シンとんぼ(65) 食の安全とは(23) 農薬の用法、容量を守るために2023年10月21日
令和3年5月12日に公表された「みどりの食料システム戦略」をきっかけに始まったシンとんぼは今、そもそも「食の安全」とは何かということの検証を試みている。
前回までに、「食の安全」を示す根拠は、動物実験などによって得られたデータに基づいて、毒性学の専門家を中心とした審議会が「この水準であれば、恐らく人畜への健康被害は出ないだろう」と決定されたものだと整理した。農薬の登録制度は、この根拠に基づき、環境に影響がなく、人畜にも安全な範囲に収まるように作物残留試験を繰り返し、基準をクリアできる使用方法を作物ごと対象病害虫雑草ごとに決定し農薬登録がなされている。
なので、定められたとおりに正しく使用すれば、農薬が残留基準値を超えて残留することはなく、環境影響もほとんどないということだ。加えて、農薬取締法では農薬の使用に当たって、農家の遵守事項を定めており、それを守らないで農薬を使用した場合、農薬取締法違反となる。
その遵守項目は、
①使用した農薬が使用した作物に農薬登録されていること
②使用した作物に定められた希釈倍数・使用量で使用すること
③使用した作物に定められた1作期の使用回数制限以内で使用すること
④収穫前使用日数を守ること
の4点である。
この遵守事項のどれか1点でも守らなかった場合に農薬取締法違反となり、告発されて有罪判決になれば、「最大3年以下の懲役、もしくは100万円の罰金(これは個人農家の場合であり、法人の場合は1億円)」が科せられる。
このため、農家が使用方法の制限を超えて使用することはほとんどない。
なぜなら、仮に定められた使用量以上に農薬を多く散布した場合、薬剤費用も嵩むし、薬害のリスクが増えるし、農薬取締法違反で信用を無くした上に罰金が科せられるはで、農家にとってろくなことは無く、リスクばかりが大きいからである。
特に法人の場合は、罰金が1億円にもなるので、用法・用量は着実に守られていると考えてよい。
そこでよく聞かれることが、「農家が正しく使用していることの証明はあるのか」ということである。
正直言って、散布時に四六時中監視できるわけはないので、農薬散布の証明と言えば散布記録(防除日誌等)になる。この記録を正しく行っているかどうかは、GAP認証などを受けているかどうかを確認すると良い。
なぜなら、認証取得時に記録の正しさを厳しく審査されているので、認証を取得できるような農家・法人であれば「正しく記録を残す誠実な方である」ことが保証されていると考えても良いからである。
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