学校給食は米粉パンと米粉めんで【森島 賢・正義派の農政論】2023年3月20日
学校給食に、米粉パンと米粉めんを大々的に使ったらどうか。それが、この小稿の提案である。
この提案が採用されれば、米粉パンと米粉めんが学校給食だけでなく、家庭や外食店に広がるだろう。このことは、戦後に、米国の余剰小麦で作ったパン食の普及で経験したことである。
これが成功すれば、小麦の輸入量を大幅に減らすことができる。それだけでなく、米の減反を止め、増反できる。その結果、食糧自給率はダブルで確実に上がり、食糧安保政策に大きく貢献する。
だから、必要な経費は、食糧安保のための予算として計上すればいい。
やや唐突な提案のようだが、停滞ぎみの食糧安保の議論に、一石を投じたい。
上の図は、戦前の1930年から最近までの90年間の、小麦の供給量である。
ここで注目したいのは、終戦直後の小麦の供給量の急激な増加である。それまで約120万トンだった。その後、国内生産量を減らし、輸入量を約550万トンに増やして、小麦の供給量は、合計して30年間で約5倍の約600万トンになった。
いま、この600万トンの小麦の大部分はパンやめんにして食べている。それを止めて、米粉でパンとめんを作って食べよう、というのが、ここでの提案である。
◇
30年間といえば1世代に相当する。今からすぐに始めればいい。
600万トンといえば、米の減反分に相当する。最近の米の生産量は800万トン程度だから、減反を止めて、米粉パンと米粉めんを作るためには、600万トン増産すればいい。増産して1、400万トン生産すればいい。
日本の水田にはそれだけの余力がある。実際、1967,68,69年の米の生産量は1、400万トンを超えていた。
◇
だが、農政はそうしなかった。
1世代をかけて、日本人の胃袋をパン食向きに改造した。
それまで、日本では小麦で作ったパンは「代用食」といわれていた。つまり、主食ではなく、主食である米の格下の代用品だった。それを、戦後は米と同格の主食に格上げした。そのように胃袋を改造した。
それと同時に、米は唯一つの主食の座から追い落され、屈辱的に格下げされて、減反を強制された。そうして、東アジアの風土のなかで最も生産力の高い水田農業を破壊された。
◇
これは、米国の悪質な陰謀である。そして日本は、この陰謀の成功を許した。
日本国内の内通者は誰か。それは、胃袋だけでなく脳まで改造され、洗脳された、売国的な市場原理主義者である。
彼らは、厳しく糾弾されるべきである。そして心を改めて、日本人の胃袋と、日本の農業を復活させねばならない。そのように、彼らは脳を改造してもらいたい。
◇
学校給食に米粉パンと米粉めんを、という小稿の提案に反対するのも市場原理主義者だろう。その反対理由は、多額の経費が必要、というものだろう。小さな政府を目指し、協同社会を否定する頑迷な反社会主義者にちがいない。
だがこれは、食糧安保のため、食糧自給率を上げるために必要な経費である。必要な経費は食糧安保のための予算として計上すればいいのである。
◇
小稿の提案が採用されれば、米の減反は不必要になる。水田で思う存分に米を作れる。
その上、パンやめんのための小麦の輸入も不必要になる。その結果、食糧自給率は上がる。試算すると、食糧自給率は徐々に上がり、50%を超える。
だが、50%を超えるからといって、安心できる水準からは、ほど遠い。
食糧安保政策の王道は、あらゆる知恵を集め、あらゆる方法を尽くして食糧自給率を高めることである。食糧安保論者は、このことを銘記すべきである。
(2023.03.20)
(前回 プーチンもゼレンスキーも80%超の支持率)
(前々回 迷走する食糧安保論議)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより、お願いいたします。)
https://www.jacom.or.jp/contact/
重要な記事
最新の記事
-
(394)Climate stripes(気候ストライプ)【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年7月26日
-
地域医療の実態 診療報酬に反映を JA全厚連が決議2024年7月26日
-
取扱高 過去最高の930億円 日本文化厚生連決算2024年7月26日
-
【人事異動】JA全厚生連 新理事長に歸山好尚氏(7月25日)2024年7月26日
-
【警報】果樹全般に果樹カメムシ類 県下全域で最大限の警戒を 鳥取県2024年7月26日
-
【注意報】イネに斑点米カメムシ類 県下全域で多発のおそれ 山形県2024年7月26日
-
今が旬の「夏酒」日本の酒情報館で提案 日本酒造組合中央会2024年7月26日
-
ヤンマーマルシェ、タキイ種苗と食育企画「とりたて野菜の料理教室」開催 カゴメ2024年7月26日
-
「ごろん丸ごと国産みかんヨーグルト」再登場 全国のローソンで発売 北海道乳業2024年7月26日
-
物価高騰が実質消費を抑制 外食産業市場動向調査6月度2024年7月26日
-
農機具王「サマーセール」開催 8月1日から リンク2024年7月26日
-
能登工場で育った「奇跡のぶなしめじ」商品化 25日から数量限定で受注開始 ミスズライフ2024年7月26日
-
東京・茅場町の屋上菜園で「ハーブの日」を楽しむイベント開催 エスビー食品2024年7月26日
-
鳥インフル 米国オハイオ州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2024年7月26日
-
大玉すいか販売大幅減 小玉「ピノ・ガール」は前年比146.8% 農業総研2024年7月26日
-
千葉県市原市 特産の梨 担い手確保・育成へ 全国から研修生募集2024年7月26日
-
水産・農畜産振興 自治体との共創事例紹介でウェビナー開催 フーディソン2024年7月26日
-
新規除草剤「ラピディシル」アルゼンチンで農薬登録を取得 住友化学2024年7月26日
-
自由研究に「物流・ITおしごと体験」8月は14回開催 パルシステム連合会2024年7月26日
-
高槻市特産「服部越瓜」の漬け込み作業が最盛期2024年7月26日