学術会議会員任命問題を考える【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第119回2020年10月8日
先週末10月2日の朝、新聞を広げて絶句してしまった。日本学術会議の推薦した会員のうち反政府的な姿勢をかつて示したと言う6名の学者の任命を政府が拒否したと言うのである。そもそも学術会議の会員の選出・任命権は政府にあるのではなく、国民に付託された学術会議=学者の総意にある、それを政府は否定したのである。
時の宗教的権威、政治権力、経済的圧力などによって学問の発展が歪められたり、抑圧されたりすることのないよう、戦争に協力した戦前のような過ちをふたたび冒したりしないよう、学問に関わる人事は学問に直接携わる人々によって自主的に決定する、こういう長い厳しい闘いを経て戦後ようやく獲得した学問の自由の一つを、菅政権は踏みにじろうとしている。
戦前政治屋家系の安倍よりは菅の方がまだましだろうと思っていたのに、期待は大外れだった。秋田農村的な横浜下町的な知識や教養に期待したのだが、アメリカ・トランプ的な知識や教養を身につけた階級に属するお方だったようだ。
さすがに新聞論調は批判的であり、法理論としてもおかしいと指摘している。
しかし政府は蛙の面にしょんべん、説明も何もしないで、数の暴力で強行しようとしている。与党の議員に良識・良心はないのだろうか。1億5000万円ももらって票を買い集めて当選するような議員、それをまともに批判もせず、辞職も求めない「物言わぬ議員」諸侯には言って無駄というものか。
「粛々と」沖縄の人たちの心を踏みにじってきたように、菅首相はこれから問答無用で「粛々と」学問の自由を強権的に蹂躙していくことになろう。そしてやがて大学は大学とは言えなくなり、軍事研究大学・巨大企業奉仕大学化していくことになろう。
学問の自由ばかりではない、菅政権は協同組合精神もお嫌いなようで、安倍政権を引き継いで農協潰し、農産物輸入推進に邁進していくだろう。農業・農村の将来はさらに暗くなっていく。
そして日本はアメリカのお供をして世界中で戦争をして歩き、大企業と大金持ちがのさばり歩く国になっていく。巨大企業は巨大企業でさらに軍需産業化を進め、世界中に武器を売り歩く死の商人化していく。
戦後のあの平和を希求していた日本はどこへ行ってしまうのか、世の中真っ暗、まさに世も末、何をする意欲もなくなってしまう。私は長生きし過ぎたのかもしれない、もっといい世の中を見ながら死にたかったのに、もう無理なようだ。
などと嘆いてだけいるわけにもいかない、何とかして菅政権の暴挙を食い止めなければならない。そしてこの問題は学者だけの問題ではなく、国の命運を左右する重要な問題、国民全体の問題であり、何としても国民の力で阻止していく必要があることをあらゆる機会を通じて訴えていかなければならない。
そしてまた、せっかく与えていただいたこのコラムへの執筆の機会に応えて、せめて戦前・戦中・戦後の、高度成長以降の私の80年余の体験(長いばかりで中身はないかもしれないが)を語らせていただいて何かのお役にたてていただかなければならない。
そんなことを改めて考えさせてもらったこの一週間だった。
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