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【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】「食料危機」の今、どうして「農業潰し」なのか2022年3月17日

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今、水田の転作作物への交付金カットで、全国の農村現場が大混乱に陥っている。

水田活用交付金について次のことが決まった。
① 5年間水稲の作付け(水田の水張り)がなければ交付対象外とする、
② 飼料用米の新規の複数年契約は交付対象外とする、
③ 多年生牧草が対象の助成は、種まきをせず収穫のみを行う年については現行の10a当たり3万5000円から1万円に減額する。

今、ウクライナ危機も勃発し、大局的には、国内の農業生産振興を強化が、主食用米も、飼料用米も、麦も、大豆も、野菜も、牧草もすべて含めて急務なことは誰の目にも明らかである。

そんなときに、主食用米を減らせと言い、さらに、転作は支援する言っていたのに、こんどは、転作しても支援しないと言い出した。飼料米や麦や大豆や野菜やそばや牧草の作付の支援をカットすると言われたら、農家は立ち行かなくなる。離農が続出し、耕作放棄地がさらに広がる。自給率もさらに急降下する。

海外からの食料と生産資材が高騰し、調達もままならない食料危機が始まっているときに、国内生産振興どころか、国内の農業を潰して、どうやって危機に対処するのか。国会でも「食料自給率」という言葉が、未だに政府からほとんど出てこない異常さである。

そうでなくとも、すでに現場はさらに苦しんでいる。肥料、飼料、燃料などの生産資材コストは急騰しているのに、国産の農産物価格は低いままで、農家は悲鳴を上げている。こんなに輸入小麦がたいへんな事態になっているのに、国産小麦は在庫の山だという。

政府だけでなく、加工・流通・小売業界も消費者も、国産への想いを行動に移してほしい。今こそ、みんなで支え合わなくては、有事は乗り切れない。

そして、国家戦略もなく、人としての心もなく、ただ、歳出削減しか見えない財政政策こそが最大の国難である。

本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。

鈴木宣弘・東京大学教授のコラム【食料・農業問題 本質と裏側】 記事一覧はこちら

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