【浜矩子が斬る! 日本経済】「石破新首相は平目とムジナのハイブリッド」経済に不安も手管は納得2024年10月4日
石破茂内閣が発足した。石破首相による10月4日の所信表明を受けて、野党による代表質問へと進む。その後の運びについて、本稿執筆の段階では与野党間で折り合いがついていない。いずれにせよ、9日にはあっという間の衆院解散だ。10月27日が衆院選の投開票日となる。何とも慌ただしいことだ。ご祝儀観が漂う中で、一気に選挙戦を突破しよう。これが自民党の魂胆であることは、誰が見ても分かる。こういう悪質な分かりやすさを平気で前面に出して来るところが、何ともこの政治集団らしい。
エコノミスト 浜矩子氏
筆者は、石破氏の前任者、岸田文雄前首相を「鮒侍男(ふなざむらいおとこ)」と名づけた。その理由については、数回前の本欄でご説明した通りである。かの「仮名手本忠臣蔵」という歌舞伎演目の中で、吉良上野介が浅野内匠頭をなじって言う。「何も知らないお主は狭い井戸の中をあっちへふらふら、こっちへふらふらとさまよう鮒のごとし。鮒じゃ、鮒じゃ、鮒侍じゃ。」このパワハラに耐えかねたことが、内匠頭による殿中松の廊下の上野介襲撃へとつながる。
筆者には、いかにも無定見に右往左往する岸田氏の姿が、鮒侍にみえた。あっちへ行けと言われれば、あっちへフラフラ。こっちへ来いと言われればこっちへフラフラ。脈絡なく、唐突に、つじつまの合わない政策や方針が繰り出されて来る。岸田さんもまた、鮒じゃ。鮒じゃ鮒侍じゃ。
さて、今度は石破氏だ。せっかく鮒侍というイメージを得たのに、また次の首相に次の名前を与えなければいけない。困った。と思ったとたんにひらめいた。この男は平目男だ。
平目男は、海底にべったりへばりついている。鮒侍のようにあっちへふらふら、こっちへふらふらとウロウロはしない。その上目使いのまなざしは、波や流れの様子をじっと見守っている。空気を読むのが存外に上手い。むしろ、それが上手すぎて自分の真意というものは読めなくなってしまっているようにみえる。他の人々と一味違うことを言って、注目を引き寄せる。自民党の総裁選の中では、結構、そういう場面がみられた。9人の立候補者の中で、平目男ただ一人が、労働分配率の引き上げが必要だと言った。金融所得課税に関心を示した。法人増税もありだろうと言った。だが、これらのことについて現段階で彼がどう考えているのかは判然としない。べったり、広がる平目の腹の中のどこに納まったやら。
平目男は、以前から、どうも得体が知れない感を漂わせることに長けた男だった。ただ、今回、首相に就任して初の記者会見の模様をみていて、改めて一つ気づいた点がある。それは、この人は経済があまり得意ではないということだ。諸々のテーマに関する質疑の中で、経済に関するやり取りになると、平目男の目が下向きになった。手元のメモを読み上げている風情だった。安保問題や「地方創生」などのお気に入りテーマについては、記者さんたちと目を合わせ、ジェスチャーもなかなか派手に語っていた。だが、経済問題については、まるでにわか覚えのお経をテキスト頼りに唱えているようだった。ひょっとすると、労働分配率という言葉の意味もあまりよく理解していなかったかもしれない。
平目男には、もう一つの顔がある。それはムジナ男としての顔である。自民党という同じ穴に住むムジナたちの一人としての顔だ。今回の自民党総裁選には、同じ穴から9匹のムジナが飛び出して来た。その中で、はぐらかしと煙に巻く手管に最も通じているのが、石破氏ではないかと思う。それが分かっているから、自民党の政治家たちも最終的には彼を選んだのだろう。
平目とムジナのハイブリッドはなかなか気味が悪い。野党側にとって、闘い難い相手となりそうだ。「平目×ムジナ=何」だろう。そこの見極めが肝心になりそうだ。
重要な記事
最新の記事
-
(408)技術と文化・伝統の引継ぎ【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年11月3日
-
令和6年秋の叙勲 加倉井豊邦元全厚連会長ら77人が受章(農水省関係)2024年11月3日
-
シンとんぼ(116) -改正食料・農業・農村基本法(2)-2024年11月2日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践 (33) 【防除学習帖】第272回2024年11月2日
-
農薬の正しい使い方(6)【今さら聞けない営農情報】第272回2024年11月2日
-
【25年産米】適正生産量683万tに懸念の声も(2)高米価でもリタイア?2024年11月1日
-
【25年産米】適正生産量683万tに懸念の声も(3)ギリギリ需給でいいか?2024年11月1日
-
【特殊報】「サツマイモ炭腐病」県内のサツマイモに初めて確認 鳥取県2024年11月1日
-
食と農の情報 若年層にはSNSや動画発信が有効 内閣府の世論調査で明らかに2024年11月1日
-
【注意報】野菜、花き類にチョウ目害虫 県内全域で多発のおそれ 佐賀県2024年11月1日
-
だし・かつお節需要が高まる年末年始に向けて「徳用シリーズ」売れ筋2品を10%増量 マルトモ2024年11月1日
-
JA貯金 残高108兆2954億円 農林中金2024年11月1日
-
【田代洋一・協同の現場を歩く】 福島・JA会津よつば 産地強化で活路探る 中山間地域で〝生きる〟2024年11月1日
-
鳥インフル 米サウスカロライナ州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2024年11月1日
-
鳥インフル オランダからの生きた家きん等 一時輸入停止措置を解除 農水省2024年11月1日
-
鳥インフルエンザ 「危機感共有して発生予防を」小里農相2024年11月1日
-
兵庫県ご当地カレー&「午後の紅茶」キャンペーン実施 JAタウン2024年11月1日
-
「JA共済安全運転アプリ」提供開始 スマホではじめる安全運転2024年11月1日
-
子どもたちが丹精込めて作った「優結米」熊本「みのる食堂」で提供 JA全農2024年11月1日
-
たまごのゴールデンウィーク「幻の卵屋さん」各所で出店 日本たまごかけごはん研究所2024年11月1日