シンとんぼ(47)食の安全とは(5)科学的に毒性とは2023年6月10日
令和3年5月12日に公表された「みどりの食料システム戦略」をきっかけに始まったシンとんぼは今、そもそも「食の安全」とは何かということを検証しようと試みている。最初に「毒性とは何か」をテーマにすえており、今回も毒性の話の続きをしたいと思う。
前回まで「毒」というものに対する考え方の違いが個々にあって、なかなか理屈が通用しない感情の世界に支配されていると論じてみた。
では、科学的に毒性をみてみたらどうかということで、数値化されている題材をもとに論じてみようと思う。
毒性を計る際に調べられる数値には色々ある。代表的なものは、①急性毒性、②亜急性毒性、③慢性毒性、④発がん性、⑤催奇形性、⑥繁殖毒性、⑦変異原性試験、⑧代謝試験があって、農薬はこれらの全ての試験を実施し、全てクリアしないと登録認可されない仕組みになっている。
では、それぞれがどんな毒性を調べているのか紹介しよう。
まず①急性毒性だが、これは、ある物質が一時的に体内に多量に取り込まれた時の毒性を調べる。その体内への取り込み方で3種類に分けてそれぞれ試験して確認する。3種類とは、経口毒性(口から直接摂取した場合)、経皮毒性(皮膚から吸収された場合)、吸気毒性(呼吸により空気と一緒に吸い込んだ場合)の3つであり、これらも半数致死量(LD50・mg/kg)で示され、その数値が小さければ小さいほど毒性が強いと評価される。
次に②亜急性毒性だが、これは、ある物質が1~3か月の期間、継続して体内に取り込まれた時の毒性の性質や強さを調べるものだ。これも①急性毒性と同様に経口毒性、経皮毒性、吸気毒性の3種が調べられ、毒性の強さをLD50で比較する。
次に③慢性毒性だが、これはある物質が長期にわたり継続して体内に取り込まれた時の毒性や発ガン性を調べるものだ。ラットやマウスといった実験動物を使い、それらの一生涯に当る期間に渡り投与し続けた時の毒性を調べるものだ。
次に④発がん性だが、③の慢性毒性と同様に実験動物の一生涯に当る期間に渡り投与し続け、一生涯を終えた後に解剖して内臓などの変化を確認することで、発がん性の有無を判断する。
次に⑤催奇形性だが、これはネズミやウサギを使用して、その妊娠中の母体がその農薬に反復して暴露された場合の胎児に奇形をおこすかどうかを調べるものだ。
次に⑥繁殖毒性だが、これは実験動物に連続して投与し、その繁殖能力に対する悪影響や、胎児の発育や出産後の子の成長に及ぼす影響がないかを調べるものだ。この試験は、実験動物の二世代以上にわたって連続投与して行なわれる。
次に⑦変異原性試験だが、これは、ある物質が投与された際に、実験動物のDNAに影響を与え、遺伝子の突然変異や染色体異常などを起こす性質がないかどうかを調べるものだ。
最後に⑧代謝試験だが、ある物質が体内に取り込まれた時、体内でどのように変化し、どの位吸収されたかや、主要臓器への蓄積具合、代謝の経路、体外への排泄量などを調べるものだ。
これらのデータは実験動物の貴重な命を犠牲にして初めて得られるものであることを忘れてはならない。
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