【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】日本の漁村・農村は世界の「最先端」2024年9月27日
「効率的」企業による独占化をめざす日本
農業や漁業における「成長産業化」とは、「効率的な」企業的経営がどんどん「非効率な」従来の農漁業者に置き換わっていくことによって生産額を増やしていくというイメージす。しかし、それでは、地域も崩壊しますし、資源管理も崩壊します。
私も真珠養殖漁家の息子で、小さいころから手伝って現場を見てきました。地域で年間に何回も調整して、そして出合いで海を綺麗にして、本当にファインチューニングし、どれだけ話し合って喧々諤々やっても、そこでこのぐらいが良いと落ち着いてみんなで決めるから、それを守ってみんなで資源を守り、自分たちの利益も守ってきました。この伝統的な共同体的なルールがあるのは、やっぱりすごいです。これがなかったら地域も資源も守れないというのは私も実感としてわかっています。
震災直後のM県知事がやった水産特区というのは、とんでもないことになりました。漁協の漁業権の中に、それを無視して勝手に動いても良い企業にも権利を付与してしまいました。案の定、その企業が共同体ルールを無視して、地域ブランドが壊され、その企業もやっていけなくなりました。
日本の漁村を評価するヨーロッパ
私たちには、欧米は大きな企業だけが残れば良いというような方向性を追及していると思いがちですが、デンマーク出身の東北大学東北アジア研究センターの文化人類学博士のアリーン・デレーニ准教授はこう言っています。「日本の漁業者は、自立性を持ちながらも、何かを決めるときは地域で総意を得るといった共同体の力を存分に発揮して、資源管理と地域コミュニティを持続させています。日本に来て、日本が築き上げて積み上げ育ててきた良さにようやくヨーロッパが気付いてきて取り組もうとしているときに、日本の水産改革は何とそれに逆行して、資源管理と地域社会の維持に失敗した欧米の方向に近づこうとしているように見えます」と。
日本の地域コミュニティは「最先端」
ノーベル経済学賞を受賞したオストロム教授は、日本の農村や漁村も調査し、「共同体的管理こそが長期的・総合的に見て最もコストも安くて効率的に資源も地域も守り、経済的にもペイする」ということを実証して、彼女はノーベル賞を受賞したのです。
だから我々の実績というのは物凄いものがあるということは忘れないようにして、世界が評価する自身の仕組みを、逆に「非効率で、遅れている」と言って、欧米型の巨大企業に集中していくような流れを強化してしまったら、地域を守ってきた人々も地域コミュニティも資源管理も崩壊して、失われるものが大きすぎます。欧米が気付いて日本に近づこうとしているわけですから、私たちが逆行してはいけないのです。
私たちは、「今だけ、金だけ、自分だけ」の目先の自己利益追求をうまく正当化して、自分たちに利益を集中していこうとしている人たちの思惑に飲み込まれないように踏ん張らねばなりません。
重要な記事
最新の記事
-
イネカメムシをムシヒキアブが捕食 「天敵」防除に可能性 有機農研シンポで報告2025年10月15日
-
平成の大合併と地方自治【小松泰信・地方の眼力】2025年10月15日
-
公開シンポ「わが国の農業の将来を考える」11月1日開催 日本農学アカデミー2025年10月15日
-
令和7年度加工食品CFP算定ロールモデル創出へ モデル事業の参加企業を決定 農水省2025年10月15日
-
西崎幸広氏ら元プロ野球選手が指導「JA全農WCBF少年野球教室」草津市で開催2025年10月15日
-
元卓球日本代表・石川佳純が全国を巡る卓球教室 三重で開催 JA全農2025年10月15日
-
新米など新潟県特産品が「お客様送料負担なし」キャンペーン実施中 JAタウン2025年10月15日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」マロンゴールドで鹿児島の郷土料理「がね」を調理 JAタウン2025年10月15日
-
みなとみらいでお芋掘り「横浜おいも万博2025」さつまいも収穫体験開催2025年10月15日
-
JA全農京都×JA全農兵庫×JA全農ふくれん「ご当地ピザ」セット販売 JAタウン2025年10月15日
-
2027年国際園芸博にタイ王国が公式参加契約2025年10月15日
-
「水田輪作新技術プロジェクト」キックオフフォーラム開催 農研機構2025年10月15日
-
「第77回秋田県農業機械化ショー」にSAXESシリーズ、KOMECTなど出展 サタケ2025年10月15日
-
「直進アシスト搭載トラクタ」がみどり投資促進税制の対象機械に認定 井関農機2025年10月15日
-
東京駅「秋の味覚マルシェ」で新米や採れたて野菜など販売 さいたま市2025年10月15日
-
県民みんなでつくる「白米LOVE」公開 ごはんのお供をシェア 兵庫県2025年10月15日
-
16日は「世界食料デー」賛同企業など「食」の問題解決へランチタイムに投稿2025年10月15日
-
農機具プライベートブランド「NOUKINAVI+」公式サイト開設 唐沢農機サービス2025年10月15日
-
年に一度の幻のじゃがいも「湖池屋プライドポテト 今金男しゃく 岩塩」新発売2025年10月15日
-
栃木県農業総合研究センターいちご研究所、村田製作所と実証実験を開始 farmo2025年10月15日