組合員との「距離」を近くするコミュニケーションをしよう!【JAまるごと相談室・伊藤喜代次】2022年7月26日
やめてほしい、窓口職員の「いらっしゃいませ~」
A・ライフ・デザイン研究所
代表 伊藤喜代次
行政機関や金融機関、JAなどの職員の研修歴は35年ほどになります。この間、JAの研修で一貫してお願いしてきたことがあります。
それは、来店者に「いらっしゃいませ」のあいさつをやめよう、ということ。
そして、「いらっしゃいませ」に替わる言葉を探して投げかけよう。その際、来店者から「返事がもらえる」、できれば笑顔で返事を返してもらえるように工夫しよう、と。そもそも「いらっしゃいませ」は、一日数千人やってくる不特定多数のお客さんや初対面のお客さまには有効なあいさつです。
JAの支店長研修や管理職研修、中堅職員研修、支店リーダー研修などでは、必ずこの話をします。支店などの店舗や事業所における組合員やお客さんとの会話は、顧客コミュニケーションです。この場合、コミュニケーションとは、言葉や表情のキャッチボールですから、相手から返ってくる言葉を意識して、言葉を投げかけるのです。
ですから、目の前の組合員やお客さんに、常にどんな言葉を投げかけるかを考えていなければならないわけです。それも相手が笑顔で返してくれる言葉を、頭の中で、必死に探して、瞬時に言葉を発する。このような会話術は、窓口のプロの職員の条件なのです。
「いらっしゃいませ」は、入り口の自動ドアが開いたとたんに、来店者の顔も見ず、考えもせず声をかける、心のこもらない、人の組織とは思えない、周囲の銀行と何ら変わらない接客になってしまっている、と考えたからです。
「いらっしゃいませ」をやめて、せめて「おはようございます」か、「こんにちは」という声かけでも、キャッチボールはできます。相手が返事を返してくれます。でも、「いらっしゃいませ」に、来店者は返事ができないのです。無理やり返事をすれば、「いらっしゃいました」です。これでは、コミュニケーションにはなりません。
私が、なぜこんなことを繰り返し繰り返し書くのかと言えば、「いらっしゃいませ」には、組合員やお客さんと、しっかり向き合うという姿勢を感じないからです。コミュニケーションの目的は、相手との距離を縮めること、信頼や安心の関係をつくることであり、物理的な距離としては、75~90cmの関係距離をつくることなのです。これは人間関係距離論のなかで言われていることです。
JAは組合員の組織であり、地域と密接な事業組織ですから、関係性距離をしっかり意識した接客、接遇は、銀行など他の金融機関との「差別化」という視点でも重要で、JAらしさそのものであると思っています。
「こんにちは」、「素敵なお洋服ですね」、「可愛いお孫さんですね」
「いらっしゃいませ」より、「こんにちは」がいいね、という理由は、「こんにちは」を漢字で書けば、「今日は」であり、「今日は、良いお天気ですね」とか、「今日は、素敵なお洋服ですね」など、相手との明るい会話を促すのです。
洋服を素敵と言われたり、孫を褒められて、悪い気持ちにはなりません。必ず素敵な笑顔になります。気分が良くなって、「次に来たときには、定期貯金をつくりますよ」などということも期待できます。
こうしたフェイス・ツー・フェイスでのやり取りは、相手の好みの色、こだわりのデザイン、好きなバッグなどを頭にインプットしますから、名前の記憶も早くなります。
もう一つ、大事なことを書きます。JAの支店の窓口のみなさんには、来店客である組合員の名前を憶えて、呼んであげてください、とお願いしてきました。「こんにちは。◯◯さん、いつもありがとうございます。」組合員の名前を憶え、来店時には、必ず組合員の名前を呼ぶ、これがJAという組織の特性です。
実は、よくよく調べてみると、憶えやすい環境があるのです。JAの1日の平均来店客数は65人前後。もちろん、200人を超える店舗もありますが、これまでのJAでの調査では、40~80人の来店者数は、9割近い店舗が当てはまります。この来店客のうち8割は、月に3~5回来店する頻度の高い方です。いわゆるヘビーユーザーです。
日本人の平均的な脳が、名前を記憶する人数は400~450人だと聞いています。来店頻度の高い来店者を憶えればいいのです。せいぜい300人程度ですから、窓口の職員同士で来店客を話題にした会話や記憶競争などをしながら憶えればいいでしょう。
何度も言いますが、「こんにちは」や来店者の名前を憶えることが重要ではなく、親密で、信頼・安心の関係をしっかりつくること、これが店舗における顧客コミュニケーションの最大の目的です。何でも気楽に声をかけてもらえる、職員である自分の名前もしっかりと憶えてもらう、そんな会話を心がけたいものです。
◇ ◇
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