新米の予約が増加傾向 Oisixとパルシステム 有機米の伸びも【熊野孝文・米マーケット情報】2022年7月26日
オイシックス・ラ・大地(株)(以下Oisix)は、7月20日に「2022年産新米予約受付を行ったところ会員1人当たりの平均予約キロ数が昨年同期の1.46倍になった」とし、アンケート調査で「今年4月以降お米を食べる機会が増えた」との回答が7割を超えたリリースした。また、パルシステム生協は2022年産米の予約登録者数が5%増の20万人になり「穀物高騰でお米の価値が見直されている」とし、特に有機米の登録点数が105.9%になったとリリースした。
パルシステムが作成した2022年版産直データブックに同生協が扱う産直米のうち予約登録米の出荷量と構成比が出ている。それによると2021年度は総数量2万7594tのうち予約登録米は1万2169tで44.1%を占めている。2020年度は総数量が2万8891tで、このうち予約登録米は1万2569tで43.5%を占めている。全体の取扱量が減ったが、予約登録米の減少量が小幅だったことでその構成比率が上がった。組合員1世帯当たりの産直米購入数量は、2020年は36.1キロであったが2021年は1キロ減の35.1キロになっている。
2022年産米の予約登録米は5月末時点で購入件数・数量とも前年産を2・7%上回った。人気産地銘柄のベスト3は秋田あきたこまち、新潟コシヒカリ、北海道ななつぼしで、これはこれまでと変わらなかったが、大きな変化は有機米の購入契約件数が105.9%の伸びたことをあげている。この要因については、一つの側面として「免疫力を向上させるという乳酸飲料が人気になっているように食べ物から身体を作るという健康志向が背景にあるのではないか」と同生協では見ている。
同生協は環境保全型のコメ作りを柱に①農薬・化学肥料の削減②資源循環型の農業③生物多様性の保全を掲げている。その商品の核となるのが「コア・フード米」で、2021年産からコア・フード米は有機農産物に限定して有機JASマークを併記するようになっている。2021年度はこの数量が過去最高の702tになったが、2022年産米で予約数量がさらに増えることになった。
全体の予約数量からすると有機米の数量は少ないが、有機米について「国内の有機米格付け量は2013年度の1万1035tから2019年度は約8500tと1割減少し、拡大は簡単ではありませんが、コメの需要は全般に減少するなかで消費者は有機米への期待が大きくなっています」とその期待に応える取組みを行うと記している。
Oisixの2022年産新米予約は、今年10月から12回に分けて購入者に届けられるものだが、その購入数量は会員1人当たり平均で41㎏になったとしている。トータルの購入数量は公表しないとしているため全体でどの程度増えたのかは分からないが、1人当たりの購入数量が増えた理由について「小麦を中心に食品価格が高騰、お米『回帰』が進んだ」としており、2022年産米の価格を据え置いたことを大きな理由に挙げている。その価格がいくらかと言うと5㎏精米価格だけを示すと、山形ひとめぼれ3480円(税別以下同)、山形つや姫3680円、宮城ササニシキ3480円、阿蘇コシヒカリ3490円になっている。ちなみにパルシステムの2022年産予約登録米の価格(参考価格)は、主だったもので山形つや姫2088円、新潟コシヒカリ2070円、秋田あきたこまち1738円、北海道ななつぼし1738円となっており、販売価格に大きな差がある。
両組織の会員消費者の層の違いが価格設定の違いに現れていると言ってしまえばそれまでだが、Oisixの場合価格を据え置ける価格帯になっているという事も出来る。
パルシステムが2022年産予約登録米の受付を始めるにあたり消費者会員に配布した産直通信にコメ生産者のコメントとして以下のようなことが記されている。
「コロナ禍前から余り気味でしたが、状況が悪くなった感じ。先行きが見えないので、このままコメ農家を続けていいのか正直不安も強いですね。でも予約登録米は事前に出荷量が分かり、収入のめどが立つので、10年後の経営や産地づくりを前向きに考えられるんです」
確かに生産者にとってみれば作付時期から当該年産の販売量と価格が分かれば経営上のメリットは大変大きい。こうした取り組みを特定の組織だけではなく、全国どの産地の生産者であっても、またどのような業態の流通業者や実需者であっても新米の収穫前に販売先と価格が決められる仕組みを作ってみてはどうか?そうした仕組み作りはそんなに難しい事ではない。手始めに全国どこでも受渡可能な先渡し市場のプラットホームを作り、与信管理をしっかり行えば良いのである。
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