【JCA週報】地域包括ケアに取り組む岡山医療生協の現状と課題(和田 博知)2023年11月27日
「JCA週報」は、日本協同組合連携機構(JCA)(会長 山野徹JA全中代表理事会長、副会長 土屋敏夫 日本生協連代表会長)が協同組合について考える資料として発信するコーナーです。
今回は、本機構の協同組合研究紙「にじ」の2023年秋号に寄稿いただいた論考です。
地域包括ケアに取り組む岡山医療生協の現状と課題
岡山医療生活協同組合 副理事長 和田 博知
ここ数年間、会議の最初の議題を「患者・利用者、組合員のニーズやくらしの状況」を出し合うことから始めることにしています。
患者・利用者、組合員ニーズにどう応えるかを明確にすることが目的です。というのは、コロナ禍で事業所は事業所運営にのみ専念せざるを得ないほど緊迫した状況になり、なかなか視点が外に向かなくなっていたからです。
ある会議の冒頭、「地域の民生委員の方から、『救急車を呼ぶほどではないけど、自宅で動かれなくなっている方がいる』との相談の電話があり、念のため救急車で看護師と事務が訪問したところ、がんの末期で動けなくなっており緊急入院となった」という報告がありました。その他にも、「退院を勧めるも自宅がゴミ屋敷で、社会的資源の活用と共に地域の組合員や職員で片づけをし、生活を立て直し退院にこぎつけた」など、毎月5例くらい極めて困難な事例が報告されています。
月に1回のペースで、地域包括ケアの具体化を目的に始めた「いのち・くらし支え合い岡山」(以下「ササエさんおかやま」と略す。岡山市内の、医療福祉生協、公益財団法人、社会福祉法人、特定非営利活動法人など8つの企業と団体が参加している)を行っているが、報告を聞くと1法人だけでは解決できない非常に困難な事例が報告されるようになってきました。
私たちは臨床現場で働いており、目の前の患者・利用者、組合員、住民の方の困難に対処するのが使命だと考えています。「ササエさんおかやま」の協同事業で始めた「なんでも相談」に寄せられる相談件数は、2022 年度は前年と比べ約500 件増え年間3,498 件となっており、中でも療養相談・介護相談・生活支援・医療費相談などが増加しています。国や自治体の出す統計では見えない様々な課題の多さが、日本社会の脆さを表しているようでなりません。
一方、急速に進む人口減少や高齢化の影響で、岡山医療生活協同組合(組合員数6万1千人、出資金残高約19億円、17事業所、職員数1,000 人、収益約85 億円)は、毎年3千人以上の組合員加入と出資金2億円の増資がないと組織は縮小していくという状況となっています。
このように、地域と組織をどうしていくのかという課題は避けて通れない重要な課題となっています。
以降の論考の章立ては下記の通りです。
1.コロナ禍で迎えた70周年
2.岡山県南東部の人口と医療介護需要の変化と岡山医療生協への影響
3.事業の新たな取り組み
1)「健康づくり」を事業として「かたち」にする「健康づくりセンター大野辻」
2)くらたタウン
4.まちづくりや地域ニーズに応える新たな取り組み
1)交通手段への対応
2)地域包括ケアは医療と介護と衣食住の連携~提携企業や包括連携協定
5.生協の力を引き出す多様性を尊重した担い手づくり
さいごに
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