(380)震災時は5歳【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年4月19日
当たり前ですが、大学の新入生と話していてあらためて気づかされる点が多々あります。東日本大震災から13年、つまり今年の大学1年生は当時5歳くらいです。
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今日の授業の中で大学4年生と話をし、東日本大震災当時の年齢を訪ねたところ、8歳くらい、この点を再認識した。そうなるとこの春の新入生は通常3歳下と考えれば5歳、小学校入学前の年齢である。月日が流れるのは本当に早い。
毎年新入生と接してはいても、自分自身の時間間隔が多少おかしくなっているのを自覚する時がある。数年前までは東日本大震災について尋ねると、当時は小学校高学年や中学生であったため記憶が鮮明な学生が多く、いろいろな話が聞けた。
もちろん個人差はあるが、ともすると我々は現在の18歳が物心ついた頃の感覚が世間的にいつ頃なのかを忘れて話をしてしまう。当然知っていると思う内容を学生たちが知らなくても、それは知的能力の問題ではなく対象が発生した当時、新入生達が幼い子供であった事実を忘れがちだ。
英語で言えばティーンエージャーとなるのは13歳以上である。それ以前は完全に子供扱いであり、13歳からがヤング・アダルトとして少しずつ世の中のさまざまな活動に関わるようになる。5歳のときの毎日を鮮明に記憶している人は極めて稀であろう。実際、筆者もかつてはそれなりに記憶力には自信があった。だが、小学校の頃の記憶ですらいくつかの強烈な場面のみになりつつある。
年月を素直に振り返れば、現在18歳の新入生が中学1年生であったのは5年前、つまりコロナ前である。東日本大震災もリーマン・ショックも彼ら彼女たちが生まれる前の出来事である。
50歳の人間にとって13年前は30代であり、比較的新しい昔のことかもしれない。しかし、18歳にとっての13年前は5歳、日々の記憶はどこまで残っているだろうか。
このような感覚を理解した上で、例えば為替レートの話などをすると、興味深い反応が数多く見られる。
例えば、最近のメディアは連日「円安」報道である。経済ニュースを見る学生達はそれを素直に信じる傾向が強い。しかし、よく聞いてみると体感的に理解している時間軸が過去10年くらいである点に気が付く。そこで今の日本は円安なのか円高なのかと聞くと、一瞬戸惑う顔が見られる。何故、そんなことを聞くのかという顔だ。
簡単に言えば、かつて日本には1ドル=360円の固定相場時代が存在した。一度は学校で習っていると思うが社会科に興味が無い場合忘れていてもおかしくはない。プラザ合意(1985年)など今から40年ほど昔の話である。自分たちが生まれる20年以上前の話など現実問題としては関心が無くて当然である。
それでは「1ドル=360円時代から見れば、150円はまだ円高なのではないか?」との問いが意味しているものは何か。購買力云々の話ではなく、現在の事象はどこを起点に見るかにより意味が全く異なるという視点である。「数字は嘘をつかない」という言葉も良く聞かれる。だが、その数字ですら、どこを基準として見るかにより評価は異なる。
こうした視点を習得してもらえれば、単純に円高、円安との断定がいかに危うい思考であるかがわかる。その上で、現代の日本で注目を集めている様々な課題を意識して見直すと面白い。ある時点ではそれが最善と見做された判断・主張・行動などが、長い時間を経てみると実はかなり問題を含む、あるいは当初は良くても一定の時間を経た後に全く異なる形に活用されてしまうなど、歴史には多くの教訓が見える。
新年度最初のドタバタが落ち着いたら、しばしこうした事例を考える時間を作ってみたい。
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元旦の能登半島、そして4月17日の愛媛・高知と今年は大きな地震が発生しています。被害を受けた地域の皆様の安全と一日も早い回復を心からお祈りします。
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