【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】生協の「共」の役割に期待する2022年8月4日
「私」(今だけ、金だけ、自分だけ)が「公」(政治・行政)を取り込んで、オトモダチ企業への富の集中と多数の人々の貧困化が進められている中、それを是正するのは「共」(共生システム)の役割である。
「共」の代表格は協同組合(生協、農協、漁協、労働組合など)であり、「私」による、農産物や労働を買い叩き、製品は高く売り、中間マージンを大きくする行動を抑制し、農家や働く人にはより高い価格・賃金を、消費者にはより適正な価格での販売を可能にし、社会全体の利益を増やすことができるのが協同組合である。
ホンモノの生協こそ核に
「ここを通して購入すれば安全で美味しい食べ物を必ず買えるという安心感は価格以上のもの」。これぞ生・消をつなぐ信頼の神髄、生協の産直の原点である。「今だけ、金だけ、自分だけ」の対極に位置し、地域全体の発展に寄与してきた「精鋭中の精鋭」のホンモノの生協が核になることが期待される。
「組織が組織のために働いたら組織は潰れる」。組織は大きくなると官僚化して原点を忘れる。これが一番危険である。小手先の業務改善は要らない。スーパーと競争してスーパー化してしまったら、生協ではない。消費者と生産者の暮らしと命を守ることが生協の存続も守る。農家を守れなかったら消費者の命も守れない。「生協(農協)栄えて農業滅ぶ」はない。「農業滅んで生協(農協)滅ぶ」となる。最終的には食料が身近で確保できなくなれば、日本の国と国民が滅ぶ。
農家と消費者の垣根越え「一体化」図ろう
どんな組織も目先の組織防衛ではなく、現場で努力している人々を守れなければ組織は存続できないことを、農家が赤字で苦しむ今こそ肝に銘じる必要がある。震災時に漁協と連携して現場を救った生協もある。今また、このような生産現場との連携を強化・拡大しなくては農家も消費者も守れない。赤字の農家を全力で買い支えることができるか。ぜひ、生協の皆さんも農村現場に足を運んで話し合ってほしい。農家と消費者の垣根越えた「一体化」を図ろう。
特に、一定の年齢を超えたリーダーは、我が身を犠牲にする覚悟を持って盾になり、若者が矢面に立って潰されないように守りつつ、地域の発展のために「人生の有終の美」を飾ろう。若者はしっかりと研鑽を積み、動く「時機」を待ちつつ力を蓄えてほしい。「公」が「私」に取り込まれて機能しない中、「共」が「最後の砦」になる覚悟を新たにしたい。
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