6月の第3日曜日は父の日ですが母の日に比べると影が薄い【花づくりの現場から 宇田明】第61回2025年6月5日
6月の第3日曜日は「父の日」です。
しかし、5月の母の日に比べると、影が薄いようです。
母の日のシンボルはカーネーションですが、父の日が黄色のバラだと知っているひとは多くありません。
父の日は、母の日とおなじくアメリカが発祥です。
初めて母の日の行事が催されたのが1908年、父の日はそのすぐ後の1910年と、歴史的にはさほどかわりません。
しかし、アメリカで母の日が正式に祝日になったのは1914年ですが、父の日は大幅に遅れて1972年になってからです。
日本でも母の日の浸透は早く、昭和のはじめにごろには花屋が、「お母さんに花を贈る日」として花の需要拡大に利用していたので、知名度は抜群です。
一方、父の日が知られるようになったのは、一般社団法人日本メンズファッション協会が「日本ファーザーズ・デイ委員会」を結成し、「父の日黄色いリボンキャンペーン」をはじめた1982年からです。
その活動では、父の日のシンボルカラーを日本独自に黄色とし、黄色のバラを贈る習慣の定着や、「ベスト・ファーザーイエローリボン賞」の選定などがおこなわれています。
母の日は、花業界がカーネーションを贈る日として積極的に活動し、年間でもっとも花が売れる日になっています。
それに対して、父の日は花業界が日本メンズファッション協会のキャンペーンに便乗したような形のため、盛りあがりに欠けるのは仕方がないことかもしれません。
それでも花業界にとって父の日は重要です。
6月はジューンブライドといわれているものの梅雨の季節で、花の売れゆきは低調です。
さらに、5月の母の日が終わると、8月のお盆まで花が売れる物日(ものび)がありません。
それだけに、黄色のバラを贈る父の日は、まさに願ってもないチャンスなのです。
では、父の日のバラは実際にどれほど定着しているのでしょうか。
図は、国産のカーネーションとバラ切り花の過去5年平均の週ごとの入荷量(日農ネットアグリ市況・全国主要7市場))。
花の栽培でもっとも重要なのが「開花調節技術」です。
花は野菜などのように、通年で安定した需要がありません。
花が特異的によく売れる春秋の彼岸、お盆、年末、そして母の日などの物日(ものび)と、それほど売れない平日(ひらび)に極端な差があることは、当コラムでなんども紹介しました。
物日は、花が大量に、かつ高単価で売れる日です。
したがって、花農家の経営には、物日に開花のピークをあわせることがきわめて重要です。
市場への入荷量は、気象条件にも左右されますが、キク、カーネーション、バラなどのように高度に栽培技術や品種改良が進んだ品目では、農家の開花調節技術および強い意志が大きく影響しています。

図では、父の日前(第24週)のバラの入荷量(青線)には、小さなピークが見られます。
これは、父の日には平日よりもバラが多く売れていることを示しています。
一方、カーネーション(赤線)はまったく反応していません。
つまり、カーネーションは父の日とは無関係といえます。
対照的に、母の日前(18、19週)にはカーネーションに突出したピークがあります。
このことから、母の日のカーネーション需要がいかに大きいか、そしてカーネーション農家がこの日をターゲットに開花を調節していることがよくわかります。
同時に、母の日にはバラも小さなピークがあります。
これは、花業界の、「お母さんの好きな花を贈りましょう」キャンペーンの効果で、カーネーション以外の花もよく売れていることを示しています。
「父の日には黄色のバラを贈ろう」という日本ファーザーズ・デイ委員会や花業界の活動は、黄色にかぎらずバラの販売促進には一定の効果があるものの、母の日のカーネーションには遠く及びません。
その背景には、母の日にはカーネーションという明確なシンボルが、アメリカ文化として早くに日本に定着したことが大きく影響しています。
さらに、母の日には、デパートやスーパー、商業施設などで大規模なプロモーションが展開され、世間全体が盛りあがります。
父の日はプロモーションの規模が小さく、イベントとしての認知度が低いことが盛りあがりに欠ける要因です。
また、お父さんへのプレゼントとしては、日本ではお酒や衣料品などが多く、花を贈るとしても、バラはイメージしにくいのかもしれません。
そのため、父の日に花を贈る人でも、最近はイメージカラーの黄色であるヒマワリが人気を集めています。
実際、その年にもっとも「素敵な父親」として社会に規範となるような活躍をした著名人に贈られる「ベスト・ファーザーイエローリボン賞」の昨年の受賞者のコサージュ(胸飾り)や会場装飾は、黄色のバラではなく、ヒマワリが使われていました。
ヒマワリは開花調節技術の発達で、1年中花を咲かせることができますが、強烈な夏の花のイメージがあります。
そのため、明るく元気な印象を与え、「家族を明るく照らす太陽のようなお父さん」というイメージに結びつきやすいのが人気の理由です。
また、花屋にとっても6月はヒマワリの旬の始まりと重なるため、売りたい花であることも影響しています。
今年の父の日は6月15日。
全国のお父さんに、バラやヒマワリの花束が届くことを願っています。
重要な記事
最新の記事
-
【特殊報】シキミ、カンキツにチュウゴクアミガサハゴロモ 県内で初めて確認 宮崎県2025年11月6日 -
【注意報】野菜類・花き類にチョウ目害虫 県内全域で多発のおそれ 埼玉県2025年11月6日 -
栗ご飯・栗タマバチ【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第363回2025年11月6日 -
輸出の人気切り花スイートピー生産の危機【花づくりの現場から 宇田明】第72回2025年11月6日 -
千葉県から掘りたてを直送「レトルトゆで落花生 おおまさり」販売開始 JAタウン2025年11月6日 -
東京育ち 幻の黒毛和牛「東京ビーフ」販売開始 JAタウン2025年11月6日 -
オンライン農業機械展示会「オンラインEXPO 2025 WINTER」を公開中 ヤンマー2025年11月6日 -
第6回全社技能コンクールを開催 若手社員の技術向上を目的に 井関農機2025年11月6日 -
兵庫県 尼崎市農業祭・尼崎市そ菜品評会「あまやさいグランプリ」9日に開催2025年11月6日 -
静岡・三島でクラフトビール×箱根西麓三島野菜の祭「三島麦空」開催2025年11月6日 -
森林・林業業界の持続的価値創出へ「ポジティブ・インパクト・ファイナンス」実施 森未来2025年11月6日 -
ホクトのエリンギ プリプリ食感になって26年振りにリニューアル2025年11月6日 -
豆乳生産量 2025年度7-9月期 前年同期109% 日本豆乳協会2025年11月6日 -
鳥インフル 米イリノイ州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年11月6日 -
鳥インフル 英国からの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年11月6日 -
収穫体験やお米抽選会「いちはら大収穫祭2025」開催 千葉県市原市2025年11月6日 -
実習内容に基づき解説『演習と実習で学ぶ養液栽培』発売 誠文堂新光社2025年11月6日 -
横浜土産の新定番「横濱お米かりんと 黒蜜きなこ」新発売 ミツハシ2025年11月6日 -
液体せっけん量り売り 千葉「デポー園生」で開始 生活クラブ2025年11月6日 -
まるまるひがしにほん 岩手県「はちまんたいマルシェ」開催 さいたま市2025年11月6日


































