(314)「忙中」でも「思考有」【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2023年1月6日
令和5(2023)年、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。さて、相変わらず今年も様々な変化が起こるでしょうが、うろたえず、一人ひとりがしっかりと「考える」ことが益々重要になると思います。
ある物事を実行する場合、直接実施する場合と、間にひとつかふたつ中間的機能をもつ人や組織を入れる場合がある。流通では卸や問屋などがこの機能を持つ。
よくある例として、企業が3社(A、B、C)、消費者が3者(D、E、F)ある単純な世界を考えてみたい。直接取引の場合には流通経路は9通りになる。Eメールなどの例にすれば、トラフィックが9つ存在す訳だ。(図左)
ここに、流通、つまりトラフィックを整理する中間業者Gを一社入れると、全体のトラフィック数は大きく減少する(図右)。もちろん、中間業者による受入れと再配分という手間はかかるが、その時間とコストを是とすれば全体はすっきりする。これがいわば流通における中間業者の役割として理解されてきた。
しかしながら、競争、とくに価格競争が激しくなると、中間業者へ支払う手数料もコストの重要な部分である以上、直送による可能な限りの経費削減が至上命題となる。その結果、例えば現実世界では、Aは従来D、E、Fに対して出荷していたものが、距離的にも価格的にも競争力があるDのみに出荷・販売するようになるなど、集約化・集中化が進展する。ここまでは流通の話である。
さて、これを国や自治体が行う政策や、企業の意思決定におきかえるとどうなるか。
一般的には複数の階層が存在する組織の場合、意思決定の権限を持つ者は少ない方がスピードは増す。だが、伝統的な日本組織の実務はどちらかと言えば、先の図の両方をミックスしたような形である。担当者Aは直属の上司Dだけでなく、企画や提案が関係するEやFにも事前調整を実施することが多い(図左)。また、中間管理職のGは沢山存在する上司A、B、Cからの微妙に異なる要求をうまく部下D、E、Fに振り分けたりする(図右)。内心では直接言えよと思いながらも...である。
単純な流通経路の図が、実は組織内の意思決定の流れに非常によく似ていることに気が付くと、次の段階で上司は別のことを考えるかもしれない。それは部下をうまくコントロールするためには、直接言うよりはGという緩衝材をかませた方がやりやすい...という至極当たり前のことだ。厳しい父親に直接おもちゃをねだるよりは、母親に話し、母親から父親に話してもらう・・・という高等テクニックは小さな子供でも使用する。
さらに重要な点は、例えば上司Aが部下D、E、Fを(嫌な言葉だが)思い通りに動かすためには、直接指示を出す(例えば、A→D、A→E、A→F)よりも、Gを経由した方が明らかに管理も容易な点である。
そうなるとポイントは、いかにGをその気にさせるかにある。場合によっては、Gに対し一時的なご褒美が与えられるかもしれない。ご褒美は結果としてのD、E、Fの行動に繋がれば、一時的には本来、上司Aが意図した方向とは逆になっても構わない。
残念な事に我々の多くは実際の生活ではD、E、Fであったり、Gであったりするため、Aが何を考えているのかがわからない。あるいは考えようとしない。仮に自分がDであるとすると常に上司Gを見ているが、実は上司Gに影響を与えているのはGの上司AではなくBやCかもしれない可能性すらある。
恐らく唯一言えることは、仮に自分が誰かの指示を受けて行動し、あるいは外からそれを見る立場にいる場合、出来る限りAの本当の意図を「考える」ことだ。少なくともそれは「自由」である。それを止めた瞬間に我々はAにとって単なる機械のパーツと同じになる。忙しいことは十分にわかる。だが、やはり「考える」。一日に少しでも「考える」時間を作る。これが年初の気持ちである。
* *
「目の前の変化」に惑わされず...、ということになりますね。
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