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「法の見直し」と「国の責務」【小松泰信・地方の眼力】2023年5月24日

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5月19日、食料・農業・農村政策審議会の基本法検証部会は会合(第15回)を開き、農政の基本方針となる「食料・農業・農村基本法」の見直しに関する「中間とりまとめ(案)」を提示した。同会合において若干の修正が加えられ、29日には(案)が取れる予定。

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食料・農業・農村基本法を見直す理由

1961年に農業の発展と農業者の地位向上を目的とした農業基本法(「旧基本法」)が制定された。その後の急速な経済成長と国際化の著しい進展等に伴う農業生産の停滞や農村活力の低下、農業・農村に対する国民の期待の高まりなどを背景として、1999年に食料・農業・農村基本法(「現行基本法」)は制定された。

現行基本法の理念は、(1)食料の安定供給の確保、(2)多面的機能の発揮、(3)農業の持続的な発展、(4)農村の振興、の4点に集約される。そしてその目的は、国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展を図ること、にある。

「中間とりまとめ(案)」の「はじめに」で、「現行基本法の制定から約20年が経過し、我が国の食料・農業・農村は、制定時には想定していなかった、又は想定を超えた情勢の変化や課題に直面している」と、法が置かれた状況を記す。

想定外の事項とは、「世界の食料生産の不安定化」「食料や生産資材の輸入の困難化」「農業者の減少・高齢化や農村におけるコミュニティの衰退」「国内市場の縮小」「持続可能性を強く意識した環境や生物多様性等への配慮・対応」などである。

ゆえに、「これらの我が国の食料安全保障にも関わる大きな情勢の変化や課題が顕在化した今、現行基本法に基づく政策全般にわたる検証・見直しを行い、国民生活の安定と安心の基盤を支える役割を将来にわたって担い得る食料・農業・農村政策の方向性を示すことが求められている」そうだ。

農業者が重視する見直し事項

法の見直しの影響は、広く国民に及ぶ。しかし、相対的に影響を受ける度合いが多いのは紛れもなく農業者である。農業者が関心を寄せる見直し事項を、日本農業新聞(5月18日付)による、同紙農政モニター(農業者が中心)を対象とした「政治・農政に関する意識調査」の結果概要から見る。調査は4月下旬から5月中旬に実施され、調査対象は1028人で回答者は705人。

「食料・農業・農村基本法の見直しで重視すべきこと(選択肢12中3つまで可)」について、最も多いのが「食料自給率の向上」63.1%、これに、「食料安全保障の強化」48.4%、「適切な農産物価格の形成」46.0%、「多様な担い手の確保」34.9%、「農村の振興・地域活性化」34.5%、「農地集積・生産性向上」18.4%、「農業インフラの維持・強化」15.2%、「多面的機能の発揮」9.4%、「農産物輸出の促進」7.9%、「スマート農業の推進」6.8%、「環境負荷の低減」3.5%、「その他」2.3%、となっている。

農業者が責任を負うべき事項では無いが、最大の関心事は38%しかない「食料自給率」の向上である。

食料自給率を葬るのか

残念ながら、検証部会における食料自給率向上への関心は極めて低い。「中間取りまとめ(案)」は、「第1部 食料・農業・農村施策全般」「第2部 分野別の主要施策」「第3部 食料・農業・農村基本計画、不測時における食料安全保障」「第4部 関係者の責務、行政機関及び団体その他(情勢の変化や課題を踏まえた見直しの方向)」「第5部 行政手法の在り方」の5部構成であるが、大、中、小、すべての見出しにおいて、「食料自給率」という言葉を含んでいるのは第3部のみ。

第3部の55頁にある「食料自給率目標」には、次のように記されている。

(前略)食料自給率が現行基本法の基本理念の実現をトータルとして体現する目標として、関係者の努力喚起及び政策の指針として適切であると考えられていた。しかしながら、現行基本法が制定されてからの情勢変化及び今後20年を見据えた課題を踏まえると、輸入リスクが高まる中で、国内生産を効率的に増大する必要性は以前にも増している。一方で、

「国民一人一人の食料安全保障の確立」「輸入リスクが増大する中での食料の安定的な輸入」「肥料・エネルギー資源等食料自給率に反映されない生産資材等の安定供給」「国内だけでなく海外も視野に入れた農業・食品産業への転換」「持続可能な農業・食品産業への転換」等、基本理念や基本的施策について見直し、検討が必要なものが生じていると考えられ、これらを踏まえると、必ずしも食料自給率だけでは直接に捉えきれないものがあると考えられる。(なお、「」は小松が付した)

「輸入リスクが高まる中で、国内生産を効率的に増大する必要性は以前にも増している」とするならば、素直に食料自給率の向上を高らかに宣明すべきである。「一方で」以降の「」の事項も、食料自給率の検討や見直しを強く迫るほどの説得力は無い。

この間、食料自給率がめざましく向上し、現行の指標に満足してはいけないから、食料自給率を補完するものを加え、より堅固な食料自給体制を構築していこう、と言う段階なら聞く耳は持つ。

しかし、下がることはあっても、まともに上がったためしがない食料の自給状況で、論点のすり替えは許されない。

「国の責務」は果たされたのか

現行基本法第二条(食料の安定供給の確保)は、「食料は、人間の生命の維持に欠くことができないものであり、かつ、健康で充実した生活の基礎として重要なものであることにかんがみ、将来にわたって、良質な食料が合理的な価格で安定的に供給されなければならない」とし、その2において、「国民に対する食料の安定的な供給については、世界の食料の需給及び貿易が不安定な要素を有していることにかんがみ、国内の農業生産の増大を図ることを基本とし、これと輸入及び備蓄とを適切に組み合わせて行われなければならない」と謳っている。

そして第七条で、「国は、第二条から第五条までに定める食料、農業及び農村に関する施策についての基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、食料、農業及び農村に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する」と、「国の責務」を示している。

国は、胸を張って「責務」を果たしてきたといえるのか。多くの時間と労力や能力を費やして検証し見直すべきは、「国の責務」が果たされたのか否かである。それが無い限り、魂の籠もらぬ仏ばかりが乱造されるだけ。

それとも、本命は、「新しい戦前」に相応しい、第3部の「不測時における食料安全保障」の確立ですか。それを火事場泥棒法改正と呼ぶのです。本気で不測時のことを考えるなら、不測が起きないための努力とともに、こと食料に関しては可能な限り自給できる国づくりをめざすしかない。

「地方の眼力」なめんなよ

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