コメの市場があるメリットとは?その15「みらい米市場の可能性」【熊野孝文・米マーケット情報】2023年10月24日
10月24日、東京の飯田橋でホクレンが主催する「みどりの北海道米チャレンジ」という催しが開催される。この催しでは、道内11JAが地元のこだわり米を会場に展示、その特徴などを販売業者にプレゼンテーションすることにしている。目玉は、これらのこだわり米は今月16日に取引を開始したばかりのコメの現物市場「みらい米市場」に、期間限定(10月26日から31日)で売り物として上場されることである。
みらい米市場に売り手、買い手として登録した業者数は先週末現在で134社になっている。NHKなどマスメディアに同市場が取り上げられたことにより、問い合わせや登録申請が多くなっているが、登録までは審査が必要で、保留もしくは登録できなかったところも多い。これは、基本的に同市場はBtoBの市場であり、個人での登録は受け付けない。
審査に当たっては企業の場合、法人登記はもちろん事業内容や所在地についてもグーグルマップで確認したりしている。生産者については日本農業法人協会の協力を得て協会加盟の生産者800社に通知しているほか、GAP取得の生産者についてもGAP協会の協力を得て案内している。
有機米生産者では、次世代の会のメンバーを対象に10月26日にオンライン説明会を開催して有機米の上場を勧める。個人の生産者は認定農業者かどうか確認するほか、農協への出荷伝票の確認や組合員であるか否かも確認したりする。
売り手としての登録者で最も大きいのはホクレンである。ホクレンはみらい米市場の「事業協力者」として位置付けられており、売り手の登録者としては1社だが、道内の全JAのこだわり米などを上場することが出来る。
みどりの北海道産米チャレンジの開催趣旨では、国が推進する「みどりの食料システム戦略」に沿って環境負荷軽減につながるコメの生産拡大を目指し、こうしたコメを全国に広く紹介、商品化につなげることで全道的な取り組みにするために、みらい米市場を活用してマッチングの機会を創出、活用することになった。
みどりの食料システム戦略では、2050年までに有機農業の面積を100万ヘクタールにするという高い目標を掲げており、稲作が有機農業にならない限りこの目標達成は不可能。有機JASの認証を得た水田面積はいまだに3144ヘクタールに過ぎず、この面積を急拡大させる必要がある。
みらい米市場の役割の一つは、こうしたこだわったコメを上場することによってマッチングの機会を増やし、販売に結び付けることで需要の拡大を図ろうということにもある。こうしたこだわったコメは、売り手はその栽培の特徴やJAS有機の認証を得ているのかどうかといった説明が必要で、買い手からも小口での取引など様々な条件が提示されることが想定されるが、みらい米市場のオンラインサイトでは、フリマサイトのようにコメントのやり取りで交渉することが可能になっている。
みらい米市場は、オンライン上で取引することによって「電話やFAXでの取引の排除、さらには伝票のやり取りまでオンライン上で完結できる」としている。交渉結果に合わせてシステム上で売買契約書、注文書、納品書、領収書などをオンライン上でやり取りできるようになっている。若い人はネット上でやり取りする方が電話するより楽という状態になっているため、こうしたネット上の取引が急拡大する可能性がある。
しかも市場での売り物はすべてオープンにされ「公平で透明性がある市場」を標ぼう、誰でも閲覧でき情報ツールとしても使える。また、市場で実際に買おうとした場合、検索ツールを使って必要なロットの指定や産地銘柄などの条件を入力すればその条件にあった売り物を見ることが出来る。
つまり1件1俵からの有機米のオーダーであろうと、特定産地銘柄を毎月100トンずつ6か月間というオーダーであろうと、そうした条件を買い手が提示することが出来るのである。
最大の焦点は、みらい米市場がいわゆるコメの価格形成の場になり得るか?という点で、そのためにはなによりもこの市場での取引高(成約量と件数)がカギになる。同社では23年産で2万トン、将来的には100万トンという目標を掲げているが、それを達成するのは容易ではない。
なによりもコメ業界はネット上で取引するという商習慣がなく、会場に集まってのリアルな取引会や電話、FAXで取引しているのが実態。過去に卸団体や大手商社がネット上でコメの売買が出来るように大きな資金をつぎ込んでシステムを構築したが上手くいかなかった。
上手くいかなかった原因を一口で言ってしまうと、システム売買をコメ業界に導入するには時代が早かったとしか言いようがない。それが電話やFAXでやり取りするよりもオンライン上でやり取りした方が楽、という人が多くなってみらい米市場に参加するようになれば、大化けする可能性はある。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(146)-改正食料・農業・農村基本法(32)-2025年6月14日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(63)【防除学習帖】第302回2025年6月14日
-
農薬の正しい使い方(36)【今さら聞けない営農情報】第302回2025年6月14日
-
群馬県の嬬恋村との国際交流(姉妹)都市ポンペイ市【イタリア通信】2025年6月14日
-
【特殊報】水稲に特定外来生物のナガエツルノゲイトウ 尾張地域のほ場で確認 愛知県2025年6月13日
-
【注意報】りんごに果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 岩手県2025年6月13日
-
SBS輸入 3万t 6月27日に前倒し入札2025年6月13日
-
米の転売 備蓄米以外もすべて規制 小泉農相 23日から2025年6月13日
-
46都道府県で販売 随意契約の備蓄米2025年6月13日
-
価格釣り上げや売り惜しみ、一切ない 木徳神糧が声明 小泉農相「利益500%」発言や米流通めぐる議論受け2025年6月13日
-
担い手への農地集積 61.5% 1.1ポイント増2025年6月13日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】生産者米価2万円との差額補填制度を急ぐべき2025年6月13日
-
井関農機 国内草刈り機市場を本格拡大、電動化も推進 農機は「密播」仕様追加の乗用田植え機「RPQ5」投入2025年6月13日
-
【JA人事】JA高岡(富山県)松田博成組合長を新任(5月24日)2025年6月13日
-
【JA人事】JAけねべつ(北海道)北村篤組合長を再任(6月1日)2025年6月13日
-
(439)国家と個人の『食』の決定権【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年6月13日
-
「麦とろの日」でプレゼント 東京のららぽーと豊洲でイベントも実施 JA全農あおもり2025年6月13日
-
大学でサツイマイモ 創生大学と畑プロジェクト始動 JA全農福島2025年6月13日
-
JA農機の成約でプレゼントキャペーン JA全農長野2025年6月13日
-
第1回JA生活指導員研修会を開催 JA熊本中央会2025年6月13日