コメの健康機能を紹介する学術セミナー開催【熊野孝文・米マーケット情報】2024年12月10日
12月7日、東京日本橋で「美と健康を支える米の力」と題する学術セミナーが開催された。
セミナーに先立ち講演者の一人である一般社団法人メディカルライス協会の渡邊昌理事長と(株)神明の筒井愼治管理部長が登壇して記者会見が開催された。筒井部長がコメの情勢と自社の取組みを話したのに続き、渡邊昌理事長がメディカルライス協会の活動と商品化した低たんぱく玄米を紹介、さらには玄米を微粒粉砕した米粉商品を開発中で、コメの持つ機能性を多くの人に活用してもらい、コメが健康に有益な食材であることが広く知られるように伝えて欲しいとメディアに訴えた。
渡邊昌理事長は会見で要旨以下のように述べた。
▽食べることに関心を持つ消費者は多いが、作ることに関心を持っている消費者は意外に少ない。日本の消費者は今まで水はタダだと思っていたが、今やガソリンより高い水を飲んでいる。コメも安くて当たり前だと思ってきたが、コーヒー豆でよく言われるようにコメの生産者がインセンティブを持てるような価格でなければならない。メディカルライス協会はそれを訴求してきた。
▽私は医療関係で長くやってきたが、食事療法で病気を予防するというのが一番効果がある。腎臓病では、一端透析にはいると死ぬまで透析を続けなくてはならない。それを食事でカバーできないかと考えた。厚労省は透析患者を10%減らす目標を掲げて10年ぐらい前に多額の予算をつぎ込んで調査を行ったが、透析に入る患者は減るどころか毎年4万人ずつ増加している。腎臓病を診る医師は血圧や血糖値を下げる薬ばかり出すがほとんど効果がない。
▽腎臓病悪化の根幹に腸と腎臓との間に腸腎連関というのがあって尿毒症が進んでくると腸内細菌の構成が変わって来る。それで益々毒素を出すようになり、それが腎臓に来ると悪性を発揮してそれでどんどん悪くなる。
▽我々が開発した低たんぱく玄米の特徴は、タンパク質を含まないパックご飯であること。それとカリウムとリンも少ない。それでいて食物繊維とガンマーオリザノールは元の玄米と同じように含んでいる。主食をこの低たんぱく玄米に置き換えるだけで1日10gタンパクを減らすことが出来る。一か月食べ続けると腸内細菌が良い形に変わって毒素の発生が少なくなるので、尿たんぱくが減って来る。薬でタンパクを減らすと思うと大変で、なかなか減らないが、これを食べると半数ぐらいの人は減るので非常に効果的。しかし、腎臓病の先生方には効果を認めてもらえないのが不思議だ。
▽認知症も増えているが、ブレスデンという人が認知症の原因について炎症や栄養素が足りてない、毒素がたまっているなど4つの要因をあげているが、目に見えないような炎症はいつも腸から起きている。ですから腸内細菌を正しく保てば炎症が起きないようにコントロール出来る。コロナも腸内細菌が正しく機能すれば感染しない。だから日本人の感染が少なかった。
▽低たんぱくご飯の原料米については有機米を推奨している。棚田で有機米を生産されている方は非常に苦労している。そうした農家にインセンティブのある価格はどのくらいか聞くと㎏400円から800円ぐらいという答えであった。いいコメをきちっと作ってもらい病気の人に届けたいという思いでこの商品を開発してきた。
▽病気の人に届けたいと思っても問題がある。食品表示法でから言うとこれは病気の予防に使えますとか病気に効果がありますとか書けない。リスクを減らせますということしか書けない。食事で病気が治せますと言ったら薬品会社がつぶれる。厚労省も食事療法に効果があるとは認めたくない、薬品メーカーに忖度している。医者にも問題があって金にならない食事療法をやりたくない。我々の活動は八方ふさがりで大変苦しい。マスコミの皆さんには庶民の側に立ってコストパフォーマンスの高い食事療法とは何なのか訴求してほしい。
「美と健康を支える米の力」と題する学術セミナーでは、午前の部で一般社団法人日本健康食育協会の柏原ゆきよ代表理事が「若々しいハリツヤ肌を作るお米生活」、NPO法人女性ウエルネス食推進機構の伊達友美理事長が「ごはんの誤解あるある?栄養士が語るお米の真実」について、午後の部では一般社団法人メディカルライス協会の渡邊昌理事長が「玄米の健康効果」について、東京科学大学・新産業創生研究院医療工学研究所・未病制御学講座安達貴弘准教授が「米の免疫機能」についてそれぞれ講演した。
会場は150席ほどが用意されたが満席で、主催者によると栄養管理士の参加が多かったという。また、会場入り口のスペースには有機米を原料とした甘酒やパックご飯などが出品され、昼食には玄米ご飯も提供された。
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