お弁当・お惣菜大賞受賞品で使われているコメ【熊野孝文・米マーケット情報】2022年3月1日
一般社団法人全国スーパーマーケット協会が取りまとめている「スーパーマーケット白書」。A4版130ページになる白書には業界全体の動向はもちろん商品カテゴリー別の月別販売動向やパンデミックスがもたらした食生活の変容など興味深い内容がデータとともに紹介されている。年間売上額が25兆円にもなるというのだから、スーパーでの売れ行きが納入業者にとってはもちろん生産者にとっても経営に直結する貴重なデータが満載されている。その白書の冒頭に「2021年のカテゴリー別動向の特徴としては、前年不振となった惣菜カテゴリーは売上が回復し前年を超過した」という記述がある。
スーパーでの惣菜売上額は年々増加しており、2021年の実績は1兆22460億円に高まり、全店売上に占める比率も10.5%になっている。今後さらにそのウエイトが高まると予想されているためかスーパーマーケット協会では「惣菜デリ最前線」という冊子も作っている。その冊子に2022年「お弁当・お惣菜大賞」の受賞作品が写真入りで紹介されている。参考までに受賞商品がどんなコメを使っているのか紹介したい。
<タイ・ベトナム料理部門最優秀賞>TOSA-GAPAO・販売価格498円「高知県産コシヒリ100%。ご飯に南国市で栽培された有機グァバ茶の粉末をご飯と混ぜ合わせて炊き上げる」
<弁当部門最優秀賞>鯛の旨味あふれる"鯛めし"・599円「新たに魚原料米飯を開発・ひとめぼれとはえぬきのブレンド米で真鯛だし、鯛身、調味液を入れて炊き上げる。ごはんの量は500g」
<弁当部門最優秀賞>山形まるごと弁当・2160円「庄内地域のつや姫、村山地域の雪若丸。つや姫は品評会で入選したコメ」
<おにぎり部門最優秀賞>具材たっぷり大きなおにぎり(天むす)・198円「はえぬきとあきたこまちのブレンド米。冷めても粘りと旨味を感じられるコメ。炊き上がりに瀬戸の焼き塩を混ぜ込む」
<おにぎり部門最優秀賞>プチっともち麦の高菜ベーコンむすび・190円「コメは広島県世羅町産の特別栽培米コシヒカリ、もち麦は広島県安芸高田市産のキラリモチ。もち麦25%、うるち米75%の配合。ごま油でコーティング。今後美人玄米を使用した商品の開発予定」
<寿司部門最優秀賞>寿司職人が作る なにわ宝ちらし・2000円「精米直後の伊賀米の特選米と硬質米のブレンド」
このコンテストは42000件もの応募がある中から選ばれたものだけにクオリティーが高く、その分売価も高いものになっているが、コロナ禍で老舗外食店名が付いた弁当が人気になるなど高価格の弁当も売れるようになっているとしている。受賞商品の中にはコメ卸が本業の会社が作っているものもあり、コメへのこだわりが感じられる。
コメへのこだわりが良く分かるのが、昨年、おにぎり部門で最優秀賞を受賞した「店内手作りおにぎり又兵衛しまほっけ」の開発担当者のインタビュー記事である。こだわりの原料について「一番の特徴はコメです。コメは、粘り、香り、歯ごたえ、うま味、どれをとっても最高品質で、冷めても美味しい地元産コシヒカリ『プレミアムいわきライキ』『いわきライキ』を使用しました。おにぎり作りを一からご指導いただいたおにぎり浅草宿六の三代目・三浦洋介師匠からは『ぬかもうま味』とご指導いただいており、食べる時にコメの風味とうま味がしっかりと残る洗米方法を受け継ぎました」
炊飯時に使用する精米の糠の残留度合いまで美味さの尺度として見ているとなると、今後、糠のどの成分が旨味を感じさせるのかと言うことも開発担当者の関心事になるだろう。受賞企業の事例の中には、受賞・入選作品を集めてフェアを開催したところがあり、その時の期間中の寿司の売上が前年比144.5%にもなったというのだから実ビジネスにも直結しているコンテストだと言える。
この冊子にも紹介されている惣菜製造販売の企業からコメについて相談を受けた際に総菜売り場の面積当たりの売上が日本一だという店舗に案内された。一言で言ってしまえば品揃えの多さとクオリティーの高さに「圧倒された」という感想だが、売り場の前の厨房の広さにも驚いた。その部分を切り取って郊外レストランとして出店しても繁盛店になるだろう。売り場に立ち寄った際にその商品のレシピを開発したプロのシェフの話を聞く機会を得たが、一番聞きたかったのは「なぜこれほどまでに安価で提供できるのか」と言う点であった。その答えの一つが売れ筋のポテトサラダを作る際にジャガイモの皮をどこまで薄く剥けるか研究・開発して取り入れたという。コメも皮の剥き方が新たな関心事になるかもしれない。
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