「日本の農業高校とも交流したい」イタリアの農業専門学校 ローマ在住ジャーナリスト・茜ヶ久保徹郎【イタリア通信】2023年6月3日
ローマの国立ガリバルディ農業専門学校(Istituto Tecnico Agrariostatale “GiusppeGaribaldi”)の歴史は古く、1860年にイタリアが統一され、1870年にローマがイタリア王国に合併されて首都になって2年目の1872年に貴族や地主の子供たちに農園の経営を教える学校として発足しました。
学校の航空写真
そして1882年には農業省所属のイタリア王立学校となり、1900年には現在のローマ市内の76エーカーの土地に移り、1933年に「国立農業専門学校」となり現在に至っています。
この一帯はローマ時代から農地であり、校内には当時の農園の遺跡が残されています。
現在の生徒数は700人。校舎と実習のための農園や実験室、ワインの醸造設備やオリーブ作成設備、食品加工の設備、90人が入れる寄宿舎と農業法人があります。
農業法人は校内での生産物を販売しています。
寄宿料は食事付きでひと月300ユーロ(約42000円)、家庭の所得により減額されます。
イタリアの教育制度
2年生の教室の様子
イタリアでは、小学校5年、中学校3年、高等(専門)学校5年、大学3年プラス2年で、最近まで義務教育は8年でしたが、現在は10年になりました。そのため5年制の高等(専門)学校の初めの2年が義務となっています。
これは以前から高等(専門)学校の初めの2年は一般教養が主で、専門知識は後の3年間で勉強することになっていたからです。
イタリアの高等(専門)学校の卒業試験は国が認定する国家試験。試験官の半数は他校の教員でひと月ほどかけて行われます。そして試験を通れば無試験で希望する大学に入学できます。(医学部など、希望者の多い学部は定員制をとっている)
ガリバルディ農業専門学校の授業内容
初めの2年は他の技術高校と同じ基礎教育。国語、歴史、英語、法律、数学、物理、IT、化学、生物学、グラフィック、体育、宗教その他。次の3年間は生産、加工。ブドウ栽培とワイン醸造学 農学、農業食品学、農業工学などです。
学生は3年生に進級する際、次の中からコースを選ぶことができます。
農業生産科、動物生産科、食品加工科、農業経営学科、農業環境学科、農業バイオテクノロジー科、ブドウ栽培とワイン醸造学科など。
校内の広い敷地には大きなブドウ園やオリーブ園、そして小麦の畑があります。
現在、牛舎などの動物飼育設備は新しい「飼育に関する法律」に合わせるため改築中で動物がいませんが、近郊の牧場で実習ができるようになっています。
学校で作っているパスタやワイン、オリーブオイルなど
農園のオリーブの木は1100本ほど、このほかに新しく別の品種の苗を植えています。生徒が手入れをしているので間違えて傷めてしまうこともよくあるそうですが、それで扱いを覚えていきます。収穫は4トンほど。絞ると半分の2トンになり、それを商品化、瓶に入れて販売しています。
最近はオリーブオイルで石鹸を作りはじめました。
スパゲティなどに使う高級なデュラム小麦畑は13.5エーカー、それにパンなどに使う小麦粉用の小麦畑もあります。
その小麦でパスタを作り、ハチミツも作っています。
そしてこれらの商品は学校の農業法人が販売しています。
学生たちの目標は
学生たちに話を聞きました。アレッシオさん(18)(写真の左から3人目)は5年生で今年卒業します。「僕の家は小さな農園を経営しており、自家用に少しだけワインを作っています。そこで本格的にワイン造りをやりたいので大学の農業学部でワイン醸造学を学ぶつもりです。この学校での生活はとても楽しかったです」
同じく5年生のヴァレンティ―ナさん(18)(右から2人目)。「私の家は農業には関係なく、兄が通っていてよさそうだったので決めました。卒業後は大学で生物学か環境学を学びたいと思っています」
エリーサさん(18)(左端)も5年生。「私の家は農家ではありませんが、親友が入るのでこの学校に決めました。私は大学では環境学を勉強したいと思っています。夢はアグリトゥーリズモを開くことです」
また、2年生のクラスで話を聞いた男女2人の生徒は「将来は獣医になりたい」と答えました。
学校について航空写真で説明するポンタレッリ校長
校長「日本の農業高校とも交流したい」
アンドレア・ポンタレッリ(Andrea Pontarelli)校長にも聞きました。
「農業専門学校はローマに3校、イタリア全国では200から250校あります。以前は農業関係者の子供が多かったのですが、最近は地域の子供が増えています。実技、野外授業が多く環境が良いので人気があります。当校の運営には州の農業局や農業経営者総同盟などが参加し、州内の農園や牧場などで実習を行っています」
「州内のヴィテルヴォ大学と共同で運営している、高等(専門)学校卒業後に入学する2年制の農業高等専門学校で農業経営学を教えており、当校の卒業生も通っています。国際的にはFAO(国連食糧農業機関)と協力して、北アフリカの国から留学生を受け入れており、オーストラリアからはワインつくりを勉強する学生を受け入れています」
「当校は日本の農業高校や農業専門学校と交流を図りたいと思っています。寄宿舎があるのでお互いに生徒の交換短期留学が出来たらと思います」
重要な記事
最新の記事
-
【特殊報】果樹などにチュウゴクアミガサハゴロモ 県内で初めて確認 兵庫県2025年12月16日 -
【特殊報】トマト青かび病 県内で初めて確認 栃木県2025年12月16日 -
【プレミアムトーク・人生一路】佐久総合病院名誉院長 夏川周介氏(中)農村医療と経営は両輪(1)2025年12月16日 -
【プレミアムトーク・人生一路】佐久総合病院名誉院長 夏川周介氏(中)農村医療と経営は両輪(2)2025年12月16日 -
全中 新会長推薦者に神農佳人氏2025年12月16日 -
ひこばえと外国産米は主食用供給量に加えられるのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年12月16日 -
米トレサ法で初の勧告措置 「博多天ぷら たかお」が米産地を不適正表示2025年12月16日 -
鳥インフルエンザ 兵庫県で国内7例目を確認2025年12月16日 -
「第3回高校生とつながる!つなげる! ジーニアス農業遺産ふーどコンテスト」受賞アイデア決定 農水省2025年12月16日 -
「NHK歳末たすけあい」へ150万円を寄付 JA全農2025年12月16日 -
米の流通に関する有識者懇話会 第3回「 研究者・情報発信者に聴く」開催 JA全農2025年12月16日 -
【浅野純次・読書の楽しみ】第116回2025年12月16日 -
北海道農業の魅力を伝える特別授業「ホクレン・ハイスクール・キャラバン」開催2025年12月16日 -
全自動野菜移植機「PVZ100」を新発売 スイートコーンとキャベツに対応 井関農機2025年12月16日 -
Eco-LAB公式サイトに新コンテンツ開設 第一弾は「バイオスティミュラントの歴史と各国の動き」 AGRI SMILE2025年12月16日 -
国内草刈り市場向けに新製品 欧州向けはモデルチェンジ 井関農機2025年12月16日 -
農機の生産性向上で新製品や実証実験 「ザルビオ」マップと連携 井関農機とJA全農2025年12月16日 -
農家経営支援システムについて学ぶ JA熊本中央会2025年12月16日 -
7才の交通安全プロジェクト 全国の小学校に横断旗を寄贈 こくみん共済coop2025年12月16日 -
北海道上川町と未来共創パートナーシップ協定を締結 東洋ライス2025年12月16日


































