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政府の危機感は離島の危機【小松泰信・地方の眼力】2023年6月28日

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「韓国からの観光客で賑わったがコロナ禍で激減、20億円の交付金で息をつこうとしている」と鎌田慧(かまた・さとし)氏に指摘されているのは長崎県対馬市(東京新聞、6月27日付「本音のコラム」)。

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究極の迷惑施設

20億円は、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場の候補地選定に向けた「文献調査(2年程度)」を受け入れた自治体に交付される。極めて強い放射線を放ち、無害化に10万年はかかるとされることから、国は地下300メートルより深い岩盤に埋める地層処分で人間の生活環境から隔離する計画である。

対馬市における文献調査問題を詳細に報じている西日本新聞(6月11日付)によれば、電力会社を中心に設立された原子力発電環境整備機構(以下、NUMO)は2002年から候補地を募集してきたが、文献調査を受け入れたのは北海道の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村のみ。最大20億円の交付金は、寿都町が2年間で計18億5千万円を受け取り、消防士の人件費や保育所の運営費に充て、神恵内村は計15億5千万円を漁港の設備改修や診療所の運営費などに充てるとのこと。

島は大揺れ

さて対馬市は、2004年3月、対馬島内の全町が合併し誕生した。発足時の人口は約4万1000人。その後も人口減少に歯止めがかからず、今年5月1日時点の推計人口は2万6783人。この19年間で人口は約3分の2となった。

記事によれば同市において、この議論が巻き起こるのは2度目。2006年にも一部の市議や住民らが地域振興のため処分場を誘致する動きを見せたが、翌年に市議会は誘致反対の決議を可決した。ところが、17年に国が処分場の適地を示した「科学的特性マップ」で、火山や活断層が近くになく海岸に近い対馬市が「好ましい地域」に分類され、さらに今春、調査主体のNUMOが最終処分場の説明会を開いたことで、「くすぶっていた火種が再び燃え上がった」とのこと。

同市は韓国から約50キロに位置し、水産業、真珠養殖、観光業が主要産業。特に韓国からの観光客に多くを依存してきたが、新型コロナウイルス禍で韓国航路が停止して旅行客が激減。さらに前述した歯止めがかからぬ人口減少から、島には閉塞(へいそく)感が漂いはじめ、当該交付金を活用した地域浮揚策に望みを託す声が出始めることになる。

「このままだと人口が減って墓の維持もできなくなり、島が立ちゆかなくなる。このチャンスを生かすべきだ」と強調するのは、調査受け入れを支持する市議。

これに対して、「地層処分の安全性自体が疑問だ。応募した場合は、交付金よりもデメリットが大きい。子や孫に豊かな対馬を引き継げなくなる」と反対の声を上げるのは、「核のごみと対馬を考える会」代表。

西日本新聞(6月22日付)は、比田勝尚喜(ひたかつ・なおき)対馬市長が21日の同市議会定例会の一般質問で、この文献調査は、市が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)未来都市計画のビジョンと「相いれないところもある」との見解を示したことを伝えている。

同市に住む知人に聞くと、賛成と反対を揺れ動く人や、家庭内でも賛否をめぐって、夫婦げんかや親子げんかが勃発しているとのこと。迷惑施設この上ない。

これは懐柔策でしょう

島内や家庭内に揺さぶりをかけるのは、カネと時間と権力を握っている連中。

この辺の事情を、NHKサイカルジャーナル(6月22日配信)が教えてくれている。

「さらに、島を取材していて聞こえてきたのが、『NUMOの案内で関連施設を視察に行った』とか、『核のごみの処分自体はそんなに危ないものではないと感じるようになった』といった声だ。2010年代に入って対馬市を含む全国で核のごみの議論が表面化しなくなって以降も、政府とNUMOは調査への応募を検討してもらおうと各地で『理解活動』を続けてきた。(中略)2021年の秋には対馬でも市民向けの説明会が行われていた。

さらに、再び関心を持っている関係者がいるとみるや、2022年には一部の議員や市民を連れて青森県六ヶ所村や北海道幌延町をめぐる視察ツアーを企画。参加者の詳しい人数などは明らかにされていないが、一定の規模の島民は、核のごみが一時保管されている施設や『地層処分』の技術研究を行っている施設を実際に見て回った。その結果、議員の中には、安全性について一定の理解ができたとして、反対から賛成に変わった人もいると言う」

当コラムの眼には、視察ツアーの名を借りた典型的接待による懐柔策にしか見えない。違うというのであれば、費用負担も含むツアーの詳細を詳らかにするべきである。

政府の危機感にこそ危機がある

毎日新聞(6月26日付)は、「増えぬ候補地 政府危機感」という見出しで推進主体の声を紹介している。

「手を挙げた地域をつぶさず、数を増やさなければいけない」「将来的には、最終処分場が一つの産業として捉えられるようにしなければならない」とは、経済産業省の幹部。

「対馬だけではなく、日本全国で動きがどんどん広がってほしい」とは、電気事業連合会長(九州電力社長)。

さらに、調査受入れ自治体が増えなかったために、政府は「地元の議会や商工会などの団体にも調査受け入れの検討などの申し入れができるようにした」そうだ。なりふり構わぬこの姿勢には要警戒。安倍政権以降、民意を蹂躙するのはお手の物だから。

6月14日付の当コラムで取り上げた南西諸島問題や、今回の対馬市の問題を考え合わせるとき、この国の為政者にとって、離島は人が居住し生活する場所としては、極めて重要度の低い地域であることが感じられた。

口で離島振興といっても魂はこもっていない。主要な第一次産業に投資するのは無駄。無人となった方が望ましいとすら思っているはず。なぜなら、軍事施設や核のゴミ処理施設などの迷惑施設を設けるのに好都合だからだ。「産業化」という経産省幹部の声からは、住民不在の離島に世界から核のごみを集めて産業化(金もうけ)しようとする魂胆すらうかがえる。

冒頭で紹介した鎌田氏のコラムの締めは、「かつて原発に伴う交付金が『打ち出の小槌』と言われていた。『理由なきカネ』は危ない」。そんな危ない端金で地域の未来を売り渡すのではなく、持続的地域社会づくりのために、みんなで知恵を出し合うことが何よりも求められている。

「地方の眼力」なめんなよ

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