事業は協同活動である 日本協同組合連携機構常務理事 藤井晶啓【リレー談話室】2022年10月1日
誤解を恐れずに言えば「自己改革は耳にタコ」という方が多いのではないか。平成26年の農協改革圧力に対抗し、JAグループが「改革は外部から強制されるものではなく、自ら考え自ら実践するもの」との思いで自己改革を掲げてからすでに9年目。その間、自己改革の継続を条件に准組合員の利用規制を阻止することができた。
振り返ると、5年後条項決着までは規制改革推進会議という目に見える敵が存在した。では、これからは誰にむけた改革なのだろうか。「自己改革」という同じ言葉を用いているが、監督指針で定められた自己改革の方針と実績等を毎年総会決定することとなった令和4年度以降はステージが変わったと受け止めている。
・活動と事業を一体的に
自分は先輩から「活動と事業とは車の両輪」と教えられた。しかし、減員されながら一層の専門性を求められる今の現場にとって、車の両輪論は、活動と事業という車輪をつなぐのは車軸という3番目の人の役目であり実績をあげるべき自分の役目ではない、という誤解を与えないだろうか。
協同組合はもともと組合員自らのニーズによる経済的・社会的活動を出発点とし、複雑化・専門化に応じて専従職員が運営機能を担い、事業となった。
職員が事業を担うのが当たり前となった今日では、利益を得るのが「事業」、利益を生まないのが「活動」と受け止めていないか。利益という単純故に強力な物差しが暴走すると、事業で利益を生むのだから「組合員は利用者であり顧客」、活動は利益を生まないサービスだから「コスパが悪い」という考え方を生みかねない。しかし、そこには協同組合らしい三位一体性は皆無である。
むしろ、いかに協同組合の事業が複雑化・専門化しようとも、協同組合の根本的な原理は「組合員の協同」にあるのだから、事業と活動とを縦割りで切り分ける癖から脱却したい。
・「事業総論」が示す事業目的
その点を端的に示した先達がいる。全中がこれまで作成した事業論テキストのなかに『新版・農業協同組合 事業総論』(著者:藤田教)(第1版1998年)がある。藤田氏は、「JAの事業自体は組合員の継続的な協同活動」と言い切った上で、左記のとおり各事業の目的を整理している。
▽営農指導事業=組合員の営農活動そのものを効果的にすすめるための協同活動。
▽生活指導事業(くらしの活動)=組合員の生活活動そのものを効果的にすすめるための協同活動。
▽販売事業=営農活動の成果である農業生産物を有利に販売する協同活動。
▽購買事業=組合員の共同購買活動であり、組合員が農業生産および消費生活に必要な資材について期待する品質のものを、有利な価格で購入する協同活動。
▽信用事業=組合員のくらしに必要な資金を円滑に、しかも有利に蓄積・融通する協同活動であり、資金面の協同活動。
▽共済事=組合員のくらしの相互保障活動であり、組合員が個人や家族だけでは効果的に対応できない、くらしに生じる不時の災害と、組合員および家族の老齢化や家屋の老朽化などについて損害を補填し、長期的にくらしの安定を図る協同活動。
▽利用事業=組合員の共同施設の利用活動であり、組合員が個人では効果的に保有できない施設を共同で設置し、利用する協同活動。
・事業目的の再確認からの改革
第1世代が主たる組合員であった当時に事業目的に沿った事業運営であったとしても、その後の事業環境の変化や組合員の世代交代によって事業目的と事業運営が乖離していくことはよくある事だ。また、本来の長期的な事業目的の実現よりも短期的な事業数値目標の達成を重視するという「手段の目的化」も生じやすい。誰もが弱い人間なのだから。
コロナ禍に追われるうちに第1世代からの世代交代は終焉を迎え、円安・物価高・生産資材高と気づけば私たちは暴風雨の中にある。進むべき羅針盤である本来の事業目的を再確認する、から足元の振り返ることが、建前ではない本音の改革となる。それこそが不断の改革であり、現場の皆が関わる改革であってほしい。
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