(307)世界の飼料市場と日本【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2022年11月11日
日々変化する目の前の出来事に翻弄されていると、大きな流れを見失うことがあります。「世界の〇〇…」も似たようなものです。飼料マーケットの現場から離れてかなりの年月が経ちますが、時に振り替えると大きな変化に驚きます。
前回は確かこのコラムの214回(2021年1月15日)に「配合飼料の企業ランキングに見る時の流れ」(下記注)というテーマで世界の飼料業界の話を紹介した。いわゆる「商系」の配合飼料メーカーや関係企業、さらに業界団体などで構成されているIFIFという組織についてはそのコラムでご確認頂ければと思う。
さて、このIFIFのHPには、2020年の数字として世界の配合飼料生産数量は11億7,110万トンと示されている。年間最大生産量は中国の2.4億トンである。次いで米国が2.2億トン、EUが1.5億トンである。ここにはイギリスは含まれていない。イギリスおよびEU以外のヨーロッパにおける生産量は93百万トンである。
これらの国・地域の生産量合計は7億トンに達している。アジアでは中国が抜き出ているが、中国・日本以外のアジア諸国でも1.8億トンを生産している。日本はよく知られているように25百万トンである。これが世界の中における日本のポジションという訳だ。
近年の数字で注目すべき点は、ブラジルの生産量が伸びている点である。2020年の数字では78百万トン、世界の7%を占めている。これを考慮すると、世界のエサは、中国・ヨーロッパ・米国・ブラジルで約6割を生産している...という形で理解しても良い。
畜種別にみると、全体の44%が家禽用、次いで豚(28%)、乳用牛・肉用牛合わせて21%、残りが水産、その他といったところのようだ。以前にも述べたとおり、過去20年間で世界の家禽肉の生産・消費数量はほぼ倍増して約5,000万トンから約1億トンの水準を超えている。家禽用飼料が全飼料の44%という数字は当然と言えば当然の結果でもあろう。文化的・宗教的な制約を受けず、加工や調理が容易な鶏肉は、洋の東西を問わず食生活におけるニーズが高いということに他ならない。
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ところで、IFIFによれば世界の配合飼料産業は4,000億ドル市場のようだ。1ドル=100円で換算すると40兆円市場、150円になれば60兆円市場ということになる。心情的にはこのくらいのレベルで落ち着いて欲しいが、かつての1ドル=360円時代以降をリアルタイムで経験してきた50代以上の多くの方々は、どう感じているだろうか。
メディアでは円安報道が多いが、中長期的に見れば依然として日本は円高水準にいると考えてもおかしくはない。為替相場は相対的なものであるとともに、時に政治的・人為的な事象も影響を与えるため一概には言えない。だが、変動相場制に移行して以来、基本的には円高基調の中で変化に適応してきたのが過去半世紀の日本のビジネスモデルである。
配合飼料産業も例外ではない。強い円を武器とした強力な購買力を基礎に、世界中から最適な飼料原料を調達し、その過程でグローバル・サプライチェーンを最適化してきた。
2020年以降のコロナと年初以降のウクライナはこうした仕組みについても、直接、人びとの生活に影響を与える形で再考する機会となった。現在の生活水準をある程度維持しつつ、どこまで持続性を保てるか、まさに正念場である。
現代日本のフードシステム、そして食生活そのものも一定の時間をかけて見直す、あるいは補強する、場合によっては一部をコントロール可能なレベルのローカルシステムに置き換える、こうした点に関する具体的な対応が必要な段階に来ているとの感が強い。
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人の「意識」は一瞬で切り替え可能ですが、組織、制度、社会、そして人びとの「行動」には一定の「慣性の法則」のような力が作用します。いきなりではなく、早め早めに少しずつ対応できれば良いのですが...。
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