「食べるために生きる」イタリア人とチーズ ローマ在住ジャーナリスト・茜ヶ久保徹郎【イタリア通信】2022年6月18日
イタリアはグルメ王国、と言っても有名なシェフが作る洗練された高級料理ではなく、いわゆるB級グルメ、田舎料理が最高です。「生きるために食べる」のではなく、「食べるために生きる」と言われるイタリア人。初めて会う人でも食べ物の話をすれば直ぐに仲良くなれます。そしてお国自慢、自分の田舎の食べ物が世界一だと主張します。事実イタリアでは40~50キロ離れたら違った料理が食べられ、みなとても美味しいのです。
チーズの味見を楽しめるローマの試食・即売会場の様子
ワイン、オリーブオイル、生ハムやサラミなど色々ありますが、中でもチーズは500近い種類があり、それぞれが特徴を持っています。
紀元前3000年のメソポタミアのレリーフに神官がチーズを作っている姿が描かれているそうです。この地域では8000~1万年前に動物の飼育が始められており、偶然、子ヤギの胃の中に凝固したミルクを見つけて食べたのが始まりだと言われています。
これを食べる習慣は現代まで続いており、地中海に浮かぶサルデニア島のヌオロにはカッルデカヴァレットゥという子ヤギの胃袋の中にできたチーズがあり、1キロ450ユーロ(約5万8000円)もします。イタリアで一番高いチーズだそうですが、ちょっといかもの食いの感じがします。エジプト、ギリシャ、ローマ、そして中世から現在まで、ほとんど同じ方法で作られ続けてきました。
チーズは日本料理と並んで健康食と言われる「地中海ダイエット」の一角を占める完ぺきな食品です。
イタリア語でチーズはフォルマッジョまたはカーチョ、1925年にできた法律で作り方と原材料は、牛、ヒツジ、ヤギ、水牛の乳と規定されました。
北イタリアの中堅チーズメーカー
そしてイタリアにはミルクを加工する企業が4463あり、ヨーロッパでトップクラスのチーズの生産量を誇っています。年間生産額は100億ユーロ(約1兆3000億円)を超え、多くはDOP、IGP、STGなどの原産地保証を受けており、2021年には36億ユーロ(約4680億円)を輸出しています。
私はバカンスで南イタリアの小さな村、リヴェッロに滞在した際、中心部から少し離れた山林で牧場を経営するフランチェスコさんを訪問したことがあります。
放牧されている牛とフランチェスコさん
フランチェスコさんは家族で100頭ほどの牛を放し飼いで育て、その乳でチーズを作っており、その他にヤギと羊を飼っています。
フランチェスコさんの1日は朝5時から始まり、まずヤギと羊の乳を搾ってチーズの作業場に届け、そこで妹がチーズを作ります。
続いて牛の乳を搾り、自分の作業場でチーズ作りです。
その後またヤギと羊の乳を搾り、夕方動物たちを小屋に入れて家に帰ります。
出来るチーズは1日30キロほどです。
牛やヤギは飼料でなく野生の草を食べているので、乳の量は少ないものの、自然の香りがする美味しいチーズができるそうです。
放牧、手作りと数百年、数千年前と変わらない方法でチーズを作っているフランチェスコさんに伝統とロマンを感じました。
夕食前にチーズでワインをいっぱい。1日の疲れが取れ食欲がわいてきます。どのチーズでどのワインを飲もうかと考えるのも楽しみです。
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