コメの市場があるメリットとは?その16「ネット価格の方が安いななつぼし」【熊野孝文・米マーケット情報】2023年10月31日
10月26日に開催されたクリスタルライスの取引会では48産地品種、5万5525俵の売り物があった。前回9月21日に比べ売り物の数量は増えたものの、前年同時期に比べると74%の水準にとどまっており、新米の売り物が少ない状況が続いている。全産地銘柄の加重平均価格は前回に比べ6%値上がり、5年産が出回り始めてから右肩上がりに価格が上昇している。同じ10月26日に、みらい米市場のネット上に上場された北海道のこだわり米の売り唱え価格をみると、JAのこだわり米ななつぼし1等が東京着で1万5240円(税別、以下同)で出ており、クリスタルライスのななつぼしの上場価格より安い。
「5の付く年は作柄がおかしいですね。平成5年の大凶作、15年の不作、そして令和5年ですから」と仲介業者がいう。この仲介業者は、クリスタルの取引会が開催される前に秋田あきたこまちを1万5100円から1万5150円で成約させていたが、クリスタルの取引会の後は売り物が引っ込んだという。
米穀業者が集まって開催された席上取引会でも新米の出盛り期でもあるにも関わらず、産地業者が売り物を出さないという異常な状態になっている。また、消費地の卸が産地に出向き、農協等と全農相対価格より高値を提示して交渉しても、量が確保できないという事態になっている。新米の出回り初期から右肩上がりで市中価格が値上がりすれば、出荷を先延ばしすればするほど、利益が増すのだから産地側が玉を引っ込めるのも無理もない。
特に量販店での売れ筋銘柄は必要量確保が急がれるため、その分市中価格が上昇するという傾向をたどっている。ディスカッションを含めたコメ売り場では、銘柄米より価格の安いブレンド米が売れるようになっているのだが、この精米商品にも赤信号が灯っている。
ブレンド米の原料玄米は未検米や中米だが、これらの価格が急騰しており、検査米との価格差が急速に縮小している。東北の農協カントリーのくず米入札会では、無選別のくず米がキロ170円で落札されたというのだから、まさに安いコメはないという状況になりつつある。
クリスタルライスの取引会では、表のように各産地銘柄米の売り物が出ており、秋田あきたこまちは10件1万2644俵の売り物があったが、すべてに買いが入り成約した模様で、全体的にも3万5000俵が落札され、事前の予想とは違い、主催者が驚くほどの高い成約率になっている。
作況104と発表された北海道の売り物は、ゆめぴりかが1万5400円で1020俵、ななつぼしが1万5600円で85俵しか出なかった。ゆめぴりかよりななつぼしの方が売り唱え価格が高くなっている。これまでの北海道産米の銘柄の位どころからすると、逆転したような価格になっているが、同じ日にみらい米市場に上場された北海道産のこだわり米の価格は、クリスタルライスの上場価格より安い。
みらい米市場には「みどりの北海道米チャレンジ」と銘打って、減農薬や減化学を謳った環境に配慮したこだわり米を11JAが15件、上場した。ななつぼしの価格を見ると、安いものは1万5240円というものもあった。買い手の登録は無料でみらい米市場の審査が通ればこの価格で買うことが出来る。良食味米のふっくりんこも1万5840円で出ている。
上場期間は10月31日までだが、ホクレンでは取引の結果をみながら第二次上場や有機米に限定した上場も考えており、北海道産米の新たな販売チャネルとしてみらい米市場を捉えている。
みらい米市場の売り唱え価格は、登録しなくても誰でも見られるようになっており、価格情報として参考になる。しかもロット条件や受渡期日など様々な取引条件がネット上でやり取り出来、売買契約まで作成出来るのだから、今回のように同じ産地銘柄米で、かつこだわった栽培方法で生産された銘柄米が、卸業者同士の取引会より安く買えるのであれば、買い業者として登録しておくメリットは大きいと言える。
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