花産業の8月15日【花づくりの現場から 宇田明】第15回2023年8月10日
今年も8月15日がやってきました。
人それぞれの8月15日。
終戦の日
全国戦没者追悼式
天皇陛下のおことば
雲はわき光あふれる甲子園
正午に鳴り響くサイレン
黙とう
花産業にとっての8月15日は、お盆。
大物日(おおものび)。
花産業の最繁忙期。
母の日の主役がカーネーションなら、春秋の彼岸、お盆、年末・迎春の物日はキク。
お盆には1年でもっとも多くのキクが市場で取引(図)。
キクは花産業の米。
切り花生産量31.4億本の40%、12.3億本がキク(2022年)。
別に輸入が3.2億本。
キクがこれだけ大量に消費されるのは、葬儀の花やお墓・仏壇などのお供えの花の定番になっているからです。
キクを葬儀や仏事に使うことは、日本の伝統でも文化でもありません。
戦後でも、葬儀の花はせいぜい祭壇の両脇にお供えの花があるだけでした。
それも種類が決まっているのではなく、その時に花屋が手に入る花が使われていました。
高度成長からバブル期に、祭壇そのものをキクで飾る生花祭壇が登場し、一気に全国に普及しました。
その背景には、電照でキクの開花を調節できる技術が開発されたことがあります。
加えて、暑さに強く、夏でも電照で開花を調節できる夏秋(かしゅう)ギクが育成されました。
従来からの秋ギクに、新たに育成された夏秋ギクを組みあわせ、電照と加温をすることで、1年中おなじ品質、規格のキクが安定供給できるようになりました。
おまけにキクは日持ちが長いうえに、冷蔵庫で貯蔵ができるので、1年365日、いつでも対応が必要な葬儀業者にぴったりの花でした。
もちろん、彼岸、お盆、年末・迎春の物日にぴったり開花させることもできます。
キクが葬儀の花、仏事の花になったことが、花産業の米になりえた理由です。
そのことが、今ではキクを窮地に陥れています。
家族葬や直葬が増え、葬儀が簡素化されたことで、キク、特に白ギクの消費が減少しました。
さらに、葬儀やお供えの花のタブーがなくなり、故人が好きだった花を飾ることが増えたことも、キクの減少に拍車をかけています。
葬儀に赤やピンクのバラが使われることも珍しくなくなりました。
一方、キクの消費を回復するために、贈り物やイベント装飾などに使いたくとも、葬儀・仏事のイメージが強すぎて、花屋自身が踏みきれません。
そこで、「キク=葬儀・仏事」のイメージチェンジがはじまっています。
それは花産業が得意な、よび名を変えることです。
前回の花の名前の複雑さが消費者を混乱させているという話と矛盾します。
それも花産業の融通無碍、「それはそれ、これはこれ」体質。
すでに、「スプレーギク」は「スプレーマム」に変わっています。
キクの学名(属名)は、クリサンセマム(Chrysanthemum)。
欧米の名前もクリサンセマム(発音は国ごとに異なります)。
略してマム。
キクは品種改良が盛んで、さまざまな花型、花の色があります。
葬儀・仏事のキクは白、黄がメインですが、他にもピンク系、ベージュ系、グリーン系などもあり多彩です。
染色したブルー、パープル、さらにはレインボーカラーまであります。
花だけ見るとキクとは思えません。
それらは「マム」、または「〇〇マム」と名のっています。
新しい花の誕生です。
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