シンとんぼ(61) 食の安全とは(19)毒性試験最後の代謝試験2023年9月23日
令和3年5月12日に公表された「みどりの食料システム戦略」をきっかけに始まったシンとんぼは今、そもそも「食の安全」とは何かということの検証を試みており、現在、「毒性の強弱を示す根拠」の検証のため、現在の安全の証明がどのようになされているのかを探っている。
前回までに、多数の実験動物の犠牲の上に成り立っている各種毒性試験(急性毒性試験、亜急性毒性試験、慢性毒性試験・発癌性試験、催奇形性試験、繁殖試験、変異原性試験)について紹介してきたが、結構生々しかったなと思う。今回は、毒性試験最後の代謝試験について紹介する。
代謝試験は文字通り、治験物質が実験動物の体内に取り込まれた時どのような代謝をするかを調べるものだ。特に、体内での治験物質の変化、体内への吸収率、主要臓器への分布状況、代謝経路、体外への排泄などについて試験するといったものだ。一見、前回まで紹介した毒性試験と比べ、物質の消長を調べているだけで、直接毒性とは関係なさそうに思う人もいるだろう。
でも、代謝試験の最初の試験である体内での治験物質の変化は、実験動物の体に入った治験物質がどのような経路で分解するのか(酸での分解か? アルカリでの分解か? 加水分解か? 酵素?など)、その際の代謝物はどんなものができているのか、その量は、毒性は?といったことを調べる。
つまり、たくさん試験して毒性が判明した治験物質(=有効成分)が分解してできた代謝物にどんなものがあって、どれだけの量が作られるのかを調べられる。ひょっとしたら、もとの物質よりも毒性の強いものが生まれているかもしれないことを心配し、毒性が調べられることになるのだ。
そして、それらが体内へどのように、どの位の割合で吸収されていくのか調べる。人間にとって良いのは、草や菌や虫には強い影響がある物質であっても、哺乳類の口から入ったものは変化することなく、吸収されることなくスルーで排泄されていくことだ。だが、そのような物質はほとんどないだろう。
さらには、臓器への分布状況を調べる。物質によっては、臓器に蓄積していく性格をもっている場合があるので、どこに溜まるかを観ておくのも重要だ。物質によっては、蓄積した場所で悪さ(がん化など)する場合もあるし、蓄積したまま排泄されずに臓器に止まり悪さする場合もあるだろう。その過程で排泄の経路なども調べられる。治験物質だけではなく、代謝物まで調べて万全が期されている。
一体どこまで試験すれば大丈夫というレベルになるのかな?
これはかなり難しい問題だろうシンとんぼは思う。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(146)-改正食料・農業・農村基本法(32)-2025年6月14日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(63)【防除学習帖】第302回2025年6月14日
-
農薬の正しい使い方(36)【今さら聞けない営農情報】第302回2025年6月14日
-
群馬県の嬬恋村との国際交流(姉妹)都市ポンペイ市【イタリア通信】2025年6月14日
-
【特殊報】水稲に特定外来生物のナガエツルノゲイトウ 尾張地域のほ場で確認 愛知県2025年6月13日
-
【注意報】りんごに果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 岩手県2025年6月13日
-
SBS輸入 3万t 6月27日に前倒し入札2025年6月13日
-
米の転売 備蓄米以外もすべて規制 小泉農相 23日から2025年6月13日
-
46都道府県で販売 随意契約の備蓄米2025年6月13日
-
価格釣り上げや売り惜しみ、一切ない 木徳神糧が声明 小泉農相「利益500%」発言や米流通めぐる議論受け2025年6月13日
-
担い手への農地集積 61.5% 1.1ポイント増2025年6月13日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】生産者米価2万円との差額補填制度を急ぐべき2025年6月13日
-
井関農機 国内草刈り機市場を本格拡大、電動化も推進 農機は「密播」仕様追加の乗用田植え機「RPQ5」投入2025年6月13日
-
【JA人事】JA高岡(富山県)松田博成組合長を新任(5月24日)2025年6月13日
-
【JA人事】JAけねべつ(北海道)北村篤組合長を再任(6月1日)2025年6月13日
-
(439)国家と個人の『食』の決定権【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年6月13日
-
「麦とろの日」でプレゼント 東京のららぽーと豊洲でイベントも実施 JA全農あおもり2025年6月13日
-
大学でサツイマイモ 創生大学と畑プロジェクト始動 JA全農福島2025年6月13日
-
JA農機の成約でプレゼントキャペーン JA全農長野2025年6月13日
-
第1回JA生活指導員研修会を開催 JA熊本中央会2025年6月13日