JAのファーマーズマーケットの使命を再確認しよう!【JAまるごと相談室・伊藤喜代次】2022年9月27日
コロナ禍のファーマーズマーケット、出荷農家対策に工夫を
A・ライフ・デザイン研究所
代表 伊藤喜代次
ここにきて、コロナの感染者数は減少しているものの、大流行となった第7波の収束には時間がかかっています。一時は、1日20万人という感染者数で、世界一という日もありました。そんな状況下でも、コロナ感染防止対策は、2020年の最初の頃の対策以来もっとも緩く、行動制限もない、普段の生活に近い状況です。
コロナ禍によって、一般消費者の消費行動は、感染状況によって変転しました。外出自粛などから外食が減り、自宅での食事が増えた2020年度のスーパーマーケットの売上げは、対前年比で5.8%と大きく増加しました。ところが、2021年度になると一転、対前年比0.4%減に。コロナ特需はわずか1年だけに終わりました(データは、全国スーパーマーケット協会など3団体がまとめ)。
2020年の調査ですが、都市農山漁村交流活性化機構(まちむら交流きこう)が行った、「コロナ禍の農産物直売所の実態に関するアンケート調査報告」(令和3年7月)によると、2020年度は、約6割の店の直売部門の売上げは、前年度比で横ばいから増加傾向でした。外出制限などから来店客数は減少したものの客単価は増加したとの回答が約5割あったといいます。来店頻度が少なくなり、1回当たりの購入額が増えたのですが、昨年から今年にかけての傾向はどうなのでしょうか。
全国の農産物直売所は、コロナ禍においても地域の食と暮らしを支える拠点として存在感を発揮していると思いますし、変化する消費行動へのスピード感ある対応は必要です。
最近、山陰、関東甲信越など6県を車で走りながら、JAのファーマーズマーケットを覗いてみました。職員の方にもお話を聞かせてもらいましたが、コロナ禍で来店者数も売上げもあまり変わっていませんね、との感想が多く、特別の対応はしていない、との反応でした。担当者とはいえ、責任者でもなく、詳細な説明を求めていないので、当然の答えでしょう。実際は、いろいろな苦心を重ねているでしょうが、特別な工夫は感じられませんでした。
農家や農業のことを、もっともっとアピールして!
ついでながら、道の駅についても、コロナ禍の影響調査がありますので紹介します。2020年実施のものです。結論的には、来場者数が7割程度に減少した道の駅が4割を占めており、外出制限や旅行の自粛が強く影響したようです。また、飲食部門を営業している道の駅では、来店者数、売上げともに減少が大きく、テイクアウトサービスの充実、弁当・惣菜の販売などに力を入れているが、カバーできていないようです。
さて、山陰、関東甲信越などのJAのファーマーズマーケットを覗いてみての感想です。コロナ禍にあって、JAのファーマーズマーケットの存在価値は高まったと思いますが、どんな工夫や努力をしているのか、聞いてみたいと思います。
とはいえ、昨今の厳しい農業経営環境のなかで、農家のみなさんのご苦労は想像を超えるものがあります。そのなかで、地域のみなさんの安心・安全・新鮮な食生活を応援し、演出するという役割の発揮は何より重要であることは言うまでもないでしょう。一方で、生産する農家のみなさんにとって、ファーマーズマーケットの存在は、収入を支えるだけでなく、農業の価値が評価され、感謝され、働く意欲を育んでくれる存在であってほしいと願っています。コロナ禍を福とするJAの支援や心遣いが必要です。
ところで、多くのJAにおいて、ファーマーズマーケットの開設計画に関係したり、JAの農業ビジョンや農業振興計画の策定、農家のヒアリングなどの仕事を行ってきたコンサルタントの立場から、拝見したファーマーズマーケットを利用させてもらい、不満に感じた点がありました。
一つは、今年になって、農家の生産費の急増が大きな課題になっていますが、そんな状況を説明する掲示もチラシもないのはどういうことでしょうか。5か所のJAのファーマーズマーケットを訪ねましたが、1か所もありません。本当に、農家に向き合っているのか、消費者に何を訴求すべきかを検討しているのか、直売事業の使命を認識しているのか、と腹立たしく思いました。
「この春からの肥料・農薬・営農資材価格の上昇は、それぞれ平均◯%も上がっています」、「価格転嫁がままならない状況をご理解ください」、「価格の◯%の上昇についてご理解をお願いします」といった掲示があっても良いはずです。
また、私がコンサルなら、「厳しい状況下で、農業に汗する農家にメッセージをお願いします」、とメッセージカードを用意します。農家の生産意欲を低下させたくないとの思いからです。やれることは、たくさんあるはずです。
また、以前から、JAの地域業振興計画の概要などのダイジェスト版のパンフレットを置いて、農業への関心や理解を深める努力をして欲しい、と言っても、実行するJAはわずかでした。
どこを向いてJAのファーマーズマーケットは活動をしているのでしょうか。どんな使命を持っているのでしょうか。再確認してほしいですね。
◇ ◇
本コラムに関連して、ご質問、ご確認などがございましたら、お問い合わせフォーム(https://www.jacom.or.jp/contact/)よりご連絡ください。コラム内又はメールでお答えします。
重要な記事
最新の記事
-
第21回イタリア外国人記者協会グルメグループ(Gruppo del Gusto)賞授賞式【イタリア通信】2025年7月19日
-
【浜矩子が斬る! 日本経済】「政見放送の中に溢れる排外主義の空恐ろしさ」2025年7月18日
-
【特殊報】クビアカツヤカミキリ 県内で初めて確認 滋賀県2025年7月18日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 滋賀県2025年7月18日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 兵庫県2025年7月18日
-
『令和の米騒動』とその狙い 一般財団法人食料安全保障推進財団専務理事 久保田治己氏2025年7月18日
-
主食用10万ha増 過去5年で最大に 飼料用米は半減 水田作付意向6月末2025年7月18日
-
全農 備蓄米の出荷済数量84% 7月17日現在2025年7月18日
-
令和6年度JA共済優績LA 総合優績・特別・通算の表彰対象者 JA共済連2025年7月18日
-
「農山漁村」インパクト創出ソリューション選定 マッチング希望の自治体を募集 農水省2025年7月18日
-
(444)農業機械の「スマホ化」が引き起こす懸念【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年7月18日
-
【サステナ防除のすすめ2025】水稲害虫の防ぎ方「育苗箱処理と兼ねて」2025年7月18日
-
最新農機と実演を一堂に 農機展「パワフルアグリフェア」開催 JAグループ栃木2025年7月18日
-
倉敷アイビースクエアとコラボ ビアガーデンで県産夏野菜と桃太郎トマトのフェア JA全農おかやま2025年7月18日
-
「田んぼのがっこう」2025年度おむすびレンジャー茨城町会場を開催 いばらきコープとJA全農いばらき2025年7月18日
-
全国和牛能力共進会で内閣総理大臣賞を目指す 大分県推進協議会が総会 JA全農おおいた2025年7月18日
-
新潟市内の小学校と保育園でスイカの食育出前授業 JA新潟かがやきなど2025年7月18日
-
令和7年度「愛情福島」夏秋青果物販売対策会議を開催 JA全農福島2025年7月18日
-
「国産ももフェア」全農直営飲食店舗で18日から開催 JA全農2025年7月18日
-
果樹営農指導担当者情報交換会を開催 三重県園芸振興協会2025年7月18日