7月4日の東京都議会議員選挙から大動乱が始まる予兆あり【森田実の政治評論】2021年5月22日
「水は舟を載せ、、亦、舟を覆す」(荀子)
都議選が「オリ・パラ」の命運を左右する
東京都民の意識は「20東京オリ・パラ」中止・延期の方向へ傾斜している。奇蹟でも起きない限りこの世論の流れは変わらないと、私は思っている。この都民の意識は都議選に影響する。都議選の最大の論点が「オリ・パラ」を実施するか否かであり、都議選で都民の判断が下る。私は「ノー」が出ると予想している。
この時、小池都百合子知事はどうするか? 責任をとって辞職するという選択はほとんど考えられない。政府とIOCに中止を働きかける方向に動くと考えられる。その時、菅義偉総理はどうするか。IOCはどう動くか。一致して行動することができなければ、政治的混乱は拡大する。都議選は「オリ・パラ」をめぐる矛盾を爆発させるだろう。
「オリ・パラ」が中止または延期になった時、菅内閣は総辞職か衆院解散を考える可能性がある。菅総理はどうするか。選択肢は他にもある。秋まで我慢する道だ。
二つの対立軸
7月4日の都議選には二つの対立軸がある。一つは与野党の対立軸だ。保守と革新の対立といってもよい。「自民・公明・都民ファースト」が保守であり、「立憲・共産」が革新である。
もう一つの対立軸は「自民」対「小池」である。「小池」とは都民ファーストのことである。
この二つの対立軸は、都議選では終わらない。次の衆議院議員選挙に連動する。
「立民・共産ブロック」は「自民・公明ブロック」を倒し、政権を狙うが、今のままでは力不足である。立憲民主党は国民の中に根がない。
小池都知事が、来るべき衆院選に「小池新党」あるいは「希望の党」として参戦する可能性は大いにあると私は予想している。もちろん都知事をつづける道もある。小池新党は「維新」と国民民主党と連携して第三勢力の形成をめざすだろう。そうなると次の衆院選の構図は「自民・公明」対「立憲民主・共産」対「小池・維新・国民」の三つ巴対決となるという事態もありうる。
都議選において最も注目される対立軸は「自民党」対「都民ファースト」である。自民党は公明党に働きかけて「自公選挙協力」を実現したが、安倍長期政権の間に自民党内に広がった"おごり"と"たるみ"を克服できなければ、危機を克服することは不可能だろう。小池都知事が都議選で勝利すれば、国政に参戦する可能性は高まる。この時菅政権は追いつめられる。
もう一つの論点
2021年夏の日本の政治の中心テーマはコロナ禍の克服であるが、大多数の国民は菅政権の失敗と力不足に気づいてきている。ワクチンと治療薬開発のおくれ、医療体制の貧困の責任が、日本政府の無策にあることを知ってしまった。「日本は医療先進国」は真っ赤な嘘(うそ)であることがばれてしまったのである。
都議選とこれにつづく衆院選において自民党政権はこの責任を問われることになる。
とくに自民党が気を付けるべきことがある。それは安倍長期政権の間に自民党議員にしみついた"おごり"と"たるみ"の体質への反省が足りないことである。このことに気づいている自民党幹部はごく少数にすぎない。
7月4日の都議選において、多くの都民は、菅自民党政権のコロナ対策の失敗と力不足、ワクチン・治療薬開発の立ちおくれ、長期政権で身についてしまったおごり体質を批判するだろう。この潮流は次の衆院選に連動し、菅自民党政権を追いつめる。自民党政権は、1993年、2009年につづく政権危機に立たされている。自民党はこのことに気づくべきである。
二つの危険性
いま日本の政治は二つの危険性に直面している。一つは、日本全体が反中国熱に冒されていることだ。政界全体が「反中国」熱に浮かれ、米国政府の中国包囲網づくりに加わっている。米国政府が企てるアジア分断策に乗せられている。冷静になるべきだ。
第二は、自民党内の右翼的勢力は日本が平和的経済国家として生きることを忘れ、対中国防衛力強化を名目に防衛力を増強し、軍事国家をめざすことを考え始めていることだ。これは破滅への道である。
自民党内には、反中国世論の高まりに便乗し、反中国ナショナリズムを煽(あお)り立てることによって自民党の危機を乗り切ろうとする危険思想が芽ばえている。注意しなければならない。
日本には平和主義に立つ経済国家として生きる道しかない。アジアは一つでなければならない。日本は平和外交に徹し、中国、韓国、北朝鮮と話し合い、東北アジアの平和のために努力しなければならない。
反中国ナショナリズムの感情を煽り立てることは百害あって一利なしである。
自民党は政局安定のため衆院選後に小池新党との保守合同を真剣に検討すべきである。
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