日本の報道の自由度はビリから6番目【森島 賢・正義派の農政論】2024年5月20日
自虐的な表題と思われるかもしれない。だが、この根拠は「国境なき記者団」が、世界の180か国について、各国の報道の自由度を指数にして発表したものの一部である。
日本は、先進国クラブといわれるOECD加盟の38か国の中で、ビリから6番目である。まことに恥ずべきことだが、おおむね認めざるをえない。
ここでの主旨は、この根拠を詳細に検討することではない。日本は、報道の自由が、これほどまでに侵害されている、という点を指摘することである。そして、誰が侵害しているか、である。
報道の自由は、民主主義の根幹である。日本は自由と民主主義の国だ、と胸を張って主張する論者がいる。そう言って、ウクライナや中東で、いわゆる「権威主義」の国を非難している。だが日本は、それほど自慢できる国だろうか。
「国境なき記者団」は、日本はそれほど自慢できる国ではない、といっている。
日本は、原因を突き止め、改革して、この国際的な汚名を濯がねばならない。
先日、「国境なき記者団」が、世界の180か国について、各国の報道の自由度を示す指数を発表した。上の図は、このうち、OECDに加盟する38か国を取り上げて、大きな国順に示したものである。
日本は、33番目に位置している。ビリから6番目である。
ビリから正確に6番目かどうかはともかく、日本の報道の自由に対する侵害は深刻である。
いったい何が原因か。誰が侵害しているのか。
◇
もう1つ。「自由」と「民主主義」と並んで、日本が世界に掲げている正義の標語は「法の支配」である。日本は、この3つを普遍的な価値として高く掲げている。しかし、実際にはこれらの全てを尊重していない。
はじめに「法の支配」をみてみよう。
日本は、ウクライナ問題では、ロシアを無法な侵略者だといって非難している。その一方で、中東問題では、パレスチナを侵略しているイスラエルを非難していない。
だから、日本は二重基準だ、と批判されている。つまり、全ての国に適用されるべき唯1つの基準である「法の支配」を尊重していない。
◇
いったい日本はどんな正義のもとで、国際舞台で振舞っているのか。米欧に追随しているだけだ、という論者がいる。米欧が二重基準だから、日本も二重基準なのだ、という。米欧も日本も二重人格だ、というのと同じだ。
この解説は、あまりにも浅薄である。二重基準には、その上に隠された基準があるのだ。報道は、この上位の基準を暴き、それに突き刺さろうとしない。それは、どんな基準か。
それは、資本の利益なのである。日本は、米欧にならって、資本の利益をただ1つの最高の基準にしているのだ。
「報道の自由」も、その例外ではない。
◇
本題の「報道の自由」に戻ろう。ここでも議論は、あまりにも浅薄である。
ウクライナ問題の報道は、一昨年の2022年2月24日以後のことしか報道しない。それ以前、NATOは東方拡大のために、ロシア国境の近くに軍隊を配備することを企んでいた。だが、このことについては報道しない。
また、中東問題は、昨年の2023年10月7日以後のことしか報道しない。それ以前から、ガザ地区は天井のない監獄になっていた。だが、このことは報道しない。
つまり、この2つの問題とも、歴史的経緯については、何も報道しない。
◇
この2つの歴史的経過を報道することは、資本にとって不都合なのである。だから、2つの問題とも、資本が政治力を使い、報道が、問題の歴史的な事実を発表する機会を剥奪し、報道の自由を圧殺している。
そうして、白々しく、報道の自由だとか、自由と民主主義だとか、法の支配だとか、戯言を言っている。つまり、問題を解決する提言に向けた報道はしない。資本にとって不都合だからである。
◇
歴史の事実をふまえて問題を直視し、問題を解決するには、ウクライナについては、この地帯を非軍事化するしかない。中東については、パレスチナとイスラエルの両国を、ともに独立した主権国家として、国際的に承認するしかないのだ。
ウクライナや中東で、祖父や祖母など、多くの家族を虐殺された孫たちは、今後、彼らのそれぞれが、人生を終えるまでの半世紀の間、その時の無残な光景を瞼に焼き付けていて、その無念さを、決して忘れ去ることはないだろう。
報道人も人間ならば、そして、報道も人間的ならば、このことを強く肝に銘じ、報道の自由を圧殺する資本と、その資本に奉仕する政治に、厳しく対峙すべきである。
(2024.05.20)
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(146)-改正食料・農業・農村基本法(32)-2025年6月14日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(63)【防除学習帖】第302回2025年6月14日
-
農薬の正しい使い方(36)【今さら聞けない営農情報】第302回2025年6月14日
-
群馬県の嬬恋村との国際交流(姉妹)都市ポンペイ市【イタリア通信】2025年6月14日
-
【特殊報】水稲に特定外来生物のナガエツルノゲイトウ 尾張地域のほ場で確認 愛知県2025年6月13日
-
【注意報】りんごに果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 岩手県2025年6月13日
-
SBS輸入 3万t 6月27日に前倒し入札2025年6月13日
-
米の転売 備蓄米以外もすべて規制 小泉農相 23日から2025年6月13日
-
46都道府県で販売 随意契約の備蓄米2025年6月13日
-
価格釣り上げや売り惜しみ、一切ない 木徳神糧が声明 小泉農相「利益500%」発言や米流通めぐる議論受け2025年6月13日
-
担い手への農地集積 61.5% 1.1ポイント増2025年6月13日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】生産者米価2万円との差額補填制度を急ぐべき2025年6月13日
-
井関農機 国内草刈り機市場を本格拡大、電動化も推進 農機は「密播」仕様追加の乗用田植え機「RPQ5」投入2025年6月13日
-
【JA人事】JA高岡(富山県)松田博成組合長を新任(5月24日)2025年6月13日
-
【JA人事】JAけねべつ(北海道)北村篤組合長を再任(6月1日)2025年6月13日
-
(439)国家と個人の『食』の決定権【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年6月13日
-
「麦とろの日」でプレゼント 東京のららぽーと豊洲でイベントも実施 JA全農あおもり2025年6月13日
-
大学でサツイマイモ 創生大学と畑プロジェクト始動 JA全農福島2025年6月13日
-
JA農機の成約でプレゼントキャペーン JA全農長野2025年6月13日
-
第1回JA生活指導員研修会を開催 JA熊本中央会2025年6月13日