東アジア外交の再建を迫られる岸田内閣【森田実の政治評論】2021年11月27日
「アジアの兄弟姉妹よ! 我々は理想の中を長い間さまよってきた。さあ、再び現実に目醒めようではないか。...アジアは一つである」(岡倉天心)
形骸化している東アジア外交
最近、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に非常にくわしい友人から、いまの日本と北朝鮮の関係について話を聞いたところ、「北朝鮮政府は日本との関係改善は当分の間不可能だと考えている。北朝鮮は日本政府に対して何も期待していない。最近は日本政府からの働きかけもない」とのことだった。
米国政府主導の北朝鮮への制裁が実施されている上、日本政府独自の制裁もあり、日本政府と北朝鮮政府との接触はほとんどない。
安倍晋三元総理、菅義偉前総理、岸田文雄現総理は、「自分の政治の第一の課題は拉致問題の解決だ。自分の内閣で必ず解決する」と繰り返し声高に宣言しているが、北朝鮮政府と接触しようとする動きはほとんどない、と最近の北朝鮮をよく知る友人は言う。「内閣総理大臣は拉致家族会に向かって声高に叫ぶだけで、実際には北朝鮮政府への接触の努力はほとんどない」――これが北朝鮮側の見方である。
歴代の内閣総理大臣が、努力している振りをしているだけだったとすると、事は重大である。パフォーマンスよりも実際の努力が大事である。日本政府が拉致問題を本気で解決しようとするのであれば、北朝鮮政府との話し合いをしなければならない。それをしていないとすれば、不誠実の謗(そし)りを免れないであろう。
中国の親日派に広がる日中関係悲観論
岸田文雄総理は、去る8月末に自民党総裁選に出馬を声明した時、「幹事長が連続して5年もやるのは長すぎる。3年に限るべきである」と声明し、これを出馬の理由にした。岸田文雄氏は「くせ玉」を投げたのだった。だが、不思議なことが起きた。マスコミがこの岸田文雄氏の「くせ玉」を支持したのである。日本の政治ジャーナリズムも落ちたものである。正常な政治常識があれば岸田氏の「くせ玉」が支持されることなど考えられないことであった。
この岸田発言を受け、動揺した菅義偉総裁は、自民党総裁選前に党役員人事を行うことにした。これも驚くべきことだった。これにより、二階俊博氏は幹事長を退任することになった。
この二階氏の幹事長退任を中国側は日本の政治が従米反中国路線一色になる方向へ大きく動いたと見たようだった。
二階俊博氏は、中国政府が推進している「一帯一路」政策を支持していた。中国側からは、自民党内で「一帯一路」を支持している有力政治家は二階俊博氏ただ1人だと見られていた。この二階氏が自民党内運営の中心から離れることになったことに、中国政府側に失望が広がった。日中両国の太いパイプが失われたのである。
岸田内閣で外相に就任した林芳正氏は露骨な従米主義者ではなく、中国政府にもパイプのある中立的な政治家とみられており、日中関係改善への期待はあるが、二階俊博氏と比べると迫力に欠けている。
二階俊博氏を失った自民党政権は、中国側からは従米主義者集団とみられている。
こうした状況下で、中国国民の対日感情はきびしいものに変わりつつある。
中国の新聞を読んでいると、中国の対日感情が徐々に悪化していることがわかる。
日本は、安全保障面では日米同盟が基軸だが、経済関係では中国との相互依存関係が強い。日本と中国との対立が激化し、日本が米中対立に巻き込まれるようなことになれば、日本経済は深刻な打撃を受けることになる。
岸田内閣が従米一辺倒の政治を改め、中国、韓国、北朝鮮に目を向け、東アジアの責任ある政府としての自覚を持たなければならない。
大切なのはアジアの平和と安定である。アジアの平和と安定は、日本と中国の平和友好関係にかかっている。
政党指導者には長期的世界的視野が必要
いまの日本の政治指導者の関心は、2022年夏の第25回参議院議員選挙に集中している。
岸田文雄内閣が大型予算を組むのも2022年参院選を乗り切るためである。
野党第一党の立憲民主党代表選の議論も、2022年の参院選に勝利するためである。4人の代表候補が思い切った議論をしようとせず、一致点のみを強調するのも、参院選を有利にしたいためである。
すべての政治指導者が、コロナ対策、経済対策、拉致対策を強調するのも、参院選のためである。すべての道は参院選に通じている。
しかし、政治指導者は、つねに国際的視野と長期的展望を持たなければならない。とくに東アジア外交を立て直すために努力を怠ってはならない。日本は、米国と中国の中間に立って、アジア太平洋地域の平和と安全のため努力しなければならない。とくに中国との関係改善が急務である。
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