コメを買う消費者に列を作らせてはいけない【熊野孝文・米マーケット情報】2025年6月3日
6月1日、備蓄米が並んでいるのか近くの食品スーパーに行ってみた。このスーパーにはまだ備蓄米は並んでいなかったが、その代わり6年産の銘柄米が5㌔4000円以下でカートに山積みしてあった。5月28日に開催されたクリスタルライスの取引会では約5万俵の売り物があったが1割しか買いが入らなかった。市中相場は大きく値崩れしており、下値に歯止めがかからない状態。コメ先物市場も7年産米が売買対象の限月もストップ安の連続で3万円を大きく割り込んでしまった。5㌔2000円の備蓄米が早いスピードで量販店店頭に並び始めたインパクトは大きい。

農水省が中小スーパーや米穀小売店向けに随意契約の備蓄米販売方針の説明を行ったその日に説明会に参加した都内の大手米穀店小売が「やっぱりダメでした」と肩を落としながら言う。何がダメだったのかというと随意契約の備蓄米を外食店に販売することが認められないと農水省からダメ出しされたのである。もう一つダメ出しされたのが、買い受けた備蓄米を返品できるのかという点についても原則返品は認められないこと。結局、この米穀小売店は随意契約の備蓄米の買い受け資格者になることを断念した。断念した反面、ほっとしたこともあるという。それは随意契約の買受業者の資格を得ると買い受けた時に名前が公表されることで、これだけは避けたかった。それは、この米穀小売店は入札売却された備蓄米を卸を通して買い受けており、これから外食店向けに販売しなければならない。このコメは随意契約の備蓄米に比べ1俵当たり1万円以上仕入れ価格が高いので、随意契約で買い受け登録して名前が公表された場合、取引先の外食店から「kg400円で納めろ」と言われかねない。入札売却で仕入れた備蓄米は引取り期限が6年産米は6月末、5年産米は8月末に決められており、大急ぎで6年産米を引き取って販売しなければならない状況。要するに国の備蓄米販売方法の変更に振り回されているのだが、東京都の米穀小売店は組合を通じて330tの随意契約備蓄米を買い受ける予定で、これら米穀小売店も同じようなことを言われかねない。
随意契約備蓄米売却で、実質的に不利益を被った業者もいる。それは外国産米取扱業者で、関税支払いの外国産米を輸入、ちょうど通関が切れる最中に随意契約の備蓄米売却が決まり、その店頭価格もメディアで広く伝えられたことから、取引先から外国産米の契約をキャンセルされ価格の安い備蓄米を持ってくるように要求されたという。取引先は外国人相手の食品スーパーを経営するところで、こだわった長粒種を納入しているのだが、相手先からは「それよりも価格が安い日本米の方が良い」と言われているとのことで頭を抱えている。
随意契約の備蓄米の売却で最も深刻な影響を受けるのは、何と言っても入札売却で備蓄米を買入れた集荷業者とそれを購入契約した卸になるのではないか。年産が違うとはいえ同じ備蓄米の仕入れコストが倍違うのだから果たして上手く捌けるのか不安になるのは当然だ。すでに大手業者の中には「暴落」を予想する向きもあり、コメ流通業界は大きなリスクを抱え込んだという状況。備蓄運営ルールに詳しい向きによると入札売却で落札された備蓄米は国がそれをそのまま買い戻すことも出来るとしており、場合によっては国が買い取って、随意契約で再度販売されることになるのかもしれない。そうなったときは5年産、6年産という比較的年産の新しいコメが市中に安い価格で出回ることになるため、下げ圧力が一層強まることになる。
メディアで報じられる備蓄米を求める消費者の長い列を見るにつれ、主要食糧の安定供給と価格の安定を目的にした食糧法やそれを実行するために毎年巨額の財政負担しているコメ政策とは何なのか?という思いを強くする。備蓄米の財政負担は1年で保管経費が113億円、売却差損が377億円、合計で490億円にもなる。毎年、これだけの負担を続けすでに20年経っている。それに加えMA米の保管や売買差損経費は毎年670億円から680億円になり、これを1995年から続けており、1兆円もの負担を強いられた。この他、主食用米転作に伴う負担が年間4000億円、土地改良等の助成金を含めると1兆円をつぎ込んでいる。これだけに財政負担をしながらまともにコメを安定供給できないのなら、食糧法も財政負担も必要ないのではないか。少なくともコメを買い求めるために消費者に長蛇の列を作らせるようなことがあってはならない。消費者国民は何のための毎年巨額な税負担をしなければならないのか?新たなコメ政策を議論する場を国が立ち上げるというのならまず「令和のコメ騒動」がなぜ起きたのか、第三者に責任を押し付けるのではなく統計データの調査方法も含めてコメ政策を根本から真摯に検証すべきだ。
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