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中国・台湾のCPTPP加盟の非現実性の現実性は?【近藤康男・TPPから見える風景】2021年10月1日

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9月中旬、中国(16日)、台湾(22日)と、連続して寄託国のニュージ-ランド(NZ)に対して正式なCPTPP(TPP11 )加盟申請文書を提出した。日本政府はじめ、関係国の閣僚からの発言も続き、米国の貿易専門紙Inside US Trade紙は連日記事を掲載した。NYタイムズやW.ポストも続いた。
中国はTPPの水準を満たせないだろうという日本の閣僚の発言、TPP11参加国閣僚からの歓迎あるいは(内心)反対の発言などなかなかかしましいようだ。
当コラムでは、協定の内容を基に、考慮すべき論点を整理したい。協定上は、中国・台湾共に、論理的には参加の可能性があり得ると思われるが、多国間交渉はパワ-ポリティクスの世界であり、結果について予測することは避けたい。

新聞で報道された主な論点と各国の立ち位置

一般的に言われているのは、TPPの高水準のル-ルに対して、非市場経済国の中国は、特に国有企業章の補助金禁止・データ流通の自由やソースコ-ドなどの開示要求禁止・政府調達の内外企業の公平な扱い・強制労働の禁止などを満たすのは難しいなどの点だ(9月18日付日経)。
また閣僚などの発言からは各国の立ち位置は概ね次のようになっている(9月23日付日経)。
・日本:高水準の基準を満たす用意があるのか見極めていく必要がある(閣僚)。非公式協議もしていないので加盟のハードルは未知数だ(通商政策担当)。
・マレ-シア・シンガポ-ル:歓迎する。
・メキシコ:慎重   
・オーストラリア:いくつかの対中輸出品での係争事項を抱え難色示す。
そして、台湾の加盟については日中両国から以下のような発言がある。
・国務院台湾事務弁公室の報道官:(中国は一つの原則に立ち)中国と国交を結んだ国が台湾と協定を締結することに断固反対する(9月23日付日経)
・自民党総裁選立候補者:4候補とも支援・歓迎を表明(9月24日付主要各紙)

1つの中国原則の下で台湾の加盟は可能なのか?

TPP協定では「締約国とは、この協定が効力を有する国、または独立の関税地域をいう」(第1章・B節一般的定義第1-3条)とされており、台湾は今回も「独立の関税地域」として申請しているし、既にWTOにおいても同様の資格で加盟している(9月23日行政院鄧振中政務委員)。
この点を考えると協定上は十分可能と考えるのが論理的だろう。しかし、一方で締約国の1ヵ国でも反対すれば台湾の加盟(中国も同じ)は認められないのも事実だ。TPPでは、概略"TPP委員会が設置する作業部会が検討し、TPP委員会に報告、全員の同意により加盟が認められる"といった内容で規定されている(30章最終規定第4条加入)。
ただ、中国が強硬に反対し締約国に働きかけた場合には、中国の加盟に対しても締約国の一部から反対の声が出ることも考えられる。

中国はTPP基準をクリア出来るのか、例外規定はあるのだろうか?

まず「安全保障上の例外」(29章第2条)がある。米中覇権争いが続く中で中国だけでなく、日米を始めいくつかの国も投資・貿易について経済安保上の措置を講じてきている。そしてTPP29章第2条ではA項に加え特にB項で、"安全保障のための措置を取ることを妨げない"と規定している。

「国有企業」はどうだろうか?

日本以外の全ての国(シンガポ-ルは実質的に協定本文に続く付属書Eで留保措置<例外措置>を確保している)は、米国も含め17章の国別付属書で73ペ-ジに渡って留保措置を確保している。中国の補助金を問題にしているが、重要な規定である"非商業的支援(経営補助)による悪い影響を与えることの禁止"の例外も各国の措置に散りばめられている。ちなみに日本政府はこの付属書について、"日本は無関係"として翻訳も公表もしていない。

もう一つのハードル「政府調達」はどうか?

ここでも各国の市場開放の対象となる対象機関や基準となる金額の一覧を掲載し、併せて経過(猶予)期間も規定されている(15章政府調達の国別付属書)。
政府調達については、何故か、中国も米国も最近になって国産の優先度を高めるという同じような政策を採用している(米国:7月30日付日経、中国:8月12日付日経)。

なかなかややこしい?「知的財産」

新聞報道によると、中国は15ヵ年戦略で、地理的表示、外国との相互認証、不法な商標登録摘発など含め、特許・商標・著作権保護法などを改正し、取り締まりも強化する、など知的財産権保護強化の法整備・態勢整備を進めるという(9月24日付日経)。
知的財産についても他のいくつかの分野と同様に国別・条項ごとに数年~10年程度の経過措置が規定されている(18章「知的財産」83条最終規定)
18章は百数十ページと膨大で、関連する他の国際協定との関係にも規定が及んでおり、中国の法整備もこれからなので、TPP協定との整合性への言及はこの程度にしたい。

カナダ・メキシコにとっての難題、新NAFTAの非市場経済国との自由貿易協定条項(第32章Section B-10)

トランプ政権で改訂された新NAFTA(USMCA)に追加されたこの条項によれば、CPTPPにも加盟しているカナダ・メキシコは、①中国のCPTPP加盟について交渉をすることとなった場合には、米国に通知する必要があり、②交渉開始後は、経過を米国に明らかにし、③CPTPPに中国が加盟を認められた場合には、米国は新NAFTAにおけるカナダ・メキシコとの合意を終了することも出来る、とされている。
新NAFTAを受けてトランプ政権が公表した18年12月の「対日交渉目的概要」、19年1月の「対EU交渉目的概要」の一般規定にも同様の内容が載っている。日米貿易協定には含まれなかったが"本格交渉"では如何?

米国は依然"TPP原協定の署名国"として存在していること、2010年のAPEC首脳会議では、アジア太平洋自由貿易圏FTAAP推進が確認されていることも忘れるわけにはいかない。
中国・台湾の加盟問題が、地域の緊張緩和と対話促進に向かうような形となることを期待したい。
また、TPP反対運動の立場としては、各国の社会的枠組みまでを規定する多国間協定は分野を大幅に縮減し、公正・互恵の貿易を中心とする協定とされるべきと考えたい。

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