衆院解散総選挙になってもおかしくない状況にある。最近永田町では、2020年秋の臨時国会解散説が静かに広がっている。
安倍晋三第二次内閣は衆院選も参院選も統一地方選挙も勝ちつづけてきたが、これからも勝ちつづけるとはいえない。世論は変っている。安倍内閣支持率は急激に低下している。安倍晋三総理自身への国民の不信は深まってきている。
自民党内には、小選挙区制のもとでは分裂状態の野党には勝ち目はないと、たかをくくっている者もいるが、甘すぎる。野党はたしかに分裂状態にあるが選挙になれば候補者調整はできる。次の衆院選で安倍自民党が勝利するとはいえないと思う。敗北すれば退陣である。今から2021年10月までの1年4か月の間に、日本の政治に大変動が起こる可能性は高いのである。
◆「ポストコロナ」の五課題
現状では政権が自公連立から野党連合に移行する可能性は低いので、自民党を中心とする連立政権に対して提言する。自公が今後も政権を担当しつづけるためには、少なくとも次の五課題を実行する必要がある。
第一、政治の常識を守ること。安倍晋三総理と側近たちは、安倍政権を無理やり延命させようとして非常識な行為に入ることを慎むべきである。最近の安倍政権は無茶をしすぎている。非常識な行為が多すぎる。今後も乱暴なことをつづければ、安倍政権だけでなく自民党政権も終焉するだろう。
第二、長老を尊重すること。自民党には複数のすぐれた長老政治家がいる。彼らは、つねに冷静に良識をもって時代の流れを観察している。難局を乗り切る知恵もある。歴史の大転換期には知恵ある長老政治家が登場するのは、日本政治の良き伝統である。
第三、国際間の対立にまき込まれないように国際関係に慎重に対処し、日本の自主性を堅持し、国益を守りつつアジアと世界の平和の維持につとめること。
第四、「ポストコロナ」の政治ビジョンをつくり国民に示すこと。この際とくに大切なことは、1970年代に起きた石油危機とその後の新自由主義革命から今日に至る世界と日本の政治を総括し、しっかりとした自己批判の上に立って「ポストコロナ時代のビジョン」を策定すること。日本国内では、平成時代以後の政治改革の過ち、経済財政政策の失敗、「小さな政府」を強引に進めたことによる行政の弱体化などの失敗の歴史を総括し、真剣な反省の上に立った新ビジョンを示すこと。
第五、連立政権の枠組みを見直して考えること。現状は、自公連立政権であるが、今のままではじり貧である。それは国民民主党である「ポスト安倍」の政権は、従来の枠組みにとらわれることなく、自民党、公明党、国民民主党、三党の連立体制を新しく構築すべきである。
この新政権をまとめ運営する能力をもつ政治家は自民党の二大長老の伊吹文明と二階俊博である。ポスト安倍時代、この二人の協力によって日本の政治を運営し、数年後に女性政治家を含む次の若い世代にバトンタッチして欲しいと思う。
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