コメ先物市場で10枚を売りヘッジしたコメ生産者【熊野孝文・米マーケット情報】2025年10月21日
先週末に開催された米穀業者の情報交換会では、新米の売れ行き不振と急激に値下がりした市中相場の動向に話題が集中した。なにせ仲介業者の取引メニューにはA4版12枚にもなる売り玉が晒されているのだからどこまで下がるのか戦々恐々としている。早くも国の備蓄米買い入れがいつ、いくらでなされるのかを期待しなければならないような状況になっている。

価格の下落というリスクをカバーするには、コメ先物市場で売りヘッジすると言う手法もとれる。当業者の参加が少ないと言われる堂島のコメ指数先物取引市場で先物価格が3万円を超えたのを機に10枚を売りヘッジした大規模稲作生産者もいる。
情報交換会では、7年産米庭先価格高騰の震源地になった茨城の業者が新米の出回り期から現在までの情勢についてしみじみと振り返る。「このままだと大変だと気付いたのは9月10日。8月はあきたこまちの庭先価格は3万円ぐらい。それが3万2000円になり、3万3000円になり、9月10日に3万5500円買い取りというところが出てきた。その時、隣の千葉県は3万2000円であった。3000円も違うと絶対に売れないと思っていたが、にじのきらめきでさえ3万4500円で買う業者もいた。備蓄米の店頭販売価格は5kg2000円なので新米を買う値段であれば2袋買える。7年産が売れるわけがない」。茨城に比べ庭先価格が安かったという千葉の業者は、JAからの仕入れ価格は交渉するたびに値上げされ、赤字販売を余儀なくされた。それでも20年来納入している外食店から「その価格は飲めない」と言われた。また、東京の業務用米専門小売店もkg30円、40円の値上げが通らなくなっている。外食店は安いコメを求めており、外米、備蓄米でもOK。7年産より安かった6年産米を大事に使っていくが、資金繰りが大変になりそう。高値での集荷を強いられた埼玉の業者は、JAであれ、集荷業者であれ、競争相手が「3万6000円で買う」と生産者に言っているのに「うちは3万3000円です」とは言えない。これまで3万円以上で集荷したことはないが、集荷価格競争になるのは集荷業者の宿命だという。
この後に席上取引会が行われ、下げ基調にあるため買い声が出ず成約しないものと予想されたが、11月中渡し条件で茨城コシヒカリが置場3万2200円で、あきたこまちが持込み3万2000円で成約した。
相場動向の焦点としては、全農系統の相対販売価格と民間玉の兼ね合いで、これまで民間玉が全農系統相対販売価格より高値になっていたが「これが従来のように系統販売価格より民間玉が安くなるという正常な姿に戻る」と市中では見ている。ただ、この全農相対価格がいくらなのかが掴めない。木曜日に開催された全米工の東日本情報交換会でも進行役が各産地の出席者にその産地の全農系統相対価格がいくらなのか問うたが、具体的な価格に言及する出席者はいなかった。系統販売価格に詳しい向きによると7年産米の卸への提示価格は産地によって異なり、3種類の価格を提示しているところや相手先によって価格を違えているところもあるなど、これまでのような建値に相当するものは存在しないという。集荷力がある産地の中には、卸の先の生協や量販店と交渉して「販売マージンの圧縮」を要請、5kg3980円の売価を実現している系統もある。この系統は以前からマーケットを睨んだ販売戦略を立てており、他産地が新米の販売に苦慮しているなか例外的に順調な販売進度になっている模様だ。相対販売価格は産地系統にとって販売戦略の最重要課題で、商系業者の動向はもちろん他産地の価格動向も見なければならず、しかも概算金や買取価格が極めて高値であったことから今後の販売には苦戦しそうだ。販売の苦戦と同時に在庫リスクの負担がかつてなく大きなものになることは明らかで、このままでは大きな損失を被りかねない。
損失を抱える可能性があるのは、農協系統に委託しない大規模稲作生産者も同じで、在庫差損のリスクを回避するために堂島取引所のコメ指数先物市場に売りヘッジした生産者もいる。堂島取引所のコメ指数先物市場の決済手段は反対売買による差金決済が基本であり、この生産者が納会で現物を渡すことは出来ないが、堂島取引所では現物を売りたい、もしくは買いたいという当業者のために新制度として「希望受渡し方式」を導入することを検討している。この方式は「先物市場でポジションを持つ売り方・買い方が双方合意した条件で、先物市場内(立会外)でポジションを決済し、対応する代金の授受を行う」というもので、その詳しい内容について11月5日に開催される農政調査委員会主催の「第3回米産業・米取引に関する懇話会」で堂島取引所が説明することになっている。
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