3大白物特売商品として復活する『コメ』【熊野孝文・米マーケット情報】2020年9月29日
10月に入ると仲介業者が会員コメ卸等に送るコメの売り買いメニューが大きく変化する。とくに売りメニューはほとんどが新米になる。9月25日に各仲介業者が会員社に発した売買一覧表を見てみるとほとんどが2年産米で、産地銘柄別に60キロ玄米当たりの価格や数量が記載されている。
仲介業者の情報伝達手段はいまだにFAXというところが多く、10月8日に取引会を開催する日本コメ市場も当日にFAXで会員卸に売りメニューを送り、別途買い注文の記載用紙を添付してそこに買い注文を書き込み、当日に成約するというスタイルを取っている。仲介業者のなかにはメールで会員社に売り買いメニューを送るところもある。その一つに大阪堂島商品取引所の会員取引員がコメの当業者に発信している「合意早受け渡し現物売り買いメニュー」と言うものがある。
それを見ると2年産米の売りメニューは48産地品種約1万俵もある。参考までにそこに記載されている主だった産地品種の売り唱え価格(1等建値税別)を記すと、北海道ゆめぴりか関東着1万6450円、青森つがるロマン東北置場1万2000円、まっしぐら東北置場1万1700円、秋田あきたこまち関東着1万2950円、岩手ひとめぼれ関東着1万2300円、山形はえぬき関東着1万2300円、宮城ひとめぼれ関東着1万3000円、福島会津ひとめぼれ東北置場1万2400円、福島中通りコシヒカリ東北置場1万2400円、新潟魚沼コシヒカリ関東着1万8100円、新潟一般コシヒカリ北陸置場1万4400円、富山コシヒカリ近畿着1万4700円、石川コシヒカリ関東着1万3900円、栃木コシヒカリ関東着1万2350円、茨城コシヒカリ関東着1万2350円、千葉粒すけ関東置場1万2500円といったところ。
これらはあくまでも売り唱え価格であり、当然のこととして買い指し値はこれよりも安い。では実際にどうやって売り買いが成約するのかを知るには、席上取引を行っている現場に行ってみるのが最もよくわかり、臨場感もある。先週、8か月ぶりに千葉市で業者間の席上取引会がリアルに開催されたので行ってみた。
そこで成約したもの中に千葉コシヒカリ1等置場1万2250円と言うものがあった。どうやって成約したかと言うと、埼玉の白米卸が置場1万2200円で買い声を上げたのに対して千葉の集荷業者が1万2300円の売り唱えで、場立ちが双方に歩み寄りを求めて成約にこぎつけた。この成約価格にはいろいろな意味がある。一つにはふさこがねやふさおとめ、あさひの夢などはあっさりと1万2000円を割り込んだが、量販店での売れ筋商品であるコシヒカリは買い気があるということ。2つ目は他産地の新米のハシリ価格に比べ関東の新米の下げが早く、割安感が芽生えたことで、実際、この取引会の参加者の中にも西市場に関東の新米を30車ほど売った業者もいる。この取引会では成約しなかったが、2年産の売り買いでのもうひとつの変化は「先渡し条件」での成約が増えていることで、中には年明け以降の受渡し条件で成約しているものもある。これは買い手の卸は元年産在庫が多いものの、だからと言って新米を買わないわけにはいかない。今は必要ないが先行きの分を手当てしておくという動き。
そのことは量販店との新米値入交渉が進んでおり、原料玄米のコスト計算がしやすくなったことも一因。量販店との値入交渉はリベートやセンター使用料などいろいろな条件が付加されて単純ではないが、精米納入価格だけ言うとだいたい元年産に比べ5キロ当たり100円下げで交渉が進んでいる。そうした納入価格交渉が進んだ結果、中間クラスの銘柄米の店頭価格が値下がりして1500円程度になっている。もちろん店頭価格をいくらにするかは量販店側の裁量で、仕入れ価格が下がったにも関わらず店頭価格を全く下げない量販店もある。そうかと思うと自ら赤を切って5キロ980円という破格値で新米を売り出すところもある。この量販店に納入している卸によるとトラックで運んだ新米はその日のうちに売り切れてしまう。抜群の集客力で経営利益は量販店のなかでも1,2を争っているというのだから単なるディスカウンターではない。大手量販店も競合相手のこうした売り方を座して見ているわけではない。「コメ限定10倍ポイントセール」を始めたところがあるほか宮崎コシヒカリを5キロ1280円で特売した大手量販店もいる。
かつて3大白物特売商品と言えば、砂糖、卵、コメであったが、この5年間コメはそれから外れていたが2年産から復活の年になることは間違いない。
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