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異次元改め低次元の少子化対策【小松泰信・地方の眼力】2023年1月25日

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「このままじゃ徴兵される孫を見る」(吹田・のんさん。「仲畑流万能川柳」毎日新聞1月8日付)。
そうか! 「異次元」の少子化対策とは、兵士づくりのためなのか。

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これで良いのか備前市役所

「無料だった保育料や給食費が、マイナンバーカードがないことを理由に有料」の方針を示した岡山県備前市が揺れている。

毎日新聞(1月25日付)によれば、同市は2016年度に1、2歳児の保育料を無償化し、17年度からは0歳児にも対象を広げた。22年度には小中学校の給食費、工作や理科に使う学用品の一部も無償とした。これは、少子化対策の一環として移住者を呼び込むための目玉施策に位置付けられている。

ところが市教委は22年12月16日付で、保育園や小中学校を通じ「デジタル社会の構築に必要なツールであり、カードを全市民が取得することを目指している」として、23年度以降の無償化適用は世帯全員分のカード取得を条件とすることを通知した。これによって、取得しない世帯は保育料や給食費が有料となる。

同日の市議会厚生文教委員会では、複数の委員から「(カード普及と無償化は)目的が違う」「無償化という優れた制度が台無しになる」などの反対意見が出たそうだ。

市の方針を「脅迫状のようなものだ。家計を考え、やむを得ずカード取得を選ぶこともあるだろう」と憤るのは、ふたりの対象児童を育てる東京からの移住者。

「取得していないと(行政サービスを)受けられないのは、明らかに行き過ぎだ。市は勇み足を認めて、撤回すべきだ」と批判するのは、尾木直樹氏(教育評論家)。

それで良いのか農水役人

「保育料などに特化したわけではなく、ほかの行政サービスでも進めていく予定」(備前市広聴広報課)とのことだから、問題はこれだけには止まらない。

東京新聞(1月19日付)によれば、「ほかの行政サービス」とは、「農業・漁業者が対象の資材価格等高騰対策の補助金」のこと。

中西裕康市議は「教育をはじめ行政サービスは公平性が求められるのに、大きな問題だ」と批判し、「いくら良い施策をつくっても、任意取得のマイナカードで市民を線引きするのは、とんでもない話だ」と訴えている。

この問題についてコメントを求められた農林水産省飼料課は、「カード取得を条件にするようには指導していない。良いかどうかは判断しかねる」と回答したそうだ。

はぁ? それで良いんですか農水省。この補助金は、資材価格などの高騰に困っている農業・漁業者を救済するためのもの。その支給先を、市が勝手に選別して良いはずがない。「可及的速やかに渡すべし」と、なぜ言えない。霞ヶ関にも腰抜けばかり。

自治体や省庁に、堂々とこのような愚かな対応をさせているのは、政府が昨年6月に閣議決定した「デジタル田園都市国家構想」の基本方針で、マイナカードの交付率を地方交付税の算定に反映させる、と愚かなことに言及したからだ。

しかし、市民の「今」に耳をそばだて目を凝らし、市民生活を悪化させるような愚かな政府の方針に対しては、苦言を呈し,ことによっては叛旗を翻してこそ自治体。その程度のプライドと責任感を持たない自治体には、「他」治体の看板を掲げることをおすすめする。

手順が異次元、内容は低次元

岸田文雄首相は1月23日の施政方針演説で、「急速に進展する少子化により、昨年の出生数は80万人を割り込むと見込まれ、我が国は、社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際と呼ぶべき状況に置かれています。こども・子育て政策への対応は、待ったなしの先送りの許されない課題です。こどもファーストの経済社会を作り上げ、出生率を反転させなければなりません」と力んだ。

問題はその後。「検討に当たって、何よりも優先されるべきは、当事者の声です。まずは、私自身、全国各地で、こども・子育ての『当事者』である、お父さん、お母さん、子育てサービスの現場の方、若い世代の方々の意見を徹底的にお伺いするところから始めます」と語った。

これには驚いた、と言うよりも、ずっこけました。

「異次元」改め「次元の異なる」と大仰にかましてくるから、何を言うかと思ったら、今から「当事者の声」を聞くとは、今からかい! 手順が違うだろ、手順が。そうです、この人の手順が異次元、内容は低次元。

だから子どもは産めません

首相の演説に、拍子抜けした様子を伝えているのは次の二紙。

「首相肝いりの『新しい資本主義』では少子化対策が焦点となる。だが、肝心の財源については具体的に触れなかった。4月の統一地方選への影響を回避したい思惑が透ける」(愛媛新聞・社説、1月24日付)。

「異次元の少子化対策は、言葉は踊るが財源には触れずじまいだった」(福島民報・社説、1月24日付)。

鋭く斬り込むのは次の二紙。

沖縄タイムス(1月24日付)の社説は、「少子化対策はもう何年も前から待ったなしの状況である。予算倍増も支持する。ただ注視しなければならないのは、子育て支援という国民が反対しづらい政策と一緒に増税議論が展開されることである。自民党の一部から上がっている消費増税による『子育て支援』は本末転倒だ」と、クギを刺す。

信濃毎日新聞(1月24日付)の社説は、少子化対策に関する首相の「状況認識と対策の必要性に異存はない」とした上で、「だが首相がこれまで、少子化対策で周到に準備してきた形跡はない。力点を置き始めたのは年頭の記者会見からだ。霞が関には『寝耳に水』との声も広がった」と内実を示す。そして、「政府は児童手当の拡充を念頭に検討する構えだが、少子化は金銭面の支援だけで解決できる問題ではない。働き方や東京一極集中など、社会経済の在り方に広く関係する。曖昧な方針をにわかに掲げて議論が深まるだろうか。『倍増する』としてきた財源の方向性も示していない。春の統一地方選以降となる見通しだ。国民の負担増につながる議論を選挙後に先送りしていては、アピール優先と言われても仕方ない」と、図星の指摘。

多くの人は、この国で、喜んで子を産み育てる気にはならないはず。だって、この国は、戦争への道を歩み始めたんだ。

「地方の眼力」なめんなよ

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