【スマート農業の風】(10)GAPで生きるZ-GIS2024年12月4日
東京オリンピックが終わり、大阪万博が続きます。何の話と思った方、農業生産工程管理(GAP)の話です。GAPは、農業生産を、実施、記録、点検、評価をおこないながら、持続的な改善活動を進め、食品の安全性向上、環境の保全、労働安全の確保をしながら、農業経営の改善や効率化につなげる取り組みです。今回は、GAPとスマート農業というテーマでお話いたします。
GAPは、Good Agricultural Practicesの頭文字の言葉で、直訳は「よい農業の取組」という意味です。一般的には「農業生産工程管理」と言います。GAPは、農業生産の各工程の実施、記録、点検、評価を行うことによる持続的な改善活動であり、食品の安全性向上、環境保全、労働安全の確保などに資するとともに、農業経営の改善や効率化につながる取り組みです。最近は、買い手側の要望により、取り組んでいる生産者が増えてきました。
生産者の目線でいえば、「農産物を作る際に適正な手順を守り、モノの管理を行い、持続可能性を確保する取組」となります。具体的には、日頃の農業生産における各工程・各作業、例えば、栽培時における農薬の散布、農産物を出荷する際の梱包作業などで、食品安全や環境保全、労働安全等の観点から、危険性や問題点を考え、それぞれに対策を行い、改善していく取り組みです。具体的には、GAPの定める管理基準に合わせて、管理・記録を取っていくことです。「農場管理の見える化」という項目があり、正しく管理されているか記録を取っているかが確認されます。
ひとつの事例を紹介します。東京近郊という立地を生かした野菜栽培が盛んなあるJAは、大手コンビニチェーン向けブロッコリー生産者を対象に、GAPの団体認証をおこなうことを決めました。GAPの認証に合わせて生産者の作業軽減とスマート農業化を目的にZ-GISの導入も決めました。Z-GISは、GAPに必要な、ほ場の地図や危険地区の表示などを簡単に作ることができます。
今回の取り組みは、11人の生産者が対象となり、管理ほ場数は、約1000筆です。まず、JA担当者と生産者を対象とした操作研修会を開催し、ほ場図の確認のため巡回およびデータ確認を行うことを説明しました。その後、生産者のデータを回収しほ場のZ-GIS化をおこないました。同時に、GAPに必要な書類の整備も進めていきました。途中、日本のJGAPの仕様が改定されるというアクシデントもありましたが、アドバイザーの協力もあり、一部書類の体裁を変えるだけで対応することができました。アドバイザーからは「帳票類は、必要事項が記載されたもので確定し、生産者に記載させ、JAでの代行入力は避ける」「無理なことや特別なことはしなくてもよいので、法令遵守など、やるべきことをきちんとこなしていく」などGAP継続に必要な提案もいただきました。このような取り組みを含め、およそ1年の準備期間を経て、GAP認証を取得することができました。生産者の作成したGAPに指定された書類の数は膨大な量になりましたが、ほ場管理の部分をZ-GISによるスマート農業に即した管理に移行していたので、必要最小限の資料作成で済ますことができました。
審査については、指摘事項が数点ありましたが、前向きに対処できるものばかりで、むしろ、「マニュアル整備のために必要な確認ができる」と、GAP指導員が言っていたことを実践できる機会であったと思います。
この例にあげたJAのGAP団体認証は、今年、新たな生産者11人を迎え追加の認証に向け取り組みを進めています。販売先からの要望で始まったGAP認証ですが、生産者の意識の向上・作業軽減とスマート農業化という新たな場面をつくることができました。今後も地域の生産性維持のため、生産者とJAが一体となってGAPの団体認証をつくる事例のひとつです。
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