シンとんぼ(80)食の安全とは(38)遺伝子組換え食品2024年2月10日
令和3年5月12日に公表された「みどりの食料システム戦略」をきっかけに始まったシンとんぼは、前回から内閣府の食品安全員会が継続して実施している食品安全モニターに対する意識調査結果をもとに、食の安全に対する意識の変化を探っている。調査には15個(2022年度)の“食品の安全性の観点から感じるハザード(不安要因)”があり、モニターの方がハザードごとに不安を感じるかどうかを調査した結果が示されており、前回からハザードごとの意識の変化を探っている。今回は、2004年の調査で6番目に多かった「遺伝子組換え食品」だ。このハザードにとても不安を感じるモニターの割合は、2004年26.5%であったものが、3年後の2007年には18.3%と減少し、さらに5年後の2012年には11.0%、2017年に8.2%、直近の2022年でも11.5%と、ここ10年以上10%前後の割合が続いている。このハザードの場合も、気にする人の割合が現在では大体1割ぐらいあると考えた方が良いだろう。
「遺伝子組換え食品」とは、遺伝子組換え体で生産された農産物等を原材料として生産された食品ということなので、その原材料となる農作物を題材に考えてみる。
生物の世界における遺伝子の変異は、例えば環境の変化への対応などで生物が生き残る戦略として自然に起こっているのだが、農作物の育種では、より効率よく遺伝子変異を起こさせるために、異なる形質の雄しべと雌しべをかけあわせて、人間が望む形質を持って生まれた農作物を選抜している。形質が変わるということは遺伝子の変異が起こっており、通常の育種も遺伝子変異を起こさせていることに変わりはない。
通常の交配では、変えたい形質を司る遺伝子部分に変異を促して、期待したとおりの変異が起こるかはやってみなければわからず、またその際には、変異させたい遺伝子部位以外にも変異が起こっている可能性が十分にあり得る。これに対し、遺伝子組換えは、変えたい形質を司る遺伝子部位のみを書き換えるので、ターゲット部位以外の遺伝子は組換え前とそっくり同じである。
目的部位のみ変異した遺伝子組換え作物と、目的部位のみならずそれ以外の部位でも変異が起こっている可能性がある作物とを比べた場合、どちらの方が安心できるのであろうか。
たぶん消費者心理的には、自然に近い形で行われる交配は自然な変異なので安心できるが、人為的な操作を加える遺伝子組換えは不自然な変異を起こしているので危険だという、農薬の毒性と同様に「自然は安心できるけど人為的なものは危険で安心できない」という感情的な領域に支配されているように思えてならないのだがいかがだろうか?
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日