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ガラパゴス化する花の品質【花づくりの現場から 宇田明】第29回2024年2月22日

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全日本ホルスタイン共進会や全国和牛能力共進会ほどではありませんが、花でも品評会は盛ん。
都道府県、地域ごとに品評会がありますが、関東東海の12都県が参加する関東東海花の展覧会がもっともレベルが高く、注目を集めています(写真)。いわば花の箱根駅伝。
1月下旬に東京池袋で開かれた第72回関東東海花の展覧会は、日本の花が高品質であることを証明するとともに、問題点をもあぶりだしました。

東京池袋で開かれた第72回関東東海花の展覧会

一時、花の品評会はマンネリ化し、生産者の出品意欲が低下していました。
最近は世代交代が進み、入賞を目指し、栽培技術の向上に熱心な若い生産者が増えました。
背景には生産者の減ったことがあります。
残ったのはハイレベルの生産者で、高品質な花をつくる栽培技術の腕を全国の仲間と競いあっています。

関東東海花の展覧会で入賞した花の品質、出品技術はすばらしい。
世界に誇れる芸術品といっても過言ではありません。
内外種苗業者の品種改良の成果とともに、生産者の栽培技術、環境調節技術が向上していることを証明しています。

しかし、あまりにも高品質化し、芸術品化したことには違和感を覚えます。
花屋や消費者は、そこまでの品質を求めているのか、芸術品のような花にどれだけの対価を支払うことができるか。
芸術品的な花は、結婚式や祝賀会など特別な場面を飾るにはふさわしいが、それらを高価格で持続的に仕入れられる花屋は多くありません。

農水省園芸作物課が推計した2021年の花の消費は1.1兆円。
そのうち業務需要が2,100億円、個人消費が8,800億円です。
業務需要の内訳は、婚礼用が370億円、葬儀用が1,700億円です。
生産者が目標にしている芸術品のような花が必要な婚礼用は、花の消費の3~4%しかありません。
そのほか、高級ギフト、イベントや高級ホテルの装飾などを加えても、芸術品的な花のマーケットは1割もありません。
消費の8割を占める個人消費には、母の日や誕生日などのギフトが含まれていますが、ほとんどは家庭を飾る花や仏壇・お墓にお供えするカジュアルな花です。

マーケットはカジュアルな日用品的な花を求めているのに、生産者はマーケットを無視して芸術品の生産にまい進しています。
花屋・消費者と生産者とのミスマッチ。
それは日本の工業製品がたどってきたガラパゴス化と類似しています。

品評会で腕を競い合い、栽培技術を高めることは生産者として必要不可欠です。
マーケットが求めているカジュアルな花を、安定して供給するには、品評会で入賞する高度な栽培技術が必要だからです。
ユニクロでわかるように、カジュアルな花とは安かろう悪かろうではありません。

ただし、経営の目標は見失ってはなりません。
目標は、品評会の入賞ではなく、売上の拡大と所得の向上です。
花では品評会入賞は名誉ですが、畜産とちがい売上には直結しません。
売上には、品評会で評価される外的品質より、目に見えない内的品質が重要です。

また、婚礼用の花をつくる生産者は一流、家庭用の花をつくる生産者は二流といったまちがったプライドは捨てなければなりません。
マーケットの要望に対応し、芸術品でもカジュアルでも安定生産ができるのが一流の生産者です。

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