(256)コロナと食料消費:日米の違い【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2021年11月5日
コロナ禍2年目も半分以上が過ぎました。この1~2年で生活パターンが大きく変化したようです。食生活における具体的な変化を少し海外との比較で見たいと思います。
総務省の家計調査を見ると、我々の生活がどう変化しているかの概要を数字で把握することができる。今回は2020年の「消費支出の費目別対前年増減率(二人以上の世帯)-2020年-」という資料をもとに少し考えてみたい。
2020年の場合、月平均の消費支出は27万7,926円であり、名目増減率が▲5.3%、実質増減率も▲5.3%である。話を簡単にするために、以下、名目増減率のみで割合を見ていく。
食料支出は月額8万198円(▲0.3%)であり、前年をわずかに下回るがほとんど変わらない。この数字だけを見ると、コロナであろうがなかろうが食費は変わらない...、と思えるが問題はその中身である。
食料支出の内訳項目は、穀類、魚介類、肉類...、ときて酒類、外食、となる。結論を先に言えば、外食が減り(▲26.7%)、酒類(+13.6%)、肉類(+10.9%)、油脂・調味料(+9.4%)が大きく増加したというのがコロナ禍最初の1年間の総括である。
何となく、多くの人が感じていたとおり、外出が減少した結果、外食が減り、その分、自宅で酒を飲み、料理をする...という生活がストレートに現れている。詳細はコラムでは無理だが、少し細かく見ると外食が減少した分、恐らくは自宅で多少は良い食事にしようと思ったのであろうか、酒類では高級酒、肉類、魚介類(+4.7%)では比較的高級な素材が伸び、さらに料理用の調味料などがそれなりに伸びている。
また、その他の項目でも、野菜・海藻(+8.4%)、乳卵類(+7.6%)、果実(+4.1%)など素材系が伸びているのはこうした行動を裏付けている。
その一方、伸び率こそ+3.2%だが、金額的には1万1,041円と、食料費最大の項目を示しているのが調理食品であることも理解しておく必要がある。つまり、誰もが自宅で料理をする訳ではなく、調理食品需要は十分大きいことを示している。
さらに、菓子類(▲2.2%)の減少は、人の動きが減り贈答品などへの影響が出たものであろう。
それにしてもコロナ禍の人の動きは、食費だけでなく様々な影響が生じている。ざっと見ただけで、住居(+1.6%)、光熱・水道(+1.6%)、家具・家事用品(+8.5%)、被服及び履物(▲18.9%)、保険・医療(+2.0%)、交通・通信(▲8.8%)、教育(▲10.5%)、教養・娯楽(▲18.6%)、その他の消費支出(▲7.4%)、というのが全体像である。
自宅にいることが多くなると、家具・家事用品の支出が増えるが、中でも家事用消耗品が最大の伸び率(+15.1%)を示し、被服及び履物は人と会う機会が減少したせいか、ほぼ全項目で▲20%程度の減少をしているが、生地・糸類だけが+19.2%というのは面白い。大変だと言いながらも実はどの分野の業績が伸びているかがよくわかる。
似たような調査は海外にも存在する。例えば、米国の場合、食事を自宅で取る(FAH:food at home)場合と外食(FAFH:food away from home)する場合の支出についてのデータが米国農務省より出されている。
このデータによると、2020年の食料支出(全体)はインフレ調整後の実質ベースで▲7.8%である。そして、FAHが▲4.8%に対し、FAFHは▲19.5%である。
これはこれで大きいが、先ほどの日本の例では同じ年の外食は名目で▲26.7%(実質は▲28.2%)である。2020年の状況はどうであったかをよく思い出してみた方がよい。
もちろん、単純な比較は危険である。だが、当時の感染者数の推移や具体的なレストラン・飲食店店舗の営業・閉店という状況の違いを無視し、例えば、強制的なロックダウンではなく、「自粛」という事態が生じた場合、全体としてどう行動するかである。
外食支出の変化という一面だけを見ても日米で大きく異なる点には単なる国民性の違いというだけでなく、ビジネスを行う上での様々なヒントが隠されている。それを考えるのもまた興味深い。
* *
各国との比較、あるいは人種間での比較をした場合、良くも悪くもこうした点が、日本人の特徴、ひいては日本市場の特徴として出てくるのかもしれませんね。
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三石誠司・宮城大学教授のコラム【グローバルとローカル:世界は今】
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