外国産米も品薄状態で入手困難になった米穀店【熊野孝文・米マーケット情報】2024年9月24日
SBS(売買同時入札)で輸入された外国産米を関東一円に販売している業務用米穀小売店が9月はじめに手持ちの外国産米の在庫がなくなった。販売していた外国産米はタイ産米が主力で、販売先は外国産食材を専門に扱う食材卸で、こうした食材卸は近年在留外国人が急速に増えていることもあって関東地区に中心に店舗が増えている。タイ料理店やインド料理店などに外国産米を卸しているほか、専門のスーパーでも販売されている。この業務用小売店はタイ産米の代替米を探しているのだが、国産米はもちろん外国産米も価格が上がり過ぎてどう対応すべきか経営者は頭を抱えている。
この業務用小売店が外国産米を扱い始めたのは5年ほど前で、仕入れ先卸からタイ産米の扱いを勧められたのがきっかけ。最初は「タイ産米なんか」とあまり気乗りしなかったが、差別化商品としてとりあえずネット通販で900gの小袋を紹介したところ、徐々に注文が入り始め、月1㌧ほど出るようになった。それからネットを見た外国産専門の食材卸からの問い合わせが増え、群馬、千葉、神奈川、埼玉と販売エリアが拡大、月10tほど販売するまでになった。
SBSで輸入される外国産米は多種多様で、同じジャスミンライスの仲間でもタイとインドのバスマティライスは別物で、インド料理店ではタイのジャスミンライスは使わないという。日本国内にあるインドの食品スーパーでは自国のバスマティライスを販売しているが、その価格は日本の高級ブランド米と変わらない価格で販売されている。タイのジャスミンライスはタイ料理店向けに販売されているほか、毎年5月に代々木で開催されるタイフェスティバルで人気の商品になっている。また、パックご飯として加工され販売されている商品もある。エスニック食材を販売しているチェーン店ではこの商品をタイカレーとセットにしたセット米飯まで販売している。
昨年度SBSで落札、輸入されたタイ産米は7156tだが、ジャスミンライスと一般米の内訳はわからない。ジャスミンライスは価格が高いこともあってこの業務用小売店が販売するタイ産米の主力は一般米が多く、「ホワイトライス」と言う名称で販売している。30㎏のPP袋で陸揚げされた精米を港まで取りに行き、それを自社工場で5㎏や10㎏袋に詰め直して販売している。近年、現地の精米工場の精選能力が向上したこともあって、詰め替え作業で再精選しなくても全く問題ないという。
SBSの輸入年度は9月から始まるため新年度の輸入分を商社に依頼していたのだが、9月6日に行われた第1回目の入札では落札できなかった。それは国内のコメ相場が急騰、外国産米の応札価格も連動して値上がりしたため2903tの応札があったのに対して落札されたのは582tに留まった。しかも落札価格はトン33万7886円と言う高値で、この価格から推察するにほとんどが高級なジャスミンライスであったとみられる。この結果、この業務用小売店ではタイ産ホワイトライスが入手困難になり、代替品としてカリフォルニア米か豪州米を物色しているが、これらの外国産米も品薄で新規のオーダーに応じてくれるところはない。有機のタイ産米ならあるというので見積りを出してもらうと価格は㌔500円と言う高値で断念せざるを得なかった。外国産米を扱い始めてから入手困難になるという経験は初めてだが、代替に出来るような価格の安い国産米もないのが現状で、今後どのようなコメを仕入れて販売すれば良いのか途方に暮れている。
タイの現地情報では、アユタヤ銀行の調査会社が今年6月に公表したタイのコメ産業の見通しに(2023~2025年)によると、「過去10年間のタイのコメの年間生産量は平均で3100万~3300万t。このうち2000~2200万トンが精米となり、さらにこのうち1000万~1200万tが国内消費向けに回り、残りが輸出と在庫に振り向けられる。生産量の約30%が消費者に直接販売されるが、消費者向けの主な流通ルートは大手スーパーなどでの袋入り販売が43.1%で、主に地方の小規模食品小売店が55%、その他、電子商取引(EC)などが1.9%となっている。一方、消費者への直接販売以外は、約25%が米粉、即席おかゆ、米麺、米菓子、お酒の原料、動物飼料などの加工業者に供給され、5%が種子用、そして残り40%が輸出用となる。
主な輸出先はイラク、南アフリカ、中国、米国、ベナン、日本など。輸出される種類は白米が2022年で386万トンと、全輸出量の50.2%を占める。次いでパーボイルド米(Parboiled rice=精米する前に米を水に漬けその後スティーム加工して、もみ殻付きのまま乾燥加工した米)の19.6%で、主な輸出先は南アフリカやベニンなど。その他、ジャスミン米が16.3%、破砕米(主に米粉、動物飼料向け)が10.5%などとなっている」という状況。
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