【今川直人・農協の核心】事業改革から経営改革へ2024年5月9日
農協関係者の魂の蘇生
日本の本格的構造政策はガット農業交渉が決着する1993年の農業基盤強化促進法の改正に始まる。1960~70年代から規模拡大をすすめた農業先進国は交渉結着を機に所得政策に移行するが、日本は構造政策(農地集積)に邁進する。2006年に所得政策(「担い手経営安定法」)に着手するが、これも構造政策のレールに乗った生産拡大である。
行政は構造改革が行き着く先についても、農協を農業の担い手として指名した。農協改革は農地バンクが創設された2014年に本格化する。停滞していた農協のテコ入れである。
構造政策のゴールは「少数の農家による大規模経営」である。当初、農協は困惑を隠せなかった。この農協改革は、法律は傍にのけておいて農協の事業の改善を強烈に迫るものであった。農水省による生産資材価格のバラツキの調査・公表、全農のメーカーとの入札による価格交渉の指示など強烈な行政指導が発動された。この事業改革の最大の意義は農協関係者の蘇生であった。
経営改革;早期警戒制度
事業改革に次ぐのが経営改革である。令和4年1月施行の改正「農協等向けの総合的な監督指針」の性格は「経済事業強化と健全経営の両立」である。注目すべきは、「行政による健全経営維持装置」とも言うべき「早期警戒制度」である。骨格は、次の通りである。
都道府県行政が機械的シミュレーションにより一定の基準に該当する農協を抽出(ステップ1)、どのようにして収益性や健全性を確保していくのかを問う(ステップ2)、その結果により業務改善命令等の発出が可能(ステップ3)
早期警戒制度は金融庁が金融機関の監督のために用いている制度を、系統金融機関向け監督指針に導入したものである。本制度はステップ3に見る通り強力な行政指導を伴っているが、農協の自主努力による健全経営を促す一助と捉えたい。
取り組みの事例
一般企業と違って農協経営では手数料・利用料など「入るを計る」ことが実際的にも手続き的にも容易でない。5年後シミュレーションによる信用・共済事業とくに信用事業の赤字予測から営農経済事業の黒字化を決意し、黒字を維持している「JA秋田しんせい」の以下に見る実践は内容・手続き両面で示唆に富む。
① 目標‐営農経済事業(赤字解消の趨勢にあった)の黒字化、信用共済事業の持続性のある運営方式の構築
② 営農経済事業の投資回収・黒字化のためになすべきことの決定‐生産・販売量の拡大、生産資材購買事業体制の見直し、利用施設の利用者自主運営など
③ 役職員大会‐「営農経済黒字化宣言」(令和2年2月)
④ 集落座談会でのフル開示‐改正農協法の抜粋(7条3項~経営の健全性・投資・利用高配当)、収益構造(関連事業間での補完しか認められない可能性が高まってきていることに言及)、(情報フル開示の後)5種の事業について手数料等の見直しについて説明
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