【浜矩子が斬る! 日本経済】「さらば、鮒侍男(ふなざむらいおとこ)」 方向感なき政権と共に2024年8月20日
岸田文雄首相が、来る自民党総裁選への不出馬意向を示した。その後、立候補意向表明者がラッシュ状態になっている。そして、その顔ぶれはいたって新鮮味に欠ける。この有様は、政党としての末期症状だ。政権交代の好機だ。野党の皆さんには、一丸となっての大奮起を期待したい。
エコノミスト 浜矩子氏
この間に、筆者は岸田首相に二つの別名をプレゼントした。その一が「アホダノミクス男」だった。本連載の第一回で申し上げた通り、安倍晋三政権当時、彼らのいわゆるアベノミクスを筆者はアホノミクスと言い換えていた。そして岸田政権の経済政策方針をみた時、これはアホノミクスの完璧な丸パクリだと思った。キシダ氏によるアホノミクスだから、アホダノミクスでいいだろう。そう考えた。それに加えて、「困った時のアホ頼み」というニュアンスもある。これは、残念ながら今は亡き友人が「アホダノミクスには『困った時のアホ頼み』」の意味をあるの?」という名質問を投げかけてくれたことの結果だった。かくして、アホダノミクス男が誕生した。
以降、筆者は盛んにアホダノミクス男の名称の普及に努めた。今でも、このネーミングは結構それなりのものだと思っている。だが、その一方で、次第にちょっと別の感触も芽生えて来た。この男、誰か筆者が知っている人に似ている。この男は、筆者をして誰かを想起させる。そう感じるようになった。そしてある時、この誰かが誰であるかが閃いた。その人の名は、鮒侍(ふなざむらい)。
鮒侍をご存じの皆さんは多かろうと思う。これも、誰かが誰かに与えた別名だ。別名の付与者は吉良上野介。それを与えられたのが浅野内匠頭である。ご存じ「忠臣蔵」のあだ討ち物語は、この別名の授受の場面がその発端になっている。少なくとも、歌舞伎の演目としての「仮名手本忠臣蔵」においてはそうだ。
パワハラ男の上野介が、内匠頭に向かって、「お主は、まるで狭い井戸の中を何も分からず右往左往する鮒のようだ。鮒じゃ、鮒じゃ、鮒侍じゃ」となじる。内匠頭がこの屈辱に耐えかねたことが、殿中松の廊下における刃傷沙汰に至るプロセスの出発点となる。
この鮒侍のイメージが、ある時、岸田首相と重なった。彼もまた、自民党という薄暗い井戸の中を右往左往している。誰かに背中を押されれば、あっちへフラフラ。また別の誰かに背中を押されれば、今度はこっちへフラフラ。やれ軍拡だ、やれ異次元の少子化対策だ、やれ定額減税だ。物価と賃金の好循環が狙い目だと言うかと思えば、物価高を抑制するのだというので、光熱費負担軽減措置を打ち出す。背中を押されてフラフラ進み、井戸の中のあっちの角に頭がぶつかると、方向転換を促されて、今度はこっちの角に向かってフラフラと進んで行く。
この方向感なきフラフラ振りが、いかにも、鮒侍そのものだ。つくづくそう思った。かくして、「鮒侍男」という第二の別名が生まれた。これもまた、どんどん普及させたいと思っていたのに、ここでご本人が退陣とは、何とも残念だ。
それはそれとして、鮒侍タイプの人間が政策運営の最高責任者の地位に着くことは、その国の国民にとって極めて危険なことだ。なぜなら、鮒侍男がかじ取りをしていると、国民はどこに連れて行かれるか分からない。さしたる熟慮無く、軍国路線に引きずり込まれて行くかもしれない。実効無き少子化対策や「グリーントランスフォーメーション」のために、経済負担の増嵩(ぞうすう)に甘んじることを強いられるかもしれない。思い込みが激し過ぎる政策責任者も恐いが、何ら定見のない政策責任者も実に危険度が高い。そのいずれでも無い跡継ぎが果たして出て来るか。それは自民党政権というものとは定義矛盾だと思う。再び、今この時、野党陣営の賢き大奮闘を祈りたい。
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