(341)大衆魚の高級「感」【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2023年7月21日
大衆魚と呼ばれる魚があります。一般的にはイワシ(鰯)・サンマ(秋刀魚)・アジ(鯵)・サバ(鯖)などでしょうか。比較的安価な魚であり、日々の食事には欠かせません。価格動向を少し長期的に調べてみました。
総務省統計局が発表しているデータに消費者物価指数(CPI)がある。これは「家計の消費構造を一定のものに固定し、これに要する費用が物価の変動によって、どう変化するかを指数値で示したもの」(注1) と説明されている。
最新結果は2023年5月分のデータだが、時系列で1970年1月以降のものを一度に見る事ができるため非常に便利だ。記載されている品目は実に多様だ。幸い、上で述べたイワシ・サンマ・アジ・サバは全て個別の指数が掲示されている。
これらのデータを単純にグラフ化したものが下記の図である(注2)。基準は2020年の価格を100としている。
個別の魚の需給について、筆者はほとんどわからない。したがって、以下はこの指数化された数字の変化を見て気が付いたことである。
第1に、同じ大衆魚でも過去半世紀の間の変化は随分と異なるということを改めて実感した。サバは昔から安価な魚として広く親しまれてきたが、1990年代半ば以降、指数は着実に上昇している。イワシもかつてはかなり安価であったが、サバ同様、1990年代半ばより指数は上昇している。2000年代にはイワシの方がサバよりも指数が高い状況が継続していたようだが、過去10年くらいは同水準に見える。
筆者が好きなアジは1970年代に急上昇し、80年代はいわば高値継続時代である。社会人初期の頃、学生時代には余り食べなかった(食べられなかった?)アジフライ定食をよく食べたが、ボリューム感に結構満足したものだ。あの時代、余り意識はしていなかったが、アジは他の3種に比べるとずい分と高級感があったのかもしれない。その後、2000年代に入ると、イワシとアジの指数が逆転する。2010年代以降は、サバ、アジ、イワシがほぼ似たような水準で動いている。
これに対し、サンマの指数は季節ごとの価格推移をそのまま反映した状況がよく現れている。一貫している点は、1970~80年代の一時期を別にすれば、1990年代以降2010年代まで季節変動はあるものの、サンマの指数は継続して4種の中で最も低かったということだ。
以上を見る限り、1970~80年代の大衆魚はサバ、イワシ、サンマ、これが1990年代以降になると、サバとイワシの指数が上昇し、サンマだけがそれ以前と同水準を保っていたことがわかる。時代により、大衆魚の中でも高級「感」が微妙に異なるようだ。
第2に、2020年以降、4種の指数が全て上昇している。特にサンマが他の3種を上回る勢いを示している。サンマは2000年前後にも他の3種と同水準を記録した時期があったが、すぐに以前の水準に低下している。2020年以降は他の3種を上回る勢いだ。少し前には「サンマはもはや高級魚」のような報道を見たのが記憶に新しい。
第3に、落ち着いていたかに見えるアジも含め、かつて大衆魚とされていた魚のいずれも2020年以降は価格が上昇している。2020年といえば、まさに新型コロナウイルス感染症が大々的に拡大した年だ。この感染症関連の様々な対応が漁業に与えた影響についてもいずれしっかりとした調査がなされるのだろうか。
個別の魚の需給状態を見ていないので何とも言えないが、食卓の普通の「おかず」としての大衆魚が軒並み高くなることは、肌感覚としての価格「感」に現実的な影響を与えているものと考えられる。
最近は価格上昇と言えば、小麦製品や卵などの話が中心だが、長年、大衆魚として人々に親しまれてきたこれらの魚も一緒に上昇していることも留意しておく必要がある。
* *
よく食べた魚、それは自分の年齢がいくつくらいの時だったか、グラフと合わせて思い出してみると、興味深いのではないでしょうか。
(注1)総務省統計局「消費者物価指数(CPI)」、アドレスは、https://www.stat.go.jp/data/cpi/ (2023年7月20日確認)
(注2)総務省統計局「品目別価格指数(1970年1月~最新月」「2020年基準消費者物価指数」を加工して作成
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