関東早場米も店頭5㌔2500円以上が売価に【熊野孝文・米マーケット情報】2024年8月13日
8月の第一週に大手量販店中心に複数店のコメ売り場を見に行った。最初に行ったのは6月のコメの売り上げが過去最高だったというI社で、他社の売り場にはコメはなくてもここだけは置いてあると思っていたのだが、2㌔袋も含めてすべての売り棚が空になっていた。店員さんに「コメはいつ入って来るんですか?」と聞くと、担当に聞いてきますと言ってしばらくして帰ってきた返事が「わかりません」であった。他店も5㌔袋はほとんどおいていなかったが、レジ近くに宮崎の新米コシヒカリが置かれているところが3店舗あった。
価格は5㌔2880円から3200円で大きな価格差があった。
精米販売量が年間10万t以上ある首都圏の卸が8月5日に業績発表のための記者会見を開いたので、現在のひっ迫するコメの情勢と新米の取組について聞いてみた。
冒頭に仕入れ販売担当責任者がこれまでの経緯について、昨年からの5年産米の仕入れは年間の需要量を想定して必要数量を確保したものの、年末から年始にかけて想定以上に需要が増え、今年度に入ってからも需要が伸びて需給バランスが崩れた。注文量を抑えるために価格を上げたが、それでも需要量を賄いきれず、在庫量が急減、足元では新米を早めに手当てせざるを得ない状況になっていると述べた。
その後の一問一答は概要以下の通りである。
Q関東の早期米も刈取りがはじまるが、産地の庭先価格は高騰している。スーパーなどへはそれを仕入れてそのまま価格転嫁するのか。
「もうすでに値段を提示しているところもある。実際に購入してから価格を調整することになる」
Qコシヒカリだと5㌔2580円ぐらいになるのか。
「もう少し高くなる」「採算をどうとるかより売り棚がスカスカなのでそこにコメを置くことの方が先決」
Q先行き6年産が本格的に出回ると価格は下がると見ているのか。
「持ち越しする5年産在庫が全くないので6年産は14ヶ月でカウントする必要があるので、通年で見て需給が緩和するとは見ていない」
一言でいうなら価格に関しては大変強気な姿勢で、消費者の反応を気にしながらも6年産米の確保を優先するためには価格を引き上げざるを得ないといったところ。実際、千葉、茨城では8月に入り農協系統が独自に買取価格を生産者に提示しており、銘柄によって違いがあるものの税込みで1万9000円台から2万円台になっており、卸の仕入れ価格もそうした集荷価格を反映することになる。全農県本部や単協の中には概算金を示すところもあるが、概算金は生産者の判断基準にはなっておらず、買取価格が6年産米の基準。また、収穫時期が7日から10日も早まっており、今週末には関東新米もスーパーの店頭に並ぶものと予想される。
大規模生産者の中には外食企業の強い要請に応えるべく、本来飼料用に出荷する予定であった品種を7月29日に早刈りして出荷した生産者もいるほどで早期出荷することが産地の喫緊の課題になっている。
不思議なことは平成5年の大不作のあと6年産米の収穫時期が驚くほど早まったことで、北海道でも8月に出荷できたコメがあった。平成のコメ不足と現在のコメ不足は中身がだいぶ違うが、端境期に逼迫していることだけは同じで、そこで令和6年産米の収穫時期が早まっているというのも何かの因縁があるのかもしてない。
別表は農水省が食糧部会で参考資料として配布した「早期米の出回り時期と数量」のうち5年産米だけを切り取ったものだが、8月中に出回る数量は14万4000tで、年間仕入数量の4%に過ぎないが、9月までには128万2000tになり、その比率は41.5%まで高まる。早期米の出回り時期は温暖化もあってか年々早まっており、8月中の出回り量が増えている。年産ごとの数量は、3年産が11万5000t、4年産が12万6000tになっており、5年産は4年産に比べ約2万t増えている。
8月中に出荷される6年産米は台風被害がなかった南九州の早期米に加え、千葉、茨城の関東の早期米や新潟、北陸3県の出回り量が増えるものと予想される。さらに6年産米は主食用米の作付面積が6万㏊ほど増えるという見方もあり、数量ベースでは約30万t増になる。この増加分がどのように市中価格に影響を与えるのかが今後の最大の焦点になるりそうだ。
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