(357)日中印のコメの単収比較【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2023年11月10日
世界のコメの生産量について、中国とインドが圧倒的な生産量を誇ることはよく知られています。今回はこれを日本との比較で少し掘り下げてみましょう。
米国農務省によれば、2023、4年度の世界のコメ生産量(精米ベース)は5億1,814万トンである(2023年10月時点)。国別順位を見ると、中国(1億4,900万トン)、インド(1億3,200万トン)と年間1億トン以上の生産国はこの2カ国のみである。
以下は、バングラデシュ(3,640万トン)、インドネシア(3,445万トン)、ヴェトナム(2,700万トン)、タイ(1,950万トン)、フィリピン(1,260万トン)、ミャンマー(1,200万トン)と続く。ここまでが年間1,000万トン以上の国々だ。これに続くのがパキスタン(900万トン)と日本(730万トン)である。日本の次にはブラジル(680万トン)とカンボジア(600万トン)が迫る。
稲刈りした直後のコメのことを籾(もみ)という。籾から殻を取る(籾摺り)したものが玄米、玄米の表面を削り(精米)、糠(ぬか)を取ると普段我々が目にする白米となる。コメは扱う人と状況により様々な呼称が知られている。
一般に、籾を玄米にすると重量は8割になり、さらに1割の糠を取ると白米になる。100g x 0.8 x 0.9= 72gと考えればわかりやすい。筆者が仕事を始めた頃は概ね日本の玄米は1,000万トン程度と考えられていたため、全国で発生すると想定される100万トンのコメ糠をどう使うかでいろいろと工夫したものだ。家畜の飼料用や漬物用などによく使われた。
さて、話を世界に戻そう。英語で言えば、籾はrough rice、玄米はbrown rice、精米したコメはそのままmilled riceとなる。
生産量は先に述べたが単収はどうなっているか。農水省によれば、日本では「1.70ミリのふるい目幅」で選別された玄米の10a(アール)あたりの収量が基準である。このままでは中国やインドとの長期比較がやや難しい。
そこで米国農務省の長期データを探り、収穫面積と籾ベースでの生産量から籾ベースでのヘクタールあたり単収を調べ、3カ国比較を実施した結果が下記のグラフである。

過去半世紀の間に、日本の単収は5トンから7トン弱へ伸びたが、中国とインドの伸びが著しい。両国とも1960年当時は平均単収が2トンを下回っていた。当時の日本の単収は中国やインドから見れば倍以上であり、コメの生産性に関して日本ははるか彼方に見えたはずだ。
まず、インドの単収の伸びが綺麗な右肩上がりの直線を示していることに気が付く。簡単に言えばほぼ20年という時間をかけて単収を1トンずつ伸ばしてきた形だ。その結果、現在では4トン超えの水準へ到達している。これに対し、中国は1960年代と1980年代に大きな単収の伸びを経験している。そして1990年代半ば以降は6トン水準が常態となり、伸びも鈍化している。ただし、2017年以降は平均単収で継続して日本を上回り、2018年からは6年連続して7トン越えを達成している。
恐らく、多くの人にとっては何となく感じてはいたが、ついに単収でも中国に抜かれたか...という感を持つのは仕方がないのかもしれない。歴史を振り返ると、1993(平成5)年はいわゆる「1993年コメ騒動」の年である。この年の日本は記録的な冷夏で大変であり、米国はミシシッピ川で大洪水が発生した年だ。今でも記憶にある方が多いと思う。この年以外にも1998年、2003年、2015年と単発的に中国の単収は日本を上回っているが、2017年以降は先に述べたとおりである。
それにしても、中国のコメが単収でも確実に日本を上回る時代になったわけだ。直近の中国のコメ収穫面積は約3,000万ヘクタール、これも日本の148万ヘクタールの約20倍である。規模に圧倒されず、堂々と乱世を生き残るための「弱者の戦略」、これを本格的に検討するタイミングではないだろうか。
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新米が美味しい季節になりました。
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