格差が縮小しない【森島 賢・正義派の農政論】2023年7月10日
日本の経済格差が縮小しない。今世紀初頭までは、むしろ拡大してきた。その後、縮小の気配をみせたが、はかばかしくない。低滞している。
これは、資本主義の宿痾である。資本主義社会の低滞の根本原因である。
ウクライナ紛争の主な原因は、これを否定するか、それとも必要悪として、あるいは善として肯定するか、という点にかかわっている。それは、それぞれの国民が評価し、批判しあえばいい。だが、他国に押し付けるものではない。まして、武力で押し付けるものではない。
ウクライナ紛争の原因であるNATOの東方拡大は、この点にかかわっている。
さて、日本はどうか。
上の図は、日本の経済格差をみたもので、1985年以後の35年間の、格差の推移である。それを、厚労省の「国民生活基礎調査」から推計した。
やや詳しく説明しよう。
いま、全国には5570万の世帯がある。この全世帯を、年間所得額の多い世帯から少ない世帯まで、全部一列に並べたと仮定しよう。その中で、多い方から10%目、つまり多い方から557万番目の世帯の所得額と、少ない方から10%目、つまり少ない方から557万番目の世帯の所得額を推計して比較し、その倍率を示したものである。
◇
この図をみると、1980年代半ばから2000年代半ばまで、倍率は6倍から9倍にまで高くなり続けてきた。つまり、高所得者世帯の所得額は、低所得者世帯の所得額の6倍から9倍にまで増え続けてきた。これは、世帯間の所得格差が、広がり続けてきたことを意味する。
2005年以後、格差拡大は止まったようにみえる。だが、8倍以下には下がっていない。つまり、ほとんど1ケタ違う。
これでも、日本は民主主義国家といえるのか。
◇
民主主義の基盤は経済民主主義である。
これは、第2次大戦直後、米国をはじめとする戦勝国の考えだった。日本の軍国主義の基盤に、経済体制の非民主制があるとした。そして、財閥と地主制を解体した。日本の政治は、これを受け入れた、そして、その後しばらくの間、経済の民主化が進んだ。
しかし、資本主義体制は温存した。そのため、やがて経済の民主化は、勢いを削がれて、非民主化がすすんだ。その結果、格差が拡大した。その頂点が2004年だった。2005年以後は、経済の民主化が、はかばかしく進んでいない。そして、経済格差が深刻な状態になったままである。これが、日本の市場原理主義政策の帰結であり、現状である。
これでいいのか。
経済格差は、社会全体の差別と分断の温床である。これを、日本の政治は放置している。これでいいのか。
(前回 街頭デモのない日本は滅びる)
(前々回 農政は市場原理主義と決別せよ)
(「正義派の農政論」に対するご意見・ご感想をお寄せください。コチラのお問い合わせフォームより『コラム名』をご記入の上、送付をお願いいたします。)
https://www.jacom.or.jp/contact/
重要な記事
最新の記事
-
むらの掟【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第289回2024年5月2日
-
主食用多収品種の「にじのきらめき」が人気になる理由【熊野孝文・米マーケット情報】2024年4月30日
-
令和6年春の叙勲 5人が受章(農水省関係)2024年4月29日
-
シンとんぼ(90)みどりの食料システム戦略対応 現場はどう動くべきか(1)2024年4月27日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(8)【防除学習帖】 第247回2024年4月27日
-
土壌診断の基礎知識(17)【今さら聞けない営農情報】第247回2024年4月27日
-
【欧米の農政転換と農民運動】環境重視と自由化の矛盾 イギリス農民の怒りの正体と運動の行方(2)駒澤大学名誉教授 溝手芳計氏2024年4月26日
-
【注意報】麦類に赤かび病 県内全域で多発のおそれ 佐賀県2024年4月26日
-
【注意報】麦類に赤かび病 県内で多発のおそれ 熊本県2024年4月26日
-
【注意報】核果類にナシヒメシンクイ 県内全域で多発のおそれ 埼玉県2024年4月26日
-
【注意報】ムギ類に赤かび病 県内全域で多発のおそれ 愛知県2024年4月26日
-
「沖縄県産パインアップルフェア」銀座の直営飲食店舗で開催 JA全農2024年4月26日
-
「みのりカフェ博多店」24日から「開業3周年記念フェア」開催 JA全農2024年4月26日
-
「菊池水田ごぼう」が収穫最盛期を迎える JA菊池2024年4月26日
-
「JAタウンのうた」MV公開 公式応援大使・根本凪が歌とダンスで産地を応援2024年4月26日
-
中堅職員が新事業を提案 全中教育部「ミライ共創プロジェクト」成果発表2024年4月26日
-
子実用トウモロコシ 生産引き上げ困難 坂本農相2024年4月26日
-
(381)20代6割、30代5割、40/50代4割【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年4月26日
-
【JA人事】JA北つくば(茨城県)新組合長に川津修氏(4月20日)2024年4月26日
-
野菜ソムリエが選んだ最高金賞「焼き芋」使用 イタリアンジェラートを期間限定で販売2024年4月26日