コロナ禍に思う 内食回帰・消費者と対話の好機 川又啓蔵【リレー談話室・JAの現場から】2020年9月28日
猛暑は終息しても新型コロナウイルス感染が続くなか、秋の味覚が収穫の最盛期を迎えている。しか、農畜産物盗難の多発、CFS(豚熱)感染確認エリアの拡大、長く続いた天候不順の余波に加えラニーニャ現象の発生による厳冬傾向への懸念など、気の抜けない状態が続いている。
この季節、北関東各地からラジオ番組の生中継で、農林水産分野の旬を伝えるパーソナリティーを務めている筆者にとって「書きいれ時」だが、今年は、生産者にマイクを向けても、その声色は今一つだ。
そうした芳しくない話の多くは、天候不順で「獲れず品質が悪い」、コロナ感染の影響で「売れ残る」、結果として「値段(収益)が良くない」ので、行政やJAによる救済が必要というスタンスで、中には、「Go to Agri」求める声もあるなど、自助・共助を飛び越え、公助を求める議論がほとんどだ。
一方、自らの足で小売店への売り込みやネット通販を始め、「販売店や消費者の反応に触れることができた」と同時に、一定の収益を確保できたという声もあった。その多くは40歳代以下の比較的若い生産者で、ウィズ・コロナ時代に、従来の市場流通はそぐわず危機感を覚えたため行動に出たと話していた。
知恵や工夫こらして
彼らは、何か特別なものを売ったわけではない。親たちが「系統付き合い」による規格品出荷後のハネモノに、「一定の選別」を加えて商品にしただけで、キズ有りや小さいための規格外はお買い得品として小売店に、変形(個性的な形)や大きいための規格外は「インスタ映え」する品物として通販するという具合である。規格外に変わりないが、通販では、市場価格の数倍に送料を加えた高価な品物となり、「産直で面白く美味しい野菜を買う」という、巣ごもり下のレジャーとして、消費者の欲求を満足させたという正当な対価につながったといえる。
他方、別の若い生産者は、長雨と猛暑で、「皮が固くて大きいナス」が多くできてしまい、JA直売所の担当者から「皮をむいて食べるような品物は売れない」と言われて悩んでいたが、筆者は、焼いて皮をむく「バナナのような食べ方」を前面に出して開き直るよう勧めた。単なる思い付きでしかなかったが、サルがバナナを食べるイラストと、食べ方を載せたチラシを付けて店頭に並べたところ、決して安くはない価格で完売した。これら2つのケースは、いずれも、「生産者・消費者間の対話」によって生まれた結果ではないか。
外食需要の減少などで農畜産物の在庫余剰傾向が続いている。この際、フードロスには触れないが、インバウンド需要の喪失を差し引いても、日本人の胃袋の数に大きな変化はなく、「モノが消費者に行きついていない」ことが原因の一つとなっているのではないか。
コロナ禍で「ピンチをチャンスに」というスローガンを多く目にするが、悩むばかりで行動に至っていないのが実情だろう。公的支援や、「公助」、新規設備・施設の導入「投資」を求めることについては否定はしない。しかし、前述したケースのように、知恵や工夫を凝らした身近な取り組み「自助」や、小売店や消費者からの理解と対話「共助」など、小さな一歩の積み重ねが結果を生むだけでなく、ノウハウの蓄積にも繋がるのではないか。
内食回帰の傾向が続くなか、長年、流通や外食に任せていた「消費者との対話」に、生産者自ら臨むことができる、今が「千載一遇のチャンス」である。
(CRT栃木放送パーソナリティー)
重要な記事
最新の記事
-
第21回イタリア外国人記者協会グルメグループ(Gruppo del Gusto)賞授賞式【イタリア通信】2025年7月19日
-
【浜矩子が斬る! 日本経済】「政見放送の中に溢れる排外主義の空恐ろしさ」2025年7月18日
-
【特殊報】クビアカツヤカミキリ 県内で初めて確認 滋賀県2025年7月18日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 滋賀県2025年7月18日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 兵庫県2025年7月18日
-
『令和の米騒動』とその狙い 一般財団法人食料安全保障推進財団専務理事 久保田治己氏2025年7月18日
-
主食用10万ha増 過去5年で最大に 飼料用米は半減 水田作付意向6月末2025年7月18日
-
全農 備蓄米の出荷済数量84% 7月17日現在2025年7月18日
-
令和6年度JA共済優績LA 総合優績・特別・通算の表彰対象者 JA共済連2025年7月18日
-
「農山漁村」インパクト創出ソリューション選定 マッチング希望の自治体を募集 農水省2025年7月18日
-
(444)農業機械の「スマホ化」が引き起こす懸念【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年7月18日
-
【サステナ防除のすすめ2025】水稲害虫の防ぎ方「育苗箱処理と兼ねて」2025年7月18日
-
最新農機と実演を一堂に 農機展「パワフルアグリフェア」開催 JAグループ栃木2025年7月18日
-
倉敷アイビースクエアとコラボ ビアガーデンで県産夏野菜と桃太郎トマトのフェア JA全農おかやま2025年7月18日
-
「田んぼのがっこう」2025年度おむすびレンジャー茨城町会場を開催 いばらきコープとJA全農いばらき2025年7月18日
-
全国和牛能力共進会で内閣総理大臣賞を目指す 大分県推進協議会が総会 JA全農おおいた2025年7月18日
-
新潟市内の小学校と保育園でスイカの食育出前授業 JA新潟かがやきなど2025年7月18日
-
令和7年度「愛情福島」夏秋青果物販売対策会議を開催 JA全農福島2025年7月18日
-
「国産ももフェア」全農直営飲食店舗で18日から開催 JA全農2025年7月18日
-
果樹営農指導担当者情報交換会を開催 三重県園芸振興協会2025年7月18日