4年産新米出回り前の取引が始まる【熊野孝文・米マーケット情報】2022年7月19日
7月15日に開催されたクリスタルライスのFAX取引会で4年産宮崎コシヒカリと千葉ふさおとめが売り物として登場した。翌16日には千葉市で開催された業者間の席上取引会でも収穫前の4年産米の取引が行われた。いずれも数量的に限定的なこの取引結果を見て、新米価格の位所が確定したとは言いづらいが、参加した集荷業者、卸等の話から新米を巡る情勢を判断すると2、3年産の「俵の重み」から抜け出すにはしばらく時間がかかるという印象を受けた。
クリスタルライスのFAX取引会で提示された4年産米は、宮崎コシヒカリが出回りから8月1日までの受渡し条件が110俵単位で3台、8月2日から8月10日までの受渡し条件が110俵単位で8台。それと千葉ふさおとめが8月末までの受渡し条件で220俵単位で2台になっている。卸が使う量としては極めて少ない数量で、高値で買ってもリスクが大きいと言えるような量ではない。
すでに大手卸中心に量販店に早期米の納入条件が提示されており、その分の一部として買っておけば良いわけでたいしたリスクにはならない。従って7月中に手当て出来るものが昨年の同値の1万4000円であっても想定内の価格と言える。ただし、量販店での精米納入合戦は依然熾烈な競争が行われており、中小卸は宮崎コシヒカリの高値は追えないというポジッションにある。産地側としても3年産在庫を抱えており、これを売りやすくするための新米価格を提示しなくてはならない。それは宮崎コシヒカリも同じ状況にある。
やはり3年産米の需給や価格動向を抜きにしては4年産新米の独歩高という状況は考えられない。
クリスタルライスのFAX取引会では、3年産米が50産地4万5792俵の売り物が提示されている。売り物の数量は前回(5月19日)に比べ36%も減少したが、売りものの加重平均価格は1俵1万2162円(関東持込み税別)で、前回価格に比べわずか63円値上がりしたに過ぎない。売り物が大幅に減ったにも関わらず、価格は上がっていないのである。その最大の要因は量販店等で販売される家庭用精米の販売量が伸びていないことがあげられる。コメ以外のあらゆる食品が値上がりしているのにも関わらず、精米販売量が伸びていないのである。
総務省の家計調査では、今年に入ってからの1世帯当たりの精米購入数量は前年同月に比べ1月が100.8%、2月が100.5%になっていたが、3月は93.2%、4月が94.4%と落ち込んでしまっている。今年に入って量販店等では精米の安売り合戦が激化し始めていたことから販売数量が伸びててもおかしくはなかったのだが、実際にはそうはなっていない。分かり易く言うとコメが安いからと言って朝食をパンからご飯に簡単には変わらないという事を意味している。ただし、コメの需要が伸びる要素はある。
それは業務用米の需要の復活である。コメの生産者が集った勉強会で卸が配布した資料の中に大手外食企業13社の5月の売上高が示されていたものがあったが、いずれの企業も前年同月の売上を上回っており、大戸屋は135.5%、やよい軒126.6%、ロイヤル131.1%など高い伸びを記録している外食企業もある。緊急事態宣言の解除で軒並み外食店での売り上げが増えたのである。
外食業界の回復はコメの需給改善に関しても好材料だが、説明に当たった卸はちゃんと周年安定対策で残っているコメのことにも触れた。それは今年11月以降に販売しなければならない3年産米は周年安定対策分だけでも40万tあるという事で「これが新米価格の足を引っ張る可能性がある」という点。この数量は回転寿司チェーンがしゃり玉を20グラム以上に大きくしても和食チェーンがごはんおかわり無料にしてもそうそう簡単に消化出来る数量ではない。
2年産3年産の在庫消化がスムーズに進むには、供給面で4年産の生産量が減少することが大前提になる。その4年産について九州の業者は南九州の早期米は今月23日、24日ごろに鎌が入ると言った情報や関東でも8月10日に初検査が行われると言った情報が紹介されるなど全般に生育が早まっている。最大の関心事は主食用として供給される4年産米がどの程度になるのかという点にあるが、これについてはまだ公式な見通しは出ていない。
産地側では飼料用米等に振り向けられる分が増えたという見方はあるものの、果たして最終的にどの程度の量になるのかは分からない。集荷業者の見方では飼料用米が増える分主食用に廻るいわゆるBランク米が減るという点で、そうしたBランク米の産地置場価格の下限価格は1万円を確保したいというのが今の状況。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日